多くの教科書や参考書では、オペアンプは、増幅、加算、減算など、さまざまな機能や動作を行うICとして定義されています。この定義に同意はしますが、デバイスの入力ピン電圧の重要性にも着目する必要があります。

入力電圧が等しい場合、オペアンプは通常、線形動作をしています。オペアンプが前述の機能を正確に実行しているのは、この線形動作の間です。しかしながら、入力電圧を等しくするためにオペアンプができるのは、出力電圧を変えることだけです。従って、オペアンプ回路の出力は通常、何らかの形で入力に接続されています。これは一般的には電圧帰還と呼ばれています。

この記事では、汎用の電圧帰還オペアンプの基本動作を説明し、さらに詳しく学ぶための他のコンテン��を紹介します。


オペアンプによる設計

図1にオペアンプの標準的な回路記号を示します。入力端子が2個(IN+、IN-)、出力端子が1個(OUT)、電源端子が2個(V+、V-)あります。端子名はメーカー毎に異なり、同一メーカーでも異なる場合がありますが、それでも5個の端子であることは同じです。

例えば、V+の代わりにVccやVddという名前だったり、V-の代わりにVeeやVssだったりします。電源端子のこれらのラベルは、デバイス内部のトランジスタの種類を指しているので異なっています。例えば、オペアンプ内部でバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を使用している場合、電源はBJTのコレクタ/エミッタ端子に対応するVccとVeeです。電界効果トランジスタ(FET)を使用している場合は、FETのドレイン/ソースに対応するVddとVssです。今日、多くのオペアンプはBJTとFETの両方を含んでいるので、デバイス内部のトランジスタによらず、V+とV-がよく見かけるラベルです。要するに、ピンのラベルに惑わされず、動作を理解しましょう。

図1:汎用オペアンプの回路記号

式1はオペアンプの伝達関数を表しています。

 (1)

式1で、AOLは「開ループ・ゲイン」と呼ばれ、最近のオペアンプでは通常極めて大きな値(120dB、1,000,000V/V)になります。例えば、IN+とIN-の電圧差がわずか1mVでも、オペアンプは1,000Vを出力しようとします!  このような構成では、出力によって入力を互いに等しくすることができないため、オペアンプは線形領域で動作しません(理想的にはIN+とIN-は等しいことに注意してください)。従って、オペアンプには開ループ・ゲインを制御する方法が必要で、これは負帰還によって実現します。

図2は、帰還制御システムの一部としてのオペアンプを示しています。出力OUTは、ブロックßを通過して負入力IN-にフィードバックされています。ßは帰還係数と呼ばれ、通常は抵抗器を使って出力電圧を分圧します。

図2:負帰還付きのオペアンプ

図3では、開ループで動作するオペアンプと負帰還付きのオペアンプを比較しています。このTINA-TI™ソフトウェア・シミュレーションでは、出力電圧を制限するために、理想に近いオペアンプを電源とともに使用しています。左の開ループ構成では、出力はほぼ正電源(V+)と等しくなります。  これは、入力ピン間に微小な電圧差(100mV)があるからです。  このわずかな電圧が開ループ・ゲインの分だけ増幅され、出力が一方の電源電圧まで上昇しています。  図3の右側の負帰還、つまり閉ループ版では、反転/非反転入力を等しくするために、オペアンプの出力側の分圧器で200mVの出力電圧が必要です。

図3:開ループ(左)と負帰還(右)

 入力電圧の増幅はゲインと呼ばれます。ゲインは、帰還ループ内の抵抗値の関数です。式2は、図3の右側の回路(非反転増幅器と呼ばれます)に対するゲインの式です。計算された出力電圧は、シミュレーションに対応しています。この回路(そして、バッファ、反転増幅器、差動増幅器など、他の一般的なオペアンプ回路)についてもっと学びたければ、eブック「アナログ・エンジニア向け回路クックブック:アンプ」をダウンロードしましょう。

                    (2)

オペアンプの出力は電源電圧によって制限されます。図4は、図3の非反転増幅器の入力電圧に対する出力電圧のグラフです。出力が正負電源電圧に近づくと、出力が飽和する制限に注目してください。

 図4:非反転増幅回路での入力電圧に対する出力電圧

この制限があるため、出力が電源電圧に近づくにつれ、入力ピン間の電圧差Vdiff���大きくなる��とが図5から���かります。入力ピンがほぼ同じ電圧になるのは、オペアンプが線形領域で動作している場合だけです。

図5:非反転増幅回路でのIN+に対するVdiff

オペアンプについて詳細に理解するには、TIプレシジョン・ラボのアナログ・カリキュラムが役に立ちます。このカリキュラムでは、オペアンプ内部をさらに掘り下げ、入力オフセット電圧(Vos)、入力バイアス電流(IB)、入出力の制限事項など、基本的な非理想事象を取り上げます。また、オペアンプの帯域幅(BW)、スルーレート(SR)、ノイズ、同相除去比(CMRR)、電源除去比(PSRR)、安定性など、高度なテーマに関する講義もあります。講義に加え、テーマによってはハンズオンのラボ実験も用意されています。実験を行うには、対応するオペアンプ評価モジュールが必要です。

根っからの実験好きなら、ユニバーサルDo-It-Yourself(DIY)アンプ回路評価モジュール(シングル・チャネル・デバイス用)、デュアル・チャネル・ユニバーサルDo-It-Yourself(DIY)アンプ回路評価モジュール(デュアル・チャネル・デバイス用)、またはDIPアダプタ評価モジュール(標準のプロトタイピング・ボート、ブレッドボードと組み合わせて使用可能)が面白いでしょう。DIY評価モジュールは各種のパッケージに対応し、この記事で説明した非反転増幅器や、反転増幅器、バッファ、フィルタ(サレンキー、複数帰還)など多数の標準オペアンプ回路を実装しています。DIPアダプタEVMは、ブレッドボードと組み合わせて使用できるように、多数の標準的な表面実装パッケージをDIPに変換するので、どのような構成のどのようなアンプでも評価できます。

オペアンプの基本原理は、入力ピン電圧が等しい場合にだけ線形であるということです。しかし、これを実現するためにオペアンプが調整できるのは出力電圧だけです。出力振幅が制限されることで、入力電圧間に差が生じ、非線形で望ましくない挙動につながります。

参考情報

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年1月21日)より翻訳転載されました。

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