このシリーズの第1部では、高電圧レールで高電流、低電圧レールで低電流を必要とするアプリケーション例を使用しましたが、今回は状況が逆転し、高電圧レールではわずかな電流しか使用せず、一方でシステム負荷の大部分には低電圧レールを通じて電力を供給するようになった場合を考えてみます。

車載システムの一般的な要件は通信を維持することであり、その通信は多くの場合、5Vで動作し、システムの残りの部分がオフのときでもオンに維持されている、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)トランシーバで処理されます。つまり、安定した5Vレールに電力を供給するスタンバイ低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)にとっては最適なシナリオです。システムの他の部品、たとえばマイコン、メモリ、発光ダイオード(LED)ドライバ、モータ・ドライバ、追加のインターフェイス、ポイント・オブ・ロード電圧レギュレータなどは、通常はこれ以下の電圧で動作しますが、はるかに大きな電流が必要です。

2部構成のシリーズのこの回で紹介するアプリケーション例は、車載用ヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)です。HUDの電源ツリーは、異なる電流要件を持つ2つのレールで構成されています。5Vレールには、常時オンのCANトランシーバに電力を供給するために、最大で100mAが必要です。他のすべての負荷には、3.3Vレールから電力が供給されます。図1に示すように、3.3Vレールによって動作し、最大2Aの電流を消費する低電圧の電源管理集積回路(IC)が、マイクロプロセッサとダブル・データ・レート(DDR)メモリ、およびシステムの残りの部分に電力を供給します。

現在のHUDユニットの多くは、降圧コンバータとLDOのディスクリート・ソリューションを利用することで、このような要件を解決していますが、車のダッシュボード上のスペースは非常に限られています。基板スペースが節約できれば、それだけ運転者にとってはメリットとなり、車内空間もさらに広がります。重要なのはサイズです。ディスクリート・ソリューションを1つのチップに統合し、降圧コンバータとLDOレギュレータの組み合わせによって電源ツリーに対処すれば、削減できるソリューション・サイズは25%を超えます。

統合ソリューションを利用する場合、ディスクリート実装によるメリットを犠牲にする必要はありません。降圧コンバータとLDOは、両方とも個別にアクティブにでき、バッテリに直接接続することもできます。これにより、電源レールへの給電時には完全に独立した出力電圧と最大限の柔軟性が得られます。 

図1: 車載用HUDのブロック図

1チップ・ソリューションであるTPS 65321-Q1は、通常動作時にはHUDシステムの両方の電圧レールに電力を供給する一方、標準静止電流が35µA未満のスタンバイ・モードでは、高電圧レールをオン状態に保ちながら、LDOを通じて5V CANトランシーバに給電することができます。

ソリューション・サイズの縮小とディスクリート機能の統合は、すべての車載システムにおいてトレンドとなっています。同じような電源ツリー要件や使用例が、ほぼすべての車載アプリケーションに見られ、インフォテインメント先進運転支援システム(ADAS)ボディ・エレクトロニクス、テレマティクス・システムなどに採用されています。

 

その他のリソース

  • TPS 65023-Q1およびTPS 65321-Q1のデータシートをダウンロードしてください。
  • Eco-mode™制御方式およびLDOレギュレータを備えたTPS65321 EVM 36V降圧コンバータ評価モジュールで、設計を開始しましょう。 
  • このブログ・シリーズの第1部をご覧ください。

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/behind_the_wheel/archive/2016/06/30/how-a-wide-vin-integrated-buck-and-ldo-can-power-your-automotive-system-part-2

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