技術者は多くの経験則を駆使して、設計プロセスの簡素化を試みます。私の最も好きな経験則は、A/D コンバータの入力を低インピーダンスの信号源で駆動することです。その理由は、高精度データ・アクイジション・ブロックに多くの利点を提供するからです。

本稿では A/D コンバータの入力範囲に合わせるために、高電圧の信号源のレベル変換が必要な、代表的なアプリケーションを検討します。図 1 の簡単な分圧回路は、±5V の信号を 0.5V に変換することで、レベル変換の問題を解決します。この分圧回路の等価インピーダンス Req は R1 と R2 の並列抵抗によって得られます。

この有限の信号源インピーダンスは、データ・アクイジション・システムに、どのような影響を与えるでしょうか。

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高い信号源インピーダンスは、データ・アクイジション動作中に、直線性誤差と非直線性誤差の両方を発生します。SNR や THD の悪化を招く大きな誤差要因には、以下があります。

  • ゲイン誤差:A/D コンバータの入力における信号源インピーダンスは、A/D コンバータの入力インピーダンスと組み合わされて分圧回路を形成します。この信号源インピーダンスによる入力電圧の降下は測定値にゲイン誤差を発生します。信号源インピーダンスを低く保つことは、この全体的な誤差を小さくするために役立ちます。
  • セトリングタイム誤差:高精度の変換を実現するため、A/D コンバータの入力は、そのデータ・コンバータで利用可能なアクイジションタイム内でセトリングすることが必要です。このアクイジションタイム内に、A/D コンバータに内蔵されたサンプリング・コンデンサの充電を完了する必要があります。A/D コンバータの入力の信号源インピーダンスと入力コンデンサは、追加の時定数を形成します。このローパス・フィルタによるセトリング誤差によって、サンプルされた信号に誤差を生じます。
  • 歪み:上で述べた、信号源インピーダンスと入力コンデンサで形成されるローパス・フィルタは、変換動作中に、信号に依存した歪みも発生します。この歪みはコンデンサに印加される電圧によって変化する、コンデンサ固有の非直線性によるものです。入力信号のサンプリングに使われる入力電流は、信号源インピーダンスに誤差電圧を発生します。サイン波の入力信号の場合、この誤差は高調波を含み、システムの歪み特性を悪化させます。

高精度データ・アクイジション・システムで A/D コンバータの入力を駆動する場合、信号源インピーダンスの影響は無視できません。私は、このA/D コンバータの入力の際は、必ず低インピーダンスの信号源で駆動すべきだ」という経験則が役立つことを望んでいます。

A/D コンバータの入力を駆動する上でのその他の推奨事項については、使用する A/D コンバータに最高の性能を発揮させる手法を提供する TI Precision Design低歪みや最小のノイズに対して最適化された 18 ビット、1MSPS のデータ・アクイジションのリファレンス・デザインをご覧ください。本稿では、私の最も好きな経験則について説明しました。読者の皆さんにも A/D コンバータを駆動する場合の経験則があれば、ぜひ教えてください。

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/precisionhub/archive/2013/09/19/first-rule-of-thumb-when-driving-adc-inputs

 

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