ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)の電気回路は、標準の動作モード時に高電圧バッテリ(400V/600V)から低電圧バッテリ(12V)に電力を流すために設計されています。 また、緊急時には、HEV/EV の起動に昇圧が必要なことから、このような車載電源回路は、緊急時に低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を流すことができる双方向 DC/DC 変換への対応が必要です。 したがって、双方向設計には電圧を下げるための降圧モードと、電圧を元に戻すための昇圧モードが必要となります。
設計上の検討事項
降圧モード・コンバータ段(400V/12V)に最適なトポロジーは、位相シフト・フル・ブリッジ(PSFB)です。 このトポロジーでは、絶縁型トランスの 1 次側にある 4 つの電子スイッチと、2 次側にあるダイオード整流器(または MOSFET スイッチ)のゼロ電圧スイッチング(ZVS)が可能であるため、スイッチング損失を低減できます。 低出力電圧と高出力電流定格に対する最高の性能を実現するには、ダイオード整流損失の低減のために 2 次側に同期整流が必要となります。
PSFB 出力段の制御には、電圧モード制御(VMC)、平均電流モード制御(ACMC)、ピーク電流モード制御(PCMC)など、さまざまな動作モードを利用できます。 出力段検出回路への変更にともない、制御回路の設計変更を行うことを回避するために、もっとも良い方法は高性能デジタル・マイコンの採用です。
C2000™ 32ビット・マイコンは、特にデジタル電源アプリケーション向けに設計されています。 C2000 Piccolo™ TMS320F28035 マイコンは、高度な制御アルゴリズムを実行するのに十分な CPU 処理能力を備えており、高度な切り替えパターンに対応したフレキシブルな PWM 機能も搭載しています。
昇圧モード・コンバータ段では、同期整流スイッチをプッシュプル・スイッチとして利用できます。 このモードでは降圧モード・インダクタを電流源として使用できるため、このトポロジーは電流給電のプッシュプル・コンバータとして動作できます。
このような制御アルゴリズムは、単一の C2000 TMS320F2803x マイコンで実装できます。 TMS320F2803x マイコンは、フィードバック信号と PWM 出力経由で出力段との相互動作が可能で、さらに低電圧側に配置できます。
ソフトウェア一式と回路図も提供する TI Designs リファレンス・デザイン
「双方向 400V-12V DC/DC コンバータ 」のための TI Designs リファレンス・デザインでは、これまで述べてきたアプローチを採用しています。 絶縁型トランスの高電圧側では、フル・ブリッジが 4 つの MOSFET スイッチ(Q1 ~ Q4)で構成されており、さらに 2 つの MOSFET スイッチ(Q5 と Q6)がセンター・タップを装着した低電圧側に配置されています。 これらのスイッチは、降圧モードでは同期整流器として、昇圧モードではプッシュプル・スイッチとして動作します。
このシステムでは、異なる動作モードを制御しなければならず、複雑な PWM 波形と高速な閉ループ計算が必要となります。 こうした実装方式では、TMS320F2803x マイコンの高度な PWM ペリフェラル、高速 12 ビット ADC のほか、DACやスロープ補正機能を集積した統合型アナログ・コンパレータなどを活用しています。
システムの特長:
- 200VDC ~ 400VDC の HV バス電圧範囲
- 9VDC ~ 13.5VDC の LV バス電圧範囲
- 300W の双方向定格出力動作
- LV バスにおける 33A の定格電流と HV バスにおける 1.8V の定格電流
- 降圧と昇圧モード間のシームレスで迅速な切り替え
- 降圧モードでの位相シフト・フル・ブリッジ動作
- 昇圧モードでの電流給電のプッシュプル動作
- 100KHz の PWM スイッチング
- 出力インダクタ電流の VMC と ACMC
- 複数の SR スイッチング方式
- 保護機能:過電流、低電圧、過電圧
リファレンス・デザインを活用すれば、双方向 DC/DC コンバータを使った回路設計を迅速に開始できます。 詳細は、こちらでフル・デモをご覧ください。
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