インダストリー4.0が起こした革命により、さまざまな機械からデータを取得して分析することが可能になりました。そのおかげで、高速で自由度と信頼性が高く、より効率的な工程により、高品質の製品を低コストで生産できるようになりました。ただし、システム・レベルでは、DC/DC降圧レギュレータを使った電源設計について、インダストリー4.0による課題も生まれています。このような課題として挙げられるのは、信頼性の向上、放熱を最小限に抑えるための高負荷効率の向上、出力コンデンサを小型化するための過渡応答の高速化の必要性などです。この記事では、これらの課題を解決するヒントを紹介します。

1. 広い入力電圧範囲と高電流を考慮する

図1は、24VDC補助電源から電力供給されるサーボ・ドライブ出力段の電源アーキテクチャの簡易図です。24Vは、絶縁型電源を使ってDCバス電圧でも生成できます。1段目は、フィールド入力保護回路、2段目は、非絶縁型DC/DCフィールド電源です。

1:サーボ・ドライブのモジュール電源アーキテクチャ

通常、電源は36Vか最大60Vにまでなる運用に対応する必要があります。また、産業界の電源ソリューションの設計ではよくあるように、長いケーブルやホットプラグ、リンギングで生じる予期しない電力サージに対する保護として、高電流(1A超)定格のDC/DCコンバータが必要です。このようなことから、サーボ・ドライブやACドライブのような産業アプリケーション向けの電源を設計するときは、入力電圧範囲の広い降圧コンバータを選ぶようにしてください。

『LMR36520』は、最大70Vの過渡耐性があるため、過電圧からの保護に有効で、IEC(国際電気標準会議)61000-4-5のサージ耐性要件を満たすことができます。36VINでも目的のアプリケーションには十分である場合は、必要な負荷条件に基づいてコンバータを選んでください。『LMR33610』『LMR33620』『LMR33630』、および『LMR33640』では、レイアウトのほとんどの部分を再利用できるので、システム・レベルの回路図やレイアウト設計が大幅に簡素化され、研究開発にかかる労力が軽減されます。

2. 過渡応答が高速なデバイスを選択する

ACドライブは、その耐久性の高さから、加工工場で使われる誘導モーターの制御に使われることがあります。それに加え、ACドライブは、高度なマイコン制御の電子デバイスにより出力電圧と周波数を変化させることで、ACモーターの速さを制御します。図2は、ACドライブ・システムのセーフティ・マイコンの電源設計です。このセーフティ電源(3.3V)は、セーフティ・マイコンやそれ以外の負荷の電源として設計されています。この電源は、ACドライブのほかにサーボ・ドライブにも利用できます。

2:サーボ・ドライブ・システムの電源設計

マイコンの絶対最大定格電圧よりも電源電圧が高い場合は、高い電源電圧がマイコンの通常動作に影響するだけでなく、マイコンが破壊されるおそれもあります。逆に電圧が低すぎると、マイコンのリセット回路や周辺回路(汎用入出力GPIOなど)の駆動能力にマイナスに働き、正常に動作しなくなるかもしれません。そのため、マイコンやその他の動的負荷に対して電源を使用するときは、過渡性能が高速なデバイスを選ぶ必要があります。そのようなデバイスは、負荷過渡時の出力側のオーバーシュート/アンダーシュート電圧が低くなるため、マイコンの動作に影響を与えません。高速な過渡性能は、負荷レギュレータの二次ポイントとマイコンにかかる負担を軽減するため、システムの堅牢性が向上し、場合によってはクランプ・ダイオードなどの保護デバイスが不要になります。

図3に、『LMR36520』の負荷過渡およびスイッチング波形を示します。1A/µsのスルー・レートで1Aから2Aに負荷が増えたときのオーバーシュートとアンダーシュートがわずか100mVです。

3LMR36520の負荷過渡

3. グランド保護も忘れずに

電源には、出力の対グランド短絡の保護も必要になります。図2の電源の出力は、バッファと通信インターフェイスも駆動します。実際の工場の現場では、ある部品を交換するときにオペレータが電源をオフにし忘れることがあるかもしれません。そのような場合、電源の出力(マイコンに応じて3.3Vまたは5V)がグランドに短絡してしまう可能性があります。3.3Vまたは5Vの負荷がグランドに短絡して電流が流れた場合に、3.3Vまたは5Vの電圧レールでオーバーシュートが起きて、通常は絶対最大動作入力電圧が6Vのマイコンが破壊されるおそれがあるのは望ましくありません。オーバーシュートを防止するには、適切に設計されたヒカップ保護機能を備えた降圧コンバータを選んでください。図4に示すように、『LMR36520』は、出力の対グランド短絡に対するリカバリ保護が優れています。

 

4LMR36520での対グランド短絡の波形

まとめ

サーボ・ドライブやACドライブの電源を設計するときは、設計への潜在的影響を十分に検討する必要があります。入力電圧範囲の広さ、出力電流の高さ、高速な過渡性能、良好な対グランド短絡保護が、開発時に考慮すべき重要な要素です。

参考情報

+技術記事(英語)“The buck regulator efficiency/size tradeoff dilemma.”

+Analog Design Journal(英語)“Low-IQ synchronous buck converter enables intelligent field sensor applications.”

 

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※上記の記事はこちらの技術記事(2019年11月20日)より翻訳転載されました。
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