AR HUDにおける太陽光負荷モデリングの重要性


現在、拡張現実(AR)ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)の応用例として、パイロットの視線上に重要な情報が豊富に映し出されるジェット戦闘機があげられますが、自動車についても、運転する上で重要な情報を現実世界に重ね合わせるARディスプレイは、運転体験をまったく変えてしまうものです。自動車を取り巻く環境では、基本的な警告音やマークを出す代わりに、運転手の視線上に直接グラフィック表示を映して情報を伝えたり視野内の危険性を特定したりすることで、運転者が速やかに行動を起こせるようになるでしょう。このグラフィック表示は、周りに合わせて自然に現実世界を拡張したように表現されます。これは、現在のHUDに見られるような、単に情報を映す二次的ディスプレイとは異なります。

以前のブログ記事でも紹介したように、太陽放射照度はAR HUDを設計する上で大きな課題です。従来のHUDとは異なり、AR HUDの視野は広く、仮想イメージ距離が長くなり、さらに車体センサのデータをHUDディスプレイにリアルタイムで統合することが求められます。仮想イメージ距離が長いこと(7m以上)と、程度は少ないものの視野が広がった(少なくとも水平角度が10度、垂直角度が4度)ことで、太陽エネルギーが著しく集束され、そのため投影機パネルの温度が上昇します。太陽放射照度からの熱によるダメージを防ぐには、AR HUDの設計に注意を払い、信頼性の高い動作を保証するため太陽光負荷シミュレーションを綿密に実行する必要があります。AR HUDを設計する上で太陽光負荷の影響をモデリングするときに気を付けるべきポイントを説明します。

太陽光負荷モデルの精度
モデルの要素における精度の重要性はどんなに大げさに言っても言い過ぎではありません。AR HUDの太陽光負荷シミュレーションには、適正な角度、スペクトル、放射照度特性、さらに車の光学的要素(フロントガラス、グレアトラップ、ホットミラーおよびコールドミラーなど)の正確なスペクトル透過曲線による正確な太陽光源モデルが必要です。

軸外の太陽放射照度の影響
日常の運転状況では、道を曲がったり坂を上り下りして傾きが変化したりするので、さまざまな角度から太陽光が車内に入ります。そのため、図1の例で示すように、車内に入ってくる太陽光を適切な角度の範囲でスキャンすることが重要です。TI DLP®テクノロジを使用した当社のAR HUDプロトタイプでは、軸外のピーク太陽放射照度は最も主要な光線レベルに比べて2.7倍も悪く、熱負荷が大幅に高くなることが判明しました。シミュレーションで得られたピーク太陽放射照度を図2に示します。ワーストケースの軸外太陽放射照度を考慮してシステムを設計しなければ、投影機パネルがダメージを受け、容認しがたい故障を現場で起こすリスクが生じます。

 図1:幅広い入射角度にわたる太陽光のシミュレーション

 図2:太陽光の入射角度に対応する拡散スクリーンのピーク放射照度

太陽放射照度の熱の影響
ピーク太陽放射照度のシミュレーションは、熱による故障を予測し回避する最初のステップでしかありません。太陽エネルギーは、太陽光が当たる物質のスペクトル吸収に基づいて熱に変換されます。例えば当社のテストでは、図3に示すように、太陽光負荷によるTFT(薄膜トランジスタ)パネルの温度は、DLPテクノロジをベースにしたシステムで使用される透過マイクロレンズ・アレイ拡散スクリーンに比べて6倍も上昇が速く、TFTパネルが太陽放射照度によるダメージを受けやすいことがわかります。

周辺温度が85°Cのとき、DLPテクノロジを用いたHUDシステムで見られるクラレの拡散スクリーンは、スペクトル吸収が低く動作温度が高いため、82kW/m2の太陽放射照度まで耐えることが可能です。このような高い熱性能により、DLPテクノロジはAR HUDの長い仮想イメージ距離に対応することが可能になっています。

 図3:太陽放射照度と温度上昇の関係

AR HUDの設計上の�����は、現在のHUDの設計で見られる課題とは大きく異なります。AR HUDでは太陽光負荷が非常に高くなるため、熱シミュレーションを綿密に行って、軸外太陽放射照度を設計で解決しなければなりません。太陽光負荷モデリングについて詳しくは、ホワイトペーパー「DLP Technology: Solar loading in augmented reality head-up display systems」(英語)をご覧ください。

参考情報

※DLPはTexas Instrumentsの登録商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年10月2日)より翻訳転載されました。
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