電子技術の進化により、車載フルLEDヘッドライトの機能を制御するための電子制御ユニット(ECU)が必須となっています。ECUは、ハイビーム、ロービーム、昼間走行灯、車幅灯、方向指示器、フォグ・ライトといったヘッドライト機能のためのLEDドライバで主に構成されます。この技術記事では、柔軟な設定が可能なLEDドライバを使用する利点について説明します。

LEDが初めに車載ヘッドライトに使われるようになったときは、LEDドライバに接続されたハイサイド・スイッチが、それぞれのヘッドライト機能の該当のLEDを駆動していました。図1は、対応するヘッドライト機能ごとにLEDドライバを使用する、従来の車体制御モジュール(BCM)のブロック図です。ヘッドライトの機能ごとのLEDと入力電圧との関係から、ベストなDC/DCトポロジが決まります。

1:従来の車載BCMで使用されるLEDヘッドライト用DC/DC LEDドライバ

図2は、よく使われるDC/DC LEDドライバのトポロジと、その電圧の関係を表した基本回路図です。

2:よく使われるDC/DC LEDドライバ・トポロジの基本回路図

ハイサイドMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)を必要とする降圧LEDドライバを除くすべてのトポロジは、ローサイドMOSFETコントローラで実装されます。そのことから、ローサイドMOSFETコントローラは、柔軟な設定が可能なLEDドライバの構築に不可欠な要素の1つです。

電子技術が進歩し、自動車メーカーも車両に電子制御を組み込むことに抵抗がなくなっているので、最新の車載フルLEDヘッドライトは、マイコンを含め、新型のBCMを備えたECUを利用するようになるでしょう。ECUには、BCMからコマンドを受け取る際にマイコンを通して通信する機能が必要で、すべてのヘッドライト機能はそのコマンドに応じて制御されます。図3は、車載フルLEDヘッドライトに使われる最新のアーキテクチャです。

3:車載フルLEDヘッドライトの最新アーキテクチャ

ECUのマイコンは、BCMから情報を受け取り、どのヘッドライトの機能をオンまたはオフにするかを判断します。さらに進んだモデルでは、ECUはBCMのコマンドに応じてヘッドライトの明るさを個別に変化させる必要があるでしょう。マイコンがデジタル・インターフェイスを介して個々のDC/DC LEDドライバとやり取りできるよう、ECU内部にSPIといった効果的なデジタル・プロトコル・ツールがあるのがベストです。

デュアルチャネル、ローサイドN型MOSFETコントローラ『TPS92682-Q1』は、SPI(シリアル・ペリフェラル・インターフェイス)を備え、これによりデジタル制御を通してパラメータを使った設定が可能になります。ローサイドN型MOSFETコントローラを用いると、昇圧、バッテリ電圧までの昇圧、SEPIC(シングルエンド・プライマリ・インダクタ・コンバータ)、フローティング降圧などの、さまざまなDC/DC LEDドライバ・トポロジを構築することができます。SPIにより、マイコンはデジタル・プロトコルを通してパラメータ設定情報を提供することができます。さらに重要なのは、デュアルチャネルのデバイスには、ECUのコマンドに応じて柔軟にプログラムできる、完全に独立したコントローラが2つあることです。図4に示すように、6チャネルのECUを3個の『TPS92682-Q1』で構築することが可能です。

4:『TPS92682-Q1』を使った6チャネルECUのブロック図

TPS92682-Q1』には、チャネルを電流出力にするか電圧出力にするかを設定できる機能があります。シンプルなECUは通常、さまざまなヘッドライト機能に対応した電流源をLEDに供給します。マトリクスLEDヘッドライトのようなより先進的なヘッドライトでは、LEDマトリクス・マネージャに適合するピクセル照度制御用に、LEDドライバが昇圧から降圧の設定になっている必要があります。図5は、先進的ヘッドライトのECUの標準的ブロック図です。

5:先進的ヘッドライトの標準的ECUブロック図

TPS92682-Q1』の2つのチャネルは、2相電圧出力レギュレータとして動作するようにプログラムすることができます。これにより、最大120Wの高出力が得られます。しかし、昇圧からフローティング降圧のアーキテクチャが必要なシンプルなヘッドライトLEDドライバもあります。一方のチャネルを昇圧出力として設定し、もう一方をフローティング降圧電流出力とすることで、昇圧からフローティング降圧のシンプルなLEDドライバを1個の『TPS92682-Q1』で構成することが可能になります。図6は、『TPS92682-Q1』を使用した、昇圧からフローティング降圧の概念図です。

6:『TPS92682-Q1』を使用した昇圧からフローティング降圧の概念図

車のヘッドライトは白熱電球からキセノンや高輝度ランプ、そしてLEDへと移行してきました。『TPS92682-Q1』は、最新のBCMと通信できる、柔軟に設定可能な車載ヘッドライトECUの実現に役立ちます。

参考資料

 +ホワイトペーパー(英語)  “An ECU Architecture for Adaptive Headlights.”

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらの技術記事(2019年11月21日)より翻訳転載されました。

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