A/D コンバータのノイズについて、アナログの観点から検討したいと思います。通常、こうしたノイズはデジタルの観点から説明されるため、読者の方々は、アナログの観点から見ることについて違和感があると思います。私はお詫びしなければならないかもしれません。しかし、アナログの観点から検討すると、非常に明解な結果を得ることができます。

図1の ADS 1220 などのデルタ-シグマ型A/Dコンバータは、データ・コンバータで発生するノイズについて詳細な情報を提供します。ここでノイズ en の単位は実効値マイクロボルト(μVrms)と、ピークツーピーク・マイクロボルト(µVp-p)です。

1: ADS 1220 高精度A/Dコンバータを使った抵抗ブリッジ計測回路

図 2 に示すように、オペアンプの場合と同様にノイズは入力換算値として表すことができます。オペアンプの場合、ノイズ en の単位はナノボルト/√Hz (nV/√Hz)です。規定の帯域幅では、en の単位はμVrmsとなります。オペアンプのノイズは µVp-p という単位でも表されます。

2:クローズド・ループ・ゲインが -200V/V のオペアンプ回路

次に、デルタ-シグマ型 A/D コンバータとオペアンプの出力換算ノイズについて検討します。いずれもクローズドループ・システムであり、A/D コンバータは内蔵のデジタル・フィルタで信号を処理します。オペアンプには外付けの抵抗回路が接続されています。両方ともに、デバイスはノイズ信号を出力端子に出力します。A/D コンバータの出力端子は DOUT です。アンプでは VOUT であり、出力端子には総合ノイズが出力されます。

デルタ-シグマ型 A/D コンバータの出力ノイズの代表的な仕様は、有効ビット数(ENOB)とノイズフリー・ビット数(NFb)です。式 1 と式 2 は、これらの仕様を定義する一般的な式です。

ENOB = log[(2*VREF/GAIN)/( en_uVrms)] / log 2                   (式1)

NFb = log[(2*VREF/GAIN)/(en_uVp-p)] / log 2                        (式2)

ここで VREF はデータ・コンバータに入力されるリファレンス電圧、GAIN は、このデータ・コンバータに内蔵されたプログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)のゲインです。

A/D コンバータを比較する場合、これらの仕様は非常に重要ですが、設計するセンサ・システムの再現性を決定する場合には、ノイズ仕様の裏側にある実力を検討することが必要です。

図 1 では、ロードセルの感度は 2 m/V であり、最大容量(FSg)は 100 kgです。このシステムでは、グラム単位の再現性 REPg、つまり測定可能な最小値は、式3で表されます。

REPg = en:p-p * FSg / (AVDD * Sensitivity)                 (式3)

ここで AVDD はブリッジと ADS 1220 の正アナログ電源に供給される電圧です。

この A/D コンバータでは、データレート(DR)は 20SPS、PGA のゲインは 64 倍、ノーマル・モードでは FSg は 100,000g、ADS 1220 の μVPP ノイズは 0.35µV です。各設定のノイズ値を表 1 に示します。

REPg = FSg (1 - en:p-p / (AVDD * sensitivity))

REPg = 0.35 µV * 100 kg / (5 V * 2 mV/V)

REPg = 0.7 gm 

1: ノーマル・モードの ADS 1220 µVRMS µVPP)ノイズ

アナログの観点からの検討は、最も意外な所で役に立ちます。ロードセルとデルタ-シグマ型 A/D コンバータにより、アナログの領域に創造力を広げ、システムの向上のためその仕様を活用してください。

その他の参考資料:

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/analogwire/archive/2015/03/13/on-board-with-bonnie-adc-noise-from-the-inside-out

 

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