2011年以来、TIのPower Stage DesignerTMは、異なる電源トポロジの電流と電圧を計算する際にとても役立つデザイン・ツールとして、多くの電気技師の間で使用されてきました。全ての計算がリアルタイムで実行され、直接フィードバックを得られることから、新しい電源デザインを容易に開始することができます。バージョン3.0から4.0に進化したことで、これまで以上に迅速に電源を設計できる全く新しい機能と3つのトポロジが追加され、これらの機能がツールボックスとして提供されます。

この新しいツールボックスには、FET(電界効果トランジスタ)損失計算機、並列コンデンサ向け電流共有計算機、AC/DCバルク・コンデンサ計算機、整流器全般の共鳴を減衰させるRC(抵抗・コンデンサ)スナバ計算機、フライバック・コンバータ向けRCD(抵抗・コンデンサ・ダイオード)スナバ計算機、出力電圧抵抗分配計算機、動的アナログおよびデジタル出力電圧スケーリング計算機、ユニット・コンバータ、ループ補償向けBodeプロッティング・ツールが含まれます。これらの10の新しい機能について詳しく見ていきましょう。

1)FET損失計算機
このツールを使用することで、メイン・スイッチまたは同期整流器として機能している、異なるFETを容易に比較できます。選択されたトポロジ・ウィンドウから、最小、最大およびRMS(二乗平均平方根)電流値、FETドレインソース電圧、スイッチング周波数が転送されます。また、メイン・スイッチと同期整流器に最適なMOSFETを選択した後、同期コンバータのMOSFET(モス電界効果トランジスタ)損失合計を算出することもできます。

図1:FET損失計算機ウィンドウ

2)電流共有計算機
電力コンバータの入力または出力時に異なるコンデンサを並列使用する場合、そのコンデンサに流れるRMS電流の量は電気抵抗に応じて変わってきます。Power Stage Designerにより、最初の高調波インピーダンス・モデルに基づき、最大3つの並列コンデンサの電流ストレスを予測できます。

3AC/DCバルク・コンデンサ計算機
AC/DCコンバータは従来、入力整流器の背後にバルク・コンデンサを備えることで、電力段と電力管理コントローラに準定入力電圧を提供します。Power Stage Designerは、異なる入力パラメータに基づいたバルク・コンデンサを提案してくれます。

4整流器向けRCスナバ計算機
電源回路の設計において、整流器の共鳴はEMIテストに合格する上で大きな問題です。対処方法はいくつかありますが、プリント基板(PCB)レイアウトを再設計する必要のないRCスナバ回路は容易な解決策の一つです。Power Stage Designerを使用することで、RCスナバ回路の開始値を容易に算出することができます。

5フライバック・コンバータ向けCDスナバ計算機
トランス漏れインダクタンスのような寄生により、フライバック・コンバータでは、スイッチング・ノードで電圧オーバシュートと共鳴が起こる可能性があります。この共鳴を削減し、オーバシュートを減衰する最も簡単な方法は、フライバック・コンバータの第1インダクタンスと並列にRCDスナバ回路を実装することです。Power Stage Designerを使用することで、スナバ抵抗およびコンデンサの開始値を容易に算出することができます。

6出力電圧抵抗分配計算機
Power Stage Designerを使用することで、出力電圧、参照電圧、許容値を含むハイ/ローサイド抵抗に基づいた、自社の電源向けの出力電圧フィードバック分配を容易に算出できます。

7動的アナログ出力電圧スケーリング計算機
アプリケーションの中には、電源コンバータの出力電圧を、特定の出力電圧範囲に調整する必要があるものがあります。これは、3番目の抵抗を使用して、この出力電圧抵抗分配に可変アナログ出力電圧を供給することで実現できます。Power Stage Designerを使用することで、選択された出力電圧範囲、最大調整電圧、参照電圧、最大フィードバック抵抗に基づき、この抵抗に最適な値を導き出すことができます。

8動的デジタル出力電圧スケーリング計算機
また、ローサイド・フィードバック抵抗を使用して、複数の抵抗/信号MOSFETを並列使用することで、自社の電源の出力電圧を調整することもできます。マイコンで複数のMOSFETのオンとオフができることから、電源に最適化するようにプログラムされたかのように、様々な出力電圧を得ることができます。Power Stage Designerにより、このフィードバック回路の抵抗値を容易に算出することができます。

9ユニット・コンバータ
Power Stage Designerは、ゲイン係数や国際単位系への換算など、様々な電源パラメータの変換を支援します。

10ループ計算機
このループ計算機は、バック、ブースト、反転バック・ブースト、フォーワードおよびフライバックの5つの異なる電流モード制御(CMC)トポロジと電圧モード制御(VMC)バック向けに、開および閉ループ転送機能のBodeプロットを表示します。5つの補償回路を使用して、このループを閉じることができます。

図2:Power Stage Designerのループ計算機ウィンドウ

この新しいツールボックスに関連する方程式と仮説については、『Power Stage Designer User’s Guide』を参照ください。

また、Power Stage Designer 4.0では、全部で20のトポロジをサポートします。バージョン4.0でサポートされる新しい3つのトポロジには以下が含まれます。

  • 一連のコンデンサ・バック・コンバータ
  • 準共鳴/周波数モジュレート型フライバック・コンバータ
  • LLCハーフブリッジ・コンバータ

図3:LLCハーフブリッジ・コンバータのトポロジ・ウィンドウ

ぜひPower Stage Designer 4.0を入手して、電源設計の負担を少しでも軽減してください。

参考情報

ブログ記事(英語)

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年2月5日)より翻訳転載されました。

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