高電圧に曝されるアプリケーションを扱う産業用システムの設計者は、最終兵器に対して適切な絶縁機能を確保し、システム・レベルで複数のIEC規格に適合させることが必要です。これらの安全規格、可変速ドライブが対象のIEC 61800-5-1等は、その機器が寿命となるまでの期間にわたって印加される一定の高電圧、偶発的な過電圧過渡波形や究極の高電圧ピーク・サージに対する絶縁性について、どのように確保すべきかを規定しています。強化絶縁は、産業用オートメーション、モーター・ドライブ、ヒューマン・マシン・インターフェイスや医療用エレクトロニクスなどのアプリケーションで、危険な高電圧に対する究極の保護機能を提供します。強化絶縁は、1つのデバイスで、お客様のシステムに2倍の絶縁保護性能を提供する機能として考えることができます。次に、単一絶縁による二重絶縁を超える絶縁性能を提供する方法を説明します。

人体と危険な電圧源との間の絶縁に関する安全規格は、メインとなる「ベーシック」な絶縁バリアと、その絶縁障壁が破れた時にもユーザと部品の間に十分な絶縁を確保するための追加の(補助的な)絶縁障壁を独立して設置することを規定しています。これを二重絶縁と呼びます。

強化絶縁は二重絶縁と同等レベルの高電圧保護機能を提供しますが、上記のような“ベーシック”な絶縁バリアと追補的な絶縁バリアの複数の絶縁は使用されません。ICの内部に絶縁部を持つ高集積度の絶縁システムでは、より優れた絶縁特性を備えた材料(例えば二酸化シリコン、SiO2)を使用することで、二重絶縁と同等、またはより高いレベルの保護機能を提供します。これらのような集積型のアイソレータ製品を、パッケージの外側から基本的な絶縁障壁と補助的な絶縁障壁として区別や試験を行うことは現実的ではないことから、VDE-0884-10や、後続のIEC 60747-17などの規格は、アイソレータ部品を強化絶縁として適合、認定するための最小限の要件を規定しています。

VDE-0884-10 Ed.2と、後続のIEC 60747-17 は、静電容量結合や電磁結合のアイソレータ製品の性能、試験、認定に関する要件を定めています。強化絶縁アイソレータ製品の重要な絶縁要件としては、10kVPEAKを超える電圧サージへの許容性と、定格動作電圧において、40年間に渡る連続使用時の寿命で1ppm(百万分の1)未満の故障レベルの確保などがあります。最新の静電容量結合や電磁結合のアイソレータ製品に対する安全規格では、絶縁品質を確保するために、製造ラインでの100パーセント全デバイスのフル加速寿命と高電圧保護を組み合わせた試験を要求しています。規格に定められた高電圧に対する要件のほかに、全ての製造ロットに対して加速絶縁バリア・ストレス試験を実施することで、強化絶縁に対するより高い信頼性を確保しています。

安全規格に定められたサージ、寿命や動作電圧レベルを超えるマージンは、安全アプリケーションに大きな利点となります。例えば一つの絶縁障壁が12kVPEAKの高電圧サージ耐性能力を持っている場合、少なくとも2kVのマージンを提供します。同様に、一定の動作電圧の任意のアプリケーションにおいて、定格動作電圧が1500VRMSのアイソレータは、650VRMSの定格動作電圧のアイソレータと比較して、10倍以上長い実動作寿命を提供します。

固有の絶縁強度が高いにもかかわらず、システムで使用可能な最大許容システム電圧レールを決定するのは一般にデジタル・アイソレータの沿面距離や端子間距離であることから、高電圧保護性能はパッケージの外形寸法によって制限されます。しかし、大きな沿面距離や端子間距離を備えた新型パッケージは、強化絶縁向け部品の既存の安全規格に定義される絶縁レベルの要件をはるかに超えた高電圧絶縁性能を提供します。モーター制御や医療用機器などのアプリケーションでは、これらのマージンは、より高い信頼性レベルと、非常に高い堅牢性能に直結し、システム設計者に、選択した絶縁部品が最終機器を十分にサポートするとともに、システムが、その寿命期間全体に渡って安全レベルの信頼性要件に適合する、という大きな安心感を与えます。

 

参考情報:

•ブログ記事「強化絶縁を使って機器を保護」(英語)

•ブログ記事「高速通信で機器を保護するための絶縁の重要性」(英語)

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/analogwire/archive/2014/10/17/reinforced-isolation-when-1-is-greater-than-2?HQS=hpa-pa-dsig-amc1301-pr-blog-launch-wwe

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