LDOの基本:熱 – 自分のアプリケーションはどれくらい熱いのか?


低ドロップアウト(LDO)レギュレータの本質的な機能は、過剰な電力を熱に変換して電圧のレギュレーションを行うことです。そのような性質から、この集積回路は、低消費電力アプリケーションやVINからVOUTへの差動電圧が小さいアプリケーションに最適なソリューションとなっています。アプリケーションの性能を最大限に高めるためには、この点を考慮しつつ、適切なLDOを適切なパッケージと共に選択することが極めて重要です。使用可能な最小のパッケージが常に目的のアプリケーションに最適とは限らないため、設計者によっては、この選択こそが悩みの種となる場合もあります。

LDOを選択する際に考慮すべき最も重要な特性の1つが、熱抵抗(RθJA)です。この特性は、特定のパッケージ内での放熱に関するLDOの効率性を表しています。高いRθJA値はパッケージの熱伝達の効率性があまり高くないことを示しており、反対に、低い値はデバイスがより効率的に熱を伝達していることを示しています。

RθJAは、一般に小型のパッケージほど高くなります。たとえば、TPS 732の熱抵抗値はパッケージに応じて異なり、外形の小さなトランジスタ型のSOT-23(2.9mm×1.6mm)パッケージの熱抵抗は205.9℃/Wであるのに対して、SOT-223(6.5mm×3.5mm)パッケージの熱抵抗は53.1℃/Wです。つまりTPS 732では、消費電力1Wあたり205.9℃または53.1℃の温度上昇が発生することになります。これらの値は、表1に示す、デバイスのデータシート上の「熱に関する情報」で確認できます。

  表1:パッケージ別の熱抵抗

適切なパッケージを使用しているか?

LDOの推奨される動作時接合部温度は-40℃~125℃であり、これらの値も、表2に示すようにそれぞれのデータシートで確認できます。

  表2:推奨される動作温度

これらの推奨温度の意味するところは、その温度であれば、デバイスがデータシートの電気的特性表に明記されているとおりに動作するということです。次の式1を使えば、どのパッケージが適切な温度で動作するのかを判定できます。

  

式1:接合部温度の式

ここで、TJは接合部温度、

TAは周囲温度、

RθJAは熱抵抗(データシートに記載されている値)、

PDは消費電力、

Igroundはグランド電流(データシートに記載されている値)です。

以下は、TPS 732を使用して5.5Vを3Vまでレギュレーションし、250mAを供給し、SOT-23とSOT-223の両方のパッケージを使用した簡単な例です。

 サーマル・シャットダウン

接合部温度が154.72℃のデバイスは、推奨される温度仕様を上回っているだけでなく、サーマル・シャットダウン温度にかなり接近した状態でもあります。標準的なシャットダウン温度は160℃です。つまり、デバイスの接合部温度が160℃を上回ると、デバイス内部の熱保護回路が作動します。この熱保護回路によって出力回路がディスエーブルになるので、デバイスの冷却と、過熱による損傷からの保護が行えるようになります。デバイスの接合部温度が140℃程度まで下がると、熱保護回路がディスエーブルになり、出力回路が再度イネーブルになります。周囲温度と消費電力、またはそのいずれかを下げないと、デバイスは熱保護回路の影響でオン/オフを繰り返す状態になる可能性があります。周囲温度と消費電力、またはそのいずれかを下げることができない場合、適切な性能を確保するためには設計に変更を加えることが必要になります。

1つの明らかな設計解として、推奨温度で動作する、より大きなパッケージを使用するという方法があります。

ここからは、発熱を最小限に抑えるためのヒントとコツをいくつか紹介します。

グランド、VINVOUTのコンタクト・プレーンの拡大

電力が消費されるとき、熱はサーマル・パッドを通ってLDOから放出されるので、プリント基板(PCB)上の入力、出力、グランドの各プレーンのサイズを拡大すると、熱抵抗が低下します。以下の図1に示すように、グランド・プレーンは一般にできる限り大きく設計され、他の回路のパターンに占有されていないPCB領域のほとんどを覆っています。このようなサイズ設定のガイドラインは、多数の部品からのリターン電流に対処するためのもので、それらの部品を同じ基準電位に保つことを目的としています。コンタクト・プレーンをこのように設計することで、最終的には、システムに悪影響を及ぼす可能性のある電圧降下を防ぐことができます。また、大型のプレーンには、ヒートシンク性能を向上させてパターン抵抗を最小限に抑える効果もあります。銅パターンのサイズ拡大とサーマル・インターフェイスの改善により、伝導冷却の効率性が大幅に向上します。

図1:SOT-23パッケージのPCBレイアウト

多層PCBを設計する際、通常は、個別の層を使用してグランド・プレーンで基板全体を覆う方法が有効です。これにより、パターンを追加することなく任意の部品をグランドに接続できます。部品のリードは基板の穴を通してグランド・プレーンを含む層に直接接続されます。

ヒートシンクの実装

ヒートシンクを使用すると、RθJAは低下しますが、システムのサイズとコストが増大します。ヒートシンクを選択する際、ベース・プレートのサイズは取り付け先のデバイスとほぼ同じにする必要があります。そうすることで、ヒートシンク表面に熱が均等に分散するようになります。ヒートシンクのサイズと取り付け先の面のサイズに差があると、熱抵抗は高くなります。

SC-70(2mm×1.25mm)やSOT-23(2.9mm×1.6mm)などのパッケージは、その物理的なサイズが原因で、ヒートシンクと共に使用されることがめったにありません。一方、TO-220(10.16mm×8.7mm)やTO-263(10.16mm×9.85mm)などのパッケージはヒートシンクと組み合わせて使用できます。以下の図2は、4つのパッケージの違いを表しています。

図2:パッケージの違い

入力電圧と直列に抵抗を配置すれば、消費電力の一部を共有できます。以下の図3に、その例を示します。この手法の目的は、抵抗を使用して入力電圧を可能な最小値まで低下させることです。

図3:直列構成の抵抗

適切なレギュレーションを行うためにはLDOを飽和領域に留める必要があるので、目的の出力電圧とドロップアウト電圧を加算すれば、最小入力電圧が得られます。次の式2は、これら2つのLDO特性の設定を表しています。

 式2:最大抵抗の式

TPS 732の例(250mAを使用した5.5Vから3Vへのレギュレーション)の条件を使用した場合、以下の式3を使って抵抗の最大値とその抵抗が消費できる最大電力を計算できます。

 

式3:最大消費電力の式

抵抗を選択する際は、その「定格消費電力」を上回らないことを確認してください。この定格は、抵抗が損傷することなく熱に変換できるワット数を示しています。

つまり、VIN = 5.5V、

VOUT = 3V、

VDROPOUT = 0.15V(データシートに記載されているデータ)、

IOUT = 250mA、

IGROUND = 0.95mA(データシートに記載されている値)である場合、次のようになります。

  

配置

PCB上の他の発熱デバイスがLDOのすぐ近くにある場合は、LDOの温度に影響する可能性があります。温度上昇を防ぐため、LDOをそれらの発熱デバイスからできる限り離して配置してください。

まとめ

効率的でサイズを重視した、低コストの熱ソリューションをアプリケーションに適用する方法には、さまざまなものがあります。鍵となるのは、あらゆる選択肢を試せるように、早い段階で設計を検討することです。熱に関する検討事項に配慮しながら適切な部品を選択するのは容易ではありませんが、適切なデバイスと手法が揃えば、設計プロセスをスムーズに成功に導くことができます。

その他のリソース

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/09/20/ldo-basics-thermals-how-hot-is-your-application

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