汎用Ethernetをベースとしたオープン・ネットワーク: FL-net


ファクトリ・オートメーション(FA)の進展にともない、各種のコントローラや FA 機器を相互接続してシステムを統合化する必要性が高まり、この実現手段であるネットワークの標準化が国際的な動向となっています。プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)を中心とした、オープン・ネットワーク 【FL-net】 もその一つで、TI SitaraTMプロセッサでもこのプロトコルのサポートが開始されました。

 一般社団法人日本電機工業会(JEMA)は、FL-net の開発と標準化および適合試験の実施と認証業務、ならびに普及活動に取り組んでいます。FL-net の普及により、異メーカ・異機種間の接続が可能となり、フレキシブルでオープンな FA システムの構築が可能となります。本技術記事では FL-net について説明します。

 

図1: 工場内でFL-netが使用される領域

 FL-net とは、Ethernet を採用し、コモンメモリ・システムを基本とする産業用オープン・ネットワークです。Ver.2 のコントローラ・レベルに加え、コモンメモリ・システム上に搭載する入出力機器定義を仕様化し、Ver.3 では、デバイス・レベルにも対応しました。ネットワークのフラット化が実現可能です。

 FL-net の特長

【3つの特長】

■ 国内の主要コントローラ・メーカが対応し、コントローラ間接続が容易

マルチ・ベンダのコントローラ・システムで実績多数

■ 汎用の Ethernet をベースとした産業用オープン・ネットワーク

■ 変わらない・変えない仕様

将来にわたって、従来方式の FL-net につながる互換性を継続

【さらなる特長】

◆ リアルタイム制御システムを構築(リフレッシュの定時性を保証)

◆ コントローラ・レベルからデバイス・レベルにわたるネットワーク

◆ 標準化、認証体制の確立

 FL-net の技術

■ 汎用の Ethernet を採用

  • 既存の標準技術
  • 安価で入手容易な部品専用ハードウェア不要。高速性、将来性
  • Ethernet ハードの実装があれば、どのベンダでも開発し易い

■ FA 用途のサービスの実装

  • サイクリック伝送(データリンク)によるコモンメモリ・システム
  • メッセージ伝送(メモリ、パラメータの読出、書込)
  • 汎用プロトコル(TCP/IP)の重畳が可能
  • トークンパスの空き時間を活用
  • 入出力(IO)定義をコモンメモリに搭載
  • ネットワーク設定サーバを搭載

■ 応答時間の保証による制御性能

  • 伝送周期:50ms/32 ノード、サイクリックデータ(2kbit+2kW)

図2: FL-net の技術構成

表1: FL-net の仕様

 

Sitara プロセッサでの FL-net

JSL Technology 社により、FL-net が Sitara プロセッサに実装されました。“JS-FLNET SDK” for AM335x は、Arm® Cortex®-A8 ベースのSitara AM335x向けに開発した FL-net 製品開発用ソフトウェアです。ソフトウェア開発に必要な基本コンポーネントがすでに用意されている為、開発を『より早く、簡単』に実現できます。

【ハードウェア・ブロック図】

SDK を��作させる為の基本ハードウェア・ブロック図を以下に記述します。

 

図3: JS-FLNET SDK for AM335x を動作させるハードウェア・ブロック図

 

最低限必要な部品としましては、AM335x プロセッサ、Ethernet PHY、SPI Flash および DDR SDRAM となります。

【ソフトウェア・ブロック図】

SDK にて提供しているソフトウェアのブロック図を以下に記述致します。

提供コードはアプリケーションとブートローダーに分かれています。

 

図4: “JS-FLNET SDK” for AM335x のソフトウェア・ブロック図

 

各ブロックの概要は以下の通りです。

User Application:

ユーザーが各種アプリケーション仕様に基づいて実装を行う部分です。

FL-Net Stack:

JEMA が提供する FL-net 用スタックです。JSLT 社で開発した組み込みシステムに実装する為に必要となるパッチコードを使用して実装されます。

Integration Layer:

FL-Net スタックをターゲット OS システムで動作させる為の実装コードです。

TCP/IP Stack(uNet3):

eForce 社が提供する、組み込み向け TCP/IP スタックです。uC3 上で動作します。

JSL Hardware Access Library:

少ない API でペリフェラルを簡単に利用可能としたペリフェラル・ドライバです。アプリケーション仕様に基づいて任意のドライバが使用出来ます。標準では利用度の高いドライバが実装されており、ユーザー要望に応じて追加実装も可能です。

JSL OS Wrapper API:

ペリフェラル・ドライバ等についての OS 載せ替えを用意にする為の代替 API です。

Real Time OS(uC3):

eForce 社が提供する ITRON ベースのリアルタイム OS です。

 ■スムーズな開発環境構築をサポート

【開発環境構築】

ゼロの状態からデバッグするまでに必要な作業(アプリインストールや初期設定など)が詳しく解説されている為、スムーズに環境構築が可能です。また、ソフト開発メンバーへの説明・ 展開も容易に行えます。

■スピーディーな設計をサポート

【ソフト構成・ API 説明】

開発者が必要とする情報を日本語で明確に、解り易く記述してあります。理解に多くの時間を掛けること無く、スピーディーな開発をサポート致します。

Sitara プロセッサ・ファミリによるマルチプロトコル対応

FL-net は、前述のように汎用の Ethernet を用いているため、汎用のプロセッサで対応可能です。しかし、EtherCAT® など、専用の ASIC や FPGA を必要とするものもあり、Sitara プロセッサは、それらを含め、FL-net と共通のプロセッサ、ハードウェアで、ほぼすべての産業用通信プロトコルを実装することができます。

 

図5: AM3359産業用通信エンジン(ICE)ボード

 

Sitara プロセッサ製品ファミリにより、次のような利点を提供できます。

  • コストの削減、基板実装面積の縮小、どの産業用通信プロトコルでも外付け ASIC が不要
  • 低消費電力のSitaraプロセッサ製品ファミリにより、最小限のシステム消費電力
  • 低価格『AMIC110』から、Gb TSN対応高機能 AM65xx まで幅広いラインナップにより、I/O モジュールから高性能コントローラ、HMI まで、あらゆるファクトリ・オートメーションの機器を単一プラットフォームで統一可能

 

この技術記事では、FL-net の機能をクローズアップしました。このシリーズの、他の産業用 Ethernet 標準規格に関するブログ記事もご覧ください。

参考資料

             *お問い合わせは、JSL Technology株式会社 Jslt.co.jp/contact/ までお願いいたします。

 

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