低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)は、あらゆる種類のアプリケーションで電源として使用されます。ただし、LDOが正常に動作するためには、出力コンデンサが必要です。アプリケーション用にLDOを設計する際の一般的な問題の1つが、正しい出力コンデンサを選択することです。この記事では、出力コンデンサを選択する際のさまざまな考慮事項と、それがLDOに対してどのように影響するかについて検討します。

コンデンサとは何か

コンデンサは、電荷を保持するために使用される素子であり、絶縁体によって隔てられた1つまたは複数の導体ペアから構成されます。最も一般的なコンデンサは、アルミニウム、タンタル、またはセラミック製です。表1に示すように、これらの各材料には、システムで使用された場合、それぞれ長所と短所があります。一般的には、容量の変動が最小限で、コストも低いことから、セラミック・コンデンサを推奨します。

コンデンサの材料 長所 短所
アルミニウム ・ローパス・フィルタとして最も一般的に使用。
・大容量が得られる。
・分極が起こる。
・サイズが大きい。
・等価直列抵抗(ESR)が大きい。
・過熱する場合がある。
・寿命が限られている。
・リーク電流が大きい。
タンタル ・占有面積が小さい。
・寿命が長い。
・リーク電流が小さい。
・分極が起こる。
セラミック ・分極が起こらない。
・サイズが非常に小さい。
・ERR値が最小。
・コストが低い。
・公差が小さい。
・熱的に安定。
・大容量の選択肢が限られている。
・DCバイアスによるディレーティング。

1:コンデンサ材料の長所と短所

容量とは何か

コンデンサは電荷を保持する素子ですが、コンデンサの容量は電荷を保持できる能力を表します。理想的な世界であれば、コンデンサに記載されている値がその容量とまったく同じになるでしょう。しかし、実際の世界では、コンデンサの容量を額面どおり受け取るわけにはいきません。後でわかるように、コンデンサの容量はその定格値のわずか10%の場合もあります。これは、DC電圧のバイアスによるディレーティング、温度変化によるディレーティング、メーカーの公差などが原因です。

DC電圧ディレーティング

コンデンサの動的な性質(電荷を非線形的に蓄積および放出する)によって、外部から電界を印加しなくても分極が起こる場合があり、これは「自発分極」と呼ばれます。自発分極は、材料の持つ不活性電界に起因するもので、これによりコンデンサに初期容量が与えられます。コンデンサに外部からDC電圧を印加すると、電界が生じて初期極性を反転させて「ロック」、または残りのActive Dipoleをその位置に分極します。この分極は、誘電体内の電界の方向に固定されます。

図1に示すように、ロックされた双極子はAC過渡電圧に反応しないため、実効容量はDC電圧を印加する前よりも低くなります。

 1DC電圧ディレーティング

図2に、コンデンサに電圧を印加したときの影響と、結果の容量を示します。ケース・サイズが大きいほど、失われる容量が小さいことに注意してください。これは、ケース・サイズが大きいと導体間の誘電体の量が多いため、電界の強度が弱まり、ロックされる双極子が少なくなるからです。

 2:容量とDCバイアスおよびコンデンサ・サイズの関係

温度ディレーティング

他のすべての電子部品と同様に、コンデンサにもその性能が規定される温度定格があります。この温度ディレーティングは一般に、コンデンサの数値の下に記載されている場合があります。表2に、コンデンサの温度係数定格の読み取り方を示します。

2:セラミック・コンデンサのコード表

LDO接合部温度の大半は、通常、-40℃~125℃の範囲で規定されます。この温度範囲に基づくと、X5RまたはX7Rのコンデンサが最良です。

図3に示すように、温度だけによる容量への影響は、最大90%も容量値を低下させるDCバイアス・ディレーティングと比較すると、ずっと小さくなります。

 3:容量と温度および温度係数の関係

メーカー公差

実際のコンデンサは特性が理想的でないため、容量値自体がコンデンサの材料やサイズに基づいて変化する場合があります。コンデンサや他の受動電子部品を製造する企業は、自社の部品で許容できる容量値の一般的な標準を定めています。この記事では、容量を計算する際のメーカー公差として±20%を使用します。

実際のアプリケーション

一般的なLDOアプリケーションの1つとして、バッテリからの3.6Vの入力電圧をマイコンへの電源供給用に降圧(1.8V)する場合を考えます。この例では、0603パッケージに実装された10µFのX7Rセラミック・コンデンサを使用します。0603パッケージとは、コンデンサの寸法を表し、0.06インチ×0.03インチです。

このアプリケーションに対して、このコンデンサの真の容量値を求めてみましょう。

  • DCバイアス・ディレーティング:コンデンサのDCバイアス特性に関してメーカーが提供しているグラフを使用し(図2)、容量値が7µFとなることがわかります。
  • 温度ディレーティング:このコンデンサを周囲温度125℃で使用する場合、容量はさらに15%低下し、値は5.5µFとなります。
  • メーカー公差:±20%のメーカー公差を考慮に入れ、容量の最終的な値は3.5µFとなります。

このように、10µFのコンデンサをこれらの条件に置いたときの真の容量値は3.5µFです。容量値は公称値の約65%まで低下しています。もちろん、これらの条件が必ずしもすべて当てはまるわけではありませんが、アプリケーションでコンデンサが取りうる容量値の範囲を知っておくことは重要です。

まとめ

LDOやコンデンサは一見単純に見えますが、LDOの正常な動作に必要な実効容量は他のさまざまな要因によって決定されます。

その他のリソース

 上記の記事は下記URLより翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2018/08/01/ldo-basics-capacitor-vs-capacitance

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