現在の産業界では、モーター・ドライブ、ファクトリ・オートメーション、大電力グリッドなどの幅広い多様なアプリケーションに対して、さまざまなソリューションやアーキテクチャを利用できます。その多くは、安定した性能とコネクティビティを提供しますが、それらは複雑でコストが高く、システム要求を満たすために複数チップを必要とすることもよくあります。絶え間なく進化する市場において、設計の差別化は重要ですが、ビジネスのライフサイクルおよび最終的な長期のサステイナビリティのためには、効率と性能が不可欠です。

「どうすれば競争できるか」「ビジネスを維持し、未来に向けて推進するには何が正しい選択か」と、自問することもあるでしょう。問題の中心となるのは、リアルタイム制御とリアルタイム・コネクティビティとの統合機能です。

リアルタイム・コントローラC2000TMの新シリーズである『F2838x』では、産業用および大電力グリッド・アプリケーションにおけるシステム・レベルの柔軟性を高めながら、強化されたコネクティビティ・オプションを提供し、制御パフォーマンスを向上させています。図1の新シリーズについて説明すると、これは新しいコネクティビティ・マネージャであるArm® Cortex®-M4ベースのサブシステムを搭載し、性能が強化されたF2837xデバイスであり、処理が集中する通信の負荷を軽減し、コネクティビティを最適化します。

 1TMS320F28388Dのブロック図

通常はFPGA/CPLD(Complex Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、コミュニケーション・マイコン/マイクロプロセッサにより実行される機能を備えることで、『F2838x』は、コネクテッド・サーボ・ドライブ、ACドライブ、ファクトリ・オートメーション、産業用電力機器に対して、ほぼシングルチップのソリューションを実現します。

リアルタイム通信は、Arm® Cortex-M4ベースの専用コネクティビティ・マネージャにより実現されます。EtherCAT機能が統合され、外付けASICは不要で、10/100 Ethernet、CAN FD、USB、および各種高速シリアル・ポートにも対応しています。さらに、高速シリアル・インターフェイス(FSI)により、最大200Mbpsまでの通信、および絶縁バリアをまたいだ低コストの経路が実現できます。

一般的なFPGA/CPLD機能は、『F2838x』の複数の機能により実現され、構成可能ロジック・ブロック(CLB)により、以下が可能です。

  • 絶対エンコーダ・インターフェイスの作成
  • 専用パルス・トレイン・ロジック
  • カスタマイズされたタイマ、シリアル・インターフェイス、およびインバータ保護方式

高速電流ループ(FCL)テクノロジーにより、重要なサーボ・ドライブのフィールド・オリエンテッド制御ループを500ns未満で処理できます。また、一般的な絶縁型デルタ・シグマ・コンバータへのインターフェイスが可能なシグマ・デルタ・フィルタ・モジュール、追加されたクラス最高の高分解能PWM(最大32 ePWMチャネルまで)、そしてインバータ保護と柔軟なタイマ同期用の高度なコンパレータ・サブシステムを内蔵しています。

高性能のループ制御が以下により可能になっています。

  • 重要なarctan、sin、cos関数を高速化する三角関数算術演算ユニット(TMU)で強化されたクラス最高のC28xTM DSPコア
  • 計算効率を高める新しい高速整数除算ハードウェア
  • サーボ・モーション制御での64ビット拡張精度浮動小数点ユニット

制御補償器アクセラレータ(CLA)により、新たなパラレル制御や信号処理に対応しています。利用可能なチャネル数を2倍にする新しいシングル・エンド・モードでは、後処理ハードウェアを備えた独立4系統の16ビット精度アナログ/デジタル・コンバータが使用されます。ホストと通信タスクの負荷をコネクティビティ・マネージャに移管することで、リアルタイム制御ためのサイクルに専念することができます。

量産時には、表1の通り、F2838xシリーズは6種類の構成で提供予定です。全デバイスに標準でコネクティビティ・マネージャとEthernetが内蔵されます。オプションには、シングル(1.0MBフラッシュ)またはデュアル(1.5MBフラッシュ)C28x+制御補償器アクセラレータ(CLA)サブシステム、構成可能なロジック・ブロックへのアクセス、およびEtherCAT機能が含まれます。『F2838x』は、16mmx16mm、337ボールのファイン・ピッチ・ボール・グリッド・アレイパッケージで供給され、接合部温度定格は-40℃~125℃です。

表1:F2838xの各種構成

F2838x MCU

Connectivity
manager

C28x CPUs/million instructions per second (MIPS)

Control law accelerator coprocessors/MIPS

Flash memory

Ethernet

EtherCAT

Configurable logic block

『TMS320F28388D』

1/125 MIPS

2 400 MIPS

2/400 MIPS

1.5 MB

Yes

Yes

Yes

『TMS320F28388S』

1/125 MIPS

1/200 MIPS

1/200 MIPS

1.0 MB

Yes

Yes

Yes

『TMS320F28386D』

1/125 MIPS

2/400 MIPS

2/400 MIPS

1.5 MB

Yes

Yes

『TMS320F28386S』

1/125 MIPS

1/200 MIPS

1/200 MIPS

1.0 MB

Yes

Yes

『TMS320F28384D』

1/125 MIPS

2/400 MIPS

2/400 MIPS

1.5 MB

Yes

『TMS320F28384S』

1/125 MIPS

1/200 MIPS

1/200 MIPS

1.0 MB

Yes

制御や柔軟性、性能は、モーター・ドライブ、ファクトリ・オートメーション、大電力グリッド・アプリケーションにおける三つの大きな問題であることは明らかです。シングル・チップにコネクティビティを統合すれば、ビジネスを未来につなげ、将来に向けたシステム・レベルの柔軟性を確保できる、リアルタイム制御のコネクテッド・マイコンが手に入ります。

参考情報

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年6月19日)より翻訳転載されました。
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