システム障害をユーザーに知らせることは大変重要ですが、車のライトであればなおさらです。

車載リア・ライトの方向指示器を例として取り上げてみましょう。方向指示器は、運転手が車線変更や方向転換をしようと考えていることを知らせる合図です。方向指示器の光源として一般に使われ、今も増え続けているのがLEDです。LEDは、1段目が電圧レギュレータ、2段目が定電流リニアLEDドライバの、デュアル・ステージLEDドライバ回路トポロジで駆動されます。デュアル・ステージ・トポロジには、熱効率が良いという利点があります。

図1に示すLEDベースの方向指示器モジュールは、標準的な車載バッテリ、スイッチ、入力フィルタ、降圧レギュレータ、そして複数のLEDドライバで構成されます。では、ライトがうまく動かなくなったらどうなるのでしょう。故障が起きたことをどうやって知らせるのでしょうか。また、システムのどの部分が故障したのでしょうか。

 1:方向指示器モジュール

降圧レギュレータとLEDドライバの統合回路により、障害を検知するための診断機能を実装します。例えば、POWER GOOD信号は、降圧レギュレータの出力が適切なレギュレーション状態かどうかを示すのに使われる診断機能です。同様に、定電流LEDドライバが出力するFAULT信号は、LEDの回路が短絡または断線していることを示します。

この記事では、リア・ライトの障害検知回路に焦点を当て、降圧レギュレータのPWRGD信号とLEDドライバのFAULT信号を組み合わせて障害検知回路を設計する方法を説明します。

降圧コンバータのPWRGD信号

一般にPOWER GOODピンは、外付けプルアップ抵抗を使用するオープン・ドレイン出力です。正常動作時はHighにアサートされますが、不正な出力電圧、サーマル・シャットダウン、イネーブル・シャットダウンのいずれかにより出力電圧が低下すると、Lowに変化します。TIのデバイスについては、POWER GOODピン機能付き降圧レギュレータを確認してください。

データシートの記述に従い、推奨値を使用してPOWER GOODピンをHighにプルアップしておく必要があります。システム要件からは、プルアップ抵抗を使用してPOWER GOODピンを降圧レギュレータの出力電圧まで引き上げることが可能です。ただし、降圧レギュレータの出力電圧が推奨プルアップ電圧よりも高い場合は、電圧をクランプして制限するためにツェナー・ダイオードを使うのがベストです。


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LEDドライバのFAULT信号

TIのリニアLEDドライバのFAULTピンは、弱い内部プルアップを備えたオープン・ドレイン・トランジスタで、FAULT信号を解除するにはHighに駆動する必要があります。正常動作時は、FAULTピンはHighにアサートされます。LED回路が短絡または断線する障害が発生した場合は、デバイスの内部プルダウン電流によりFAULTピンがLowになります。

TIの車載グレードのLEDドライバでは、FAULTピンに以下の2つの設計オプションがあります。

1箇所の障害で全体の障害(OFAF):デバイスのうち1つに

l  不具合がある場合、すべてのデバイスをシャットダウンして障害を通知

OFAF無効:ある1つのデバイスに不具合がある場合、障害を通知し、残りのデバイスは引き続き稼動

最大で15のデバイスのFAULTピンを接続する場合、システムはOFAFを使用します。図2は、LEDドライバのFAULTピンに接続する障害コネクタ回路です。障害コネクタ回路は、FAULT信号をより強固なものにするのに使われます。外部回路と簡単に接続できるように、プルアップ付きのオープン・ドレインが使われています。

2:障害コネクタ 

OFAF無効の場合は、障害アグリゲータ回路が必要です。図3は、LEDドライバのFAULTピンに接続する障害アグリゲータ回路です。プルアップ付きのオープン・ドレイン出力により、障害の場合はOUTをLowに、障害がない場合はHighにアサートします。

3:障害アグリゲータ

障害アグリゲータ回路は、FAULTピンのプルアップ回路として定義されています。OFAFを無効にするには、FAULTピンをプルアップして、電圧が常に2Vを超えている状態を維持する必要があります。Pチャネル型トランジスタ(PNP)を使用して、FAULTピンを電流制御ピンから電圧制御に変換しています。プルアップ抵抗R2で、FAULTが2Vを超えている状態を維持します。一般に、FAULT信号は障害時にLow、障害がないときはHighにアサートします。そのため、プルアップ付きのオープン・ドレイン出力により、障害アグリゲータ回路のロジックを反転して、障害が発生するとOUTをLowに、障害がない場合はHighにアサートします。障害時にOUTをHighに、障害がない場合はLowにする必要があるシステムでは、プルアップ付きのオープン・ドレイン出力を設計から省略できます。

