ドライバーは、長距離の運転の際に、配偶者に休憩が必要かどうかを訊かれたり、友人に運転を代わらなくても大丈夫か尋ねられたり、仲間から前方の危険について警告されたりするなど、何らかの形でモニタリングを体験しています。仲間が障害物や危険性について警告してくれることは非常に便利ですが、車内の他の人によるドライバー監視は現実的ではありません。しかし、重大な失敗を冒しそうな注意散漫なときには、事故につながる恐れがあります。

欧州新車評価プログラム(NCAP)2025ロードマップ・レポートによると、年間交通事故の推計90パーセントは人的ミスが原因でした。このレポートは次のように続いています。「通例、2種類の人的ミスが見られ、1つは、速度や、飲酒などの交通違反、もう1つは、不注意、疲労、注意散漫というドライバーの状態や経験不足によるものです。高齢化社会では、病気による突発的な運転不能も事故の原因として増えています。」

機械ではなく、ドライバーのミスが自動車関連の事故の主な原因であり、このような一般的なドライバーのミスを解消するために多くの調査やユーロNCAPによる安全性の取り組みが行われています。

半自律や自律動作機能はドライバーによるミスの減少に役立ちますが、最近のニュースでは、予測不可能な道路状況や路上の障害物(自転車や障害物など)も自動車の衝突の原因になっています。自律運転モードによる操作がこのような予測できない状況を克服しない限りは、引き続きドライバーが自動車を運転する必要があります。 

視覚ベースのドライバー監視システム(DMS)は、ドライバーによって引き起こされる一般的なミスの情報を補完するため、先進運転支援システム(ADAS)、電子制御ユニット(ECU)、自律走行システムに有効なフィードバックを提供しています。例えば、ドライバーの集中力が低下した際に、自動車からドライバーへの警告通知や、衝突防止操作を行います。

DMSソリューションは、ドライバーに対して赤外線が向けられた1台または複数のカメラで構成され、品質画像をキャプチャして次善の照明条件で処理できます。『TDA3』車載プロセッサは、1秒あたり20~60の間のフレームレートで計算ユニットにカメライメージをストリーミングして、ドライバーの存在と目や口など主要な顔のマーカー、視線の方向や頭の位置を検出するために視覚アルゴリズムを実行できます(図1)。たとえば、目の周りのポイントが上下に移動する割合や、頭の方向(上、右、傾き)によって眠気を検出できます。

 図1:DMSでのドライバーの顔

視覚アルゴリズムが主要な顔のマーカーを連続的に収集して分析し、警戒、疲労、注意力のレベルや視覚焦点範囲などの、ドライバーの状態を認識して表示します。この表示情報はADAS ECUで分析され、衝突を最小限にとどめたり削減したりするために、自動操縦やブレーキの判断の制御を支援します。また、ドライバーの注意力に応じて自律運転機能を無効化したり有効化したりできます。

DMSからのフィードバックで利便性が向上し、ドライバーの注意力など、自律モードが受け入れ可能な境界条件で動作中であるかどうかを判断することによって、(手放しのハンドル操作などの)自律運転を提案します。動作中でない場合は、制御がドライバーに移ることをドライバーに警告するために必要な手順を踏みます。また、これらのシステムでは、緊急時には逆のことが可能です。つまり、ドライバーが眠っている場合や動けなくなった場合に、安全な休憩場所まで自動車を操作できるように制御を自律システムに移します。

DMSは、自動車のステアリングシステムと制御システムに正確なリアルタイムのフィードバックを提供する、きわめて重要な役割を果たします。DMSのフィードバックが効率的かつ正確に作業するには、高性能の計算プラットフォームが必要です。さらに、システムが自動車の狭いスペースの制約に適合する必要があります。「ドライバー監視システムで衝突防止を支援する方法:パート2」では、ドライバー監視システムを開発するためのシステム・レベル要件について説明します。

参考情報

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年10月4日)より翻訳転載されました。
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