システム・ベーシス・チップ(SBC)とは

SBCは、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)トランシーバ、またはローカル相互接続ネットワーク(LIN)トランシーバと内部/外部の「電源部品」が統合されたシンプルな集積回路です。電源部品としては、低ドロップアウト・リニア・レギュレータ(LDO)かDC/DCコンバータのいずれか、または両方が統合されます。

設計者が出力電力を増やす必要がある場合や、レイアウト上、トランシーバとディスクリートのLDO(またはDC/DCコンバータ)の両方を使用するディスクリート・ソリューションが要求される場合には、SBCが適しています。

SBCは市場にとって新しいものではありませんが、集積方法や性能面におけるイノベーションにより、SBCを搭載したデバイスは広く普及しています。自動車の設計者の場合は、高度な統合と信頼性の向上によって、より軽量で低コストの設計が可能になります。Classical CANからCANフレキシブル・データ・レート(CAN FD)に移行するためには、CAN FDコントローラ・プロセッサの供給面の問題を解消するとともに、Classical CANおよびCAN FD両者のバス数の増加に対応するソリューションが必要です。

SBCについて詳しく紹介する前に、まずCANトランシーバとLINトランシーバについて説明します。この2つのプロトコルに詳しい人であれば、両トランシーバは、それぞれ対応するプロトコルの入出力部分に使用されることがわかると思います。トランシーバはデータ・パケットを受信すると、次の処理のためにデータをマイコンやマイクロプロセッサに送ります。次にトランシーバは、データを送ったプロセッサから情報を受け取り、対応するバスに対してアウトバウンド通信を行います。

CANトランシーバもLINトランシーバも、元々はごく基本的なデバイスですが、メーカーは保護機能の強化、設計上の複雑さの軽減、省スペース、低コストを実現するために、機能を次々と追加してきました。両トランシーバの機能には、バス・フォルト保護や静電気放電保護も含まれます。さらに1.8V、3.3V、5Vの入力/出力(VIO)を介してプロセッサとの間でデータを送受信する機能が含まれます。

ここではLDOベースのSBCについて説明しますが、これは高出力のDC/DCコンバータにも当てはまります。

SBCの好例の1つが『TCAN4550-Q1』で、1つのパッケージにCAN FDコントローラとCAN FDトランシーバの両者が内蔵されています。このデバイスは、シリアル・ペリフェラル・インターフェイス(SPI)を介してマイコンやマイクロプロセッサと通信します。SPIは多くの処理ソリューションで幅広く使われているため、CAN FDの高度な機能があらゆる設計で利用できるようになります。図1は、このデバイスの基本ブロック図で、マイクロプロセッサとの接続状態がわかります。

 図1TCAN4550-Q1のブロック図(赤枠内は、プロセッサ/デバイス間の接続箇所)

『TCAN4550-Q1』の追加機能には、1.8V、3.3V、5VをサポートするVIO、ウェイク、インヒビット、タイムアウト・ウォッチドッグ(通常は利用できないプロセッサ機能を有効にする)などがあります。

図2では、SBCのLDO部分が目立つように表示されています(赤枠内)。『TCAN4550-Q1』に内蔵されているLDOは、125mAの電流を供給します。CAN FDトランシーバの駆動に使用される電流は約50mAで、最大70mAの出力電流が残っているため、組み込みマイコンなど他の部品に十分な電流を供給できます。

 図2:TCAN4550-Q1(赤枠内がLDO)

CANおよびLIN対応のSBCでは、従来多数のディスクリート部品が必要だった追加機能を有効にするために、重要な機能が次々と統合されています。これらの機能には、出力電流の増加(LDO、DC/DCコンバータを追加)、プロセッサのオン/オフ制御(ハイサイド・スイッチを追加)、マルチプロトコルのサポートなどがあります。

TIには、CANおよびLINトランシーバの標準ポートフォリオから開発されたCANおよびLIN SBCがあります。LIN SBCの『TLIN1441-Q1』にも、前述の機能の多くが含まれており、125mAのLDOが内蔵されています。

参考情報

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年6月10日)より翻訳転載されました。
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