障害がトリガされると、LEDドライバは内部で電流をプルダウンし、プルダウン電流がプルアップ抵抗R2を流れます。PNPがオンになってPNPの出力がHighになり、OUTはLowになります。障害のトリガがない場合は、LEDドライバは内部でプルアップし、PNPはオープン・スイッチとして機能します。PNPの出力はLowになり、OUTはHighになります。どちらの場合も、FAULTは2Vよりも高いままです。

方向指示器モジュールを考えると、降圧レギュレータの出力電圧で障害アグリゲータ回路に電源供給する必要があります。ツェナー・ダイオードで、降圧レギュレータの出力をクランプして電圧を制限できます。降圧レギュレータに障害が発生した場合には、障害アグリゲータに電力が供給されず、障害が示されます。

車載ハイサイド調光リア・ライトのリファレンス・デザイン」では、TIの『TPS92630-Q1』『TPS92638-Q1』を使用した障害アグリゲータ回路の設計方法を示しています。

POWER GOOD信号を使用してLEDドライバの動作を有効にする

降圧レギュレータのPOWER GOOD信号とLEDドライバのFAULT信号を組み合わせる方法の1つが、LEDドライバのイネーブル(EN)ピンの利用です。ENピンがHighのときは、LEDドライバは通常どおり動作します。ENピンがLowのときは、LEDドライバは、静止電流が非常に低いスリープ・モードになります。

図4に、プルアップ抵抗R4とツェナー・ダイオードを使用し、POWER GOODピンをENピンに接続する方法を示します。ツェナー・ダイオードは、POWER GOODピン用にプルアップ電圧を下げて供給します。POWER GOODピンは、R4により、ツェナー・ダイオードのクランプ電圧までプルアップされます。

4POWER GOODENの接続

POWER GOODピンの出力をLEDドライバのENピンに接続することで、POWER GOOD信号がLEDドライバを制御するようになります。正常動作時は、POWER GOODピンはHighにアサートされ、LEDドライバが動作可能になります。降圧レギュレータに障害が発生すると、POWER GOODピンはLowになり、LEDドライバは動作不能になります。このとき、障害アグリゲータ回路への電源供給が停止し、OUTがLowになることで、障害が示されます。

システム障害解析

障害検知回路の目標は、方向指示器モジュールのLEDを点灯できなくしている不具合が何であれ、それを示すことです。障害の原因は、降圧レギュレータの出力電圧かLEDドライバの電流出力がおかしいのかもしれませんし、LEDが不良の可能性もあります。

図5は、方向指示器モジュール全体のブロック図です。この図では、プルアップ抵抗R4とツェナー・ダイオードを使用してPOWER GOODピンがLEDドライバのENピンに接続されています。障害アグリゲータ回路によりOFAFは無効です。

5:ツェナー・ダイオードと障害アグリゲータを使用したOFAF無効化

システムが正常に動作しているときは、バッテリ電圧がフィルタリングおよび降圧されて、LEDドライバに電源を供給します。POWER GOODピンは、ツェナー・ダイオードのクランプ電圧にプルアップされ、Highにアサートされて、LEDドライバを動作可能にします。次にLEDの電源がオンになり、LED回路の短絡または断線障害は検出されません。そのため、FAULTはLow、障害アグリゲータはLowになり、出力として示される障害はありません。

ここで、降圧レギュレータの出力電圧に不具合があるとしましょう。降圧出力電圧が正常範囲を外れ、POWER GOODピンがLowになります。LEDドライバが動作不能になり、LEDの電源がオフになります。LEDドライバが動作不能になると、FAULTがLowになります。障害アグリゲータにはツェナー・ダイオードのクランプ電圧からの電源供給がなくなり、出力がLowになり、障害があることを示します。

他の原因でも方向指示器モジュールに障害が発生することがあるでしょう。LED回路の短絡または断線のほか、LEDドライバのサーマル・シャットダウンなども考えられます。図4に示す回路は、方向指示器モジュールのさまざまな種類の障害を検出することができます。

まとめ

車載照明システムには、ますます多くの障害検知回路が実装されるようになっています。障害検知回路に必要なスペースとコストを削減するには、POWER GOODピンとLEDドライバのENピンの接続を試してください。LEDの障害については、OFAFを利用するか無効化するかどうかを検討し、個々のアプリケーションの要件を満たす設計オプションを選択してください。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年1月16日)より翻訳転載されました。
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