デルタ・シグマ(ΔΣ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)に関するブログ・シリーズの最初の2回では、デルタ・シグマADCで使用される2つの基本ビルディング・ブロック、すなわち変調器とデジタル・フィルタについて解説しました。しかし、デルタ・シグマADCには、それ以外にも多くのICが使用されています。機能ブロックと並んで、その個々のブロックにはさまざまなタイプが使用されていることから、多数のデルタ・シグマADCがアプリケーションに応じてカスタマイズされています。

本稿ではこうした機能の多くについて簡単に取り上げるとともに、個々のアプリケーションでどのような役割を果たしているかを説明します。各タイプのデルタ・シグマADCを取り上げ、そのブロック図について解説します。まず、部品点数の少ない回路図を見ていきます。

ADS 1252

図1はADS 1252デルタ・シグマADCのブロック図です。変調器とデジタル・フィルタが必須の部品です。それ以外のブロックについて見てみます。

 図1:ADS 1252デルタ・シグマADCのブロック図

インターフェイスと制御ロジック

インターフェイスと制御ロジック・ブロックはすべてのデルタ・シグマADCに共通して存在しており、必須のブロックです。ADS 1252の場合、シンプルな2ピン・インターフェイス(SCLKとDOUT/DRDY)が変換結果を出力します。この基本インターフェイスが、ADS 1252の迅速な立ち上げと各種センサからのデータ伝送を可能にしています。他方、ロジック制御ブロックは複数のデバイスと変換の同期化を行い、データ変換が完了した時点で通知し、ADCが使用されていない時には電源を停止します。ADS 1252はプロセス制御アプリケーションや熱電対測定などに使用されており、高度な機能が不要でシンプルなデルタ・シグマADCです。デルタ・シグマADCの基本ブロック図について解説してきましたが、次に少し高度なブロック図に進みます。

ADS 1259

図2に示すように、ADS 1259はより高度な部品構成を採用しています。ブロックをすべてチェックしていきます。

 図2:ADS 1259デルタ・シグマADCのブロック図

内部基準電圧

すべてのデルタ・シグマADCは、変調器のフルスケール・レンジを定義するために基準電圧を必要とします。ADS 1259のブロック図は2.5V内部基準電圧を示しています。ほとんどのアプリケーションでは、内部基準電圧は十分な入力範囲とノイズ特性を提供します(基準ノイズについて別のブログで取り上げます)。しかし、入力ピン(VREFPとVREFN)が外部基準電圧の使用を可能にします。外部基準電圧は通常、レシオメトリック測定を行う際に必要となります(レシオメトリック測定の詳細は別のブログで取り上げます)。

内部オシレータ(クロック・ジェネレータ)

すべてのデルタ・シグマADCは、変調器のサンプリング・レート決定のためにクロック・ソースを使用します。ADS 1259のクロック・ジェネレータ・ブロックは、外付け部品を使わずにクロック機能を提供します。しかし、外付けクリスタルの使用は、変調器クロックの安定化を可能にするとともに、異なる変調器クロック周波数の生成をサポートし、変調器のサンプリング・レートと出力データ・レートに影響を与えます。

同様にADS 1259には他にも数多くの特長を持っていますが、詳細については製品概要をご参照ください。ADS 1259などのデバイスは、多くの有用な回路をADCに集積しており、PCB面積と、デルタ・シグマADCのシステムへの組込みに必要なコストを大幅に低減します。しかし、集積度が高くても、高分解能計量器などのさまざまなアプリケーションでこのデバイスを利用できるという高いフレキシビリティが残されています。ADS 1259は一見しただけではあまりわかりませんが、DC測定に使用されている製品としては、ノイズが最小で分解能が最大のデルタ・シグマADCのひとつです。

ADS 1220

最後に、図3のブロック図に示したADS 1220などの集積度の極めて高いデルタ・シグマADCについて解説します。

 図3:ADS 1220デルタ・シグマADCのブロック図

マルチプレクサ

マルチプレクサはADC入力数を増加させ、複数のセンサ信号の逐次測定を可能にします。複数のセンサの同時測定のために、複数のデルタ・シグマADC、あるいは複数のデルタ・シグマ変調器が必要になります。例として、ADS 1278のブロック図をご覧ください。チャネル数がはるかに多いデルタ・シグマADCもあります。ADS 1258のブロック図をご参照ください。

プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA

PGAはデルタ・シグマ変調器の前段で小信号を増幅し、分解能を高めます(ゲインと分解能の詳細は、別のブログで取り上げます)。

IDAC

サーミスタ、測温抵抗体(RTD)、歪みゲージなど、ほとんどの抵抗型センサの励起と測定に、プログラマブル電流デジタル・アナログ・コンバータ(IDAC)ソースを利用できます。

こうした高集積ADCには必要な機能がほぼすべて搭載されており、ADS 1220の場合には、センサとの直接的なインターフェイスに必要な機能が網羅されています。このADCは温度/ブリッジ(歪み)センサを使用する計装機器に最適なほか、温度/圧力トランスミッタなどのスペースに制約があるか、低消費電力を要求するアプリケーションにも最適です。

デルタ・シグマADCのブロック図をもう一度ご覧ください。恐らく、理解の度合いが向上していると思います。今回取り上げなかった機能ブロックについて、詳細をお知りになりたい場合はE2Eフォーラムをご利用ください。

詳細については以下のリソースもご覧ください。

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/precisionhub/archive/2015/03/03/delta-sigma-adc-basics-walking-around-the-delta-sigma-blocks

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