前回ブログ記事(「絶縁型CANシステムにおけるエミッションの低減とイミュニティの向上」)で紹介したように、絶縁型コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)規格の採用は産業と車載の両方の用途で増加しています。これらの最終製品においては、より高い電圧が使用されるため、低電圧のマイクロコントローラを保護しながらノイズも軽減する場合には、絶縁型の通信が必須になります。しかし、絶縁型CANトランシーバを追加しただけでは不十分です。

絶縁型電源は、絶縁型CANデバイスの両側に電力を供給するために必要です。すでに一部のシステムでは別の用途向けに絶縁型電源(フライバック方式、降圧方式)が搭載されています。このため、CANインターフェース用に1ヶの巻線を絶縁トランスに追加することは簡単です。しかし、絶縁型電源が搭載されていない場合は、ディスクリート部品、または、統合タイプかのいずれかを使用して、絶縁型CANデバイス用に絶縁型電源を構築する必要があります。

絶縁型電源向けのディスクリート・ソリューション

図1は、絶縁型CANの信号と電源に対してディスクリート・ソリューションを実装するための2種類の方法を示しています。CANを絶縁するには、左側のようなシングルチップの絶縁型CANトランシーバ(『ISO1042』)を選択するか、右側のようなディスクリート・アイソレータ(ISO77xx)とディスクリートCANトランシーバ(『TCAN1042』)を使用します。後者を選択すると、ニーズに合ったCANトランシーバを柔軟に選択できます。

電源に関しては、どちらのソリューションもトランス・ドライバとトランス、整流器、レギュレータを使用して絶縁型電源を生成します。『SN6501』や『SN6505B』といったトランス・ドライバの選択は、絶縁型電源に必要とされる出力電流によって決まります。同じ電源から複数の絶縁型トランシーバに電力を提供する場合は、1Aの出力電流としたとき、『SN6505B』のような高電流出力デバイスの方が適しています。

 図1:絶縁型CANと電源のディスクリート実装

TIの車載強化絶縁型CAN車載絶縁型CANと電源フロント・エンドのリファレンス・デザインで見られるように、絶縁型電源のディスクリート実装は、トランスの巻線の比率に基づく電圧と電流の仕様の柔軟性を高めることができます。このケースでは、変圧器とアイソレータ/絶縁型CANデバイスは、最終製品の用途における絶縁の定格に適合している必要があります。

統合型電源とデータ・ソリューション

図2は、シングルチップに信号と電源が統合された場合の方法を示しています。『ISOW7841』デジタル・アイソレータは、シングルチップ絶縁型データ・電源デバイスです。出力は3.3Vまたは5V、絶縁の二次側では5Vで130mAを供給します。ディスクリートCANトランシーバを『ISOW7841』絶縁型電源に接続すると、完全なシステム・ソリューションになります。2つのコンポーネントだけでこのサブシステムを構築しているため、TIの絶縁型CANモジュールと統合電源のリファレンス・デザインはコンパクトで、絶縁型電源を設計するための時間が短縮されます。また、ディスクリート実装と比較すると、『ISOW7841』デバイスを、絶縁にかかわる機関から認定を受けるだけであるため、必要な認定の数も軽減されます。さらに、パッケージの高さが低いためZ方向のスペースが少なくなり、スペースに制約のある用途で基板をスタックできるようになります。

図2:絶縁型CANと電源の統合型実装

電源モジュール

絶縁型電源のもう1つのソリューションは、図3で示しているように絶縁型電源モジュールを使用することです。たとえば、RecomのR1SX-3.305/H-isolated DC/DCコンバータは入力3.3Vまたは5Vで、シングル アンレギュレートの3.3Vまたは5Vの出力を供給します。このモジュールを『ISO1042』のような絶縁型CANトランシーバとともに使用すると、CAN bus向けの完全な絶縁型ソリューションになります。RecomのR-REF03-CAN1リファレンス・ボード(英語)によって、絶縁型CAN busシステムの短期間での開発や分析が可能になります。

 図3:電源モジュールを使用した絶縁型電源

CAN信号と電源を絶縁するために利用できるオプションにはさまざまなものがあるため、選択するソリューションの決定は、絶縁の仕様、CANの性能、電源の要件、スペースの可用性、設計のしやすさによって異なりますが、設計の柔軟性を高めるためには、ディスクリート・ソリューションの方が適しています。一方、統合型ソリューションはコンパクトで、設計の時間が短縮され、スペースに制約のあるシステムに適しています。

参考情報
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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年1月9日)より翻訳転載されました。
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