評価モジュールを使用してオペアンプ容量性負荷を安定させる3つの方法

容量性負荷は、オペアンプ回路を不安定化させる原因となり、結果として大きなオーバーシュートや、リンギング、設定時間の遅延を引き起こす可能性があります。ひどい場合には、持続的振動を引き起こします。これらの問題が生じる原因は、容量性負荷がオペアンプ出力インピーダンスに相互作用し、オープン・ループ・ゲイン(Aol)応答で新たなポールを形成し、ループゲイン(Aol*β)位相マージンを許容範囲以下に低下させるためです。

ビデオ「TI プレシジョン・ラボのオペアンプ安定性について」など、多くのリソースで、安定性に関する基本理論が詳細に解説されています。現在、容量性負荷を駆動中にオペアンプを安定化させる様々な補償回路が提供されています。今回は、自分で行うアンプ評価モジュール『DIYAMP-EVM』を使用して設計し、テスト可能な3つの一般的な補償回路についてお話しします。

絶縁レジスタRISO
最も一般的で容易な設計手法は、絶縁レジスタ(RISO)を容量性負荷と直列に並べる方法です。この絶縁レジスタは、Aol*β伝達関数にゼロを追加し、ポールによる位相シフトを取り消すことで、クロージャ・レート(ROC)を20db/decに戻します。図1に示されるように、TI Precision Labsのビデオにある設計手順を踏み、Aolカーブが20dBとなる周波数またはそれより高い周波数をゼロに設定することで、この補償回路は60度以上の位相マージンを実現し、安定性をもたらします。周波数よりも高い値をゼロに設定することで、位相マージンが下がり、より大きな減衰応答を得ることができます。この補償回路の主な弱点は、RISO全般で電圧降下が生じ、負荷を駆動した時に回路のDC精度が落ちることにあります。

 1RISO容量性負荷補償回路とそのオープン・ループ結果

RISO+DFB回路
負荷を安定化しながら、DC精度を維持する一般的なソリューションでは、RISO+DFB(RISOとデュアル・フィードバック)回路を使用します。この名称が示すように、この補償回路には2つのフィードバック・パスがあります。負荷で電圧を調整するRFのDCフィードバック・パスと、容量性負荷を安定させるために高周波数でRISO 回路のように機能させるCFのACフィードバック・パスです。正しく機能させるために、TI Precision Labsのビデオのガイドラインに従い、フィードバック部品を正しく設置してください。

図2は、RISO+DFB回路のオープン・ループ結果を示します。この回路では、RISO 回路を使用中のDC精度ロスを回復してくれる一方、設定時間は従来のRISO回路に比べて遅くなります。

2RISO+DFB補償回路とそのオープン・ループ結果

RISO+DFB+RFx
DC精度を維持しながら、過渡応答を改善するもう一つの補償手法が、RISO+DFB+RFx回路です。この回路は、基本的にRISO+DFBと同じですが、追加で別のレジスタであるRFxをCFと直列で配置します。RFxを追加することで、回路ノイズ・ゲイン(1/β)は高周波数で1+RFx/RFの値まで増加し、平坦化させることができます。このノイズ・ゲインの増加は、扱いが面倒な容量性負荷の補償、ループ・ゲイン・クロスオーバー周波数の低下、位相マージンの調整、クローズド・ループ出力インピーダンスの形成に役立ちます。この回路を安定させるには、1/β応答をAolカーブと交わる前に高周波数レベルで平坦化し、20dB/decのROCを達成する必要があります。図3は、RISO+DFB+RFx回路とそのオープン・ループ結果を示します。

3RISO+DFB+RFx補償回路とそのオープン・ループ結果

図4は、オペアンプ出力(Vo)と回路出力(VOUT)の両方において、小信号ステップ入力に対して発生する過渡信号の結果の比較です。RISO回路は、典型的な過減衰応答で、適度な設定時間であったことがわかります。RISO+DFB回路出力では、丸みを帯びたオーバーシュートが生じ、ゆっくりと低下することから、RISO回路に比べて設定時間が遅くなっています。RISO+DFB+RFx出力では、鋭角なオーバーシュートが生じますが、すぐに最終出力値に戻るため、設定時間はRISO回路と類似します。

RISO+DFB+RFx回路(Vo_RFx)のオペアンプ出力で急上昇するオーバーシュートは一見問題に見えますが、この動きはこの回路の伝達関数が複雑であることと、ポールとゼロ値の配置により過渡応答に大きな影響が出ることが原因となっています。この回路は安定しているので、心配は無用です。このオーバーシュートは非周期的で、通常、回路が不安定な時にこの規模のオーバーシュートが起こった時に発生するリンギングの影響も受けることはありません。

43つの補償回路における小信号ステップ応答の比較

図5は、これら3回路の全体の出力ノイズを比較したものです。最も少ないノイズはRISO回路で、次にRISO+DFB、RISO+DFB+RFxと続きます。RISO+DFB+RFx回路のノイズが最大であったのは、高周波数でのノイズ・ゲインの増加に起因します。RFx/RF比率の高い回路は、比率の低い回路に比べてより多くのノイズが発生します。

 53つの補償回路の全体の出力ノイズの比較

図6に示されるように、「DIYAMP-EVM」に同梱するRISO+DFB回路を使用して、これら3つのすべての回路を評価することができます。表1は、「DIYAMP-EVM」RISO+DFB回路を使用して、それぞれの回路を作成するための部品構成リストです。

 6DIYAMP-EVM」に同梱するRISO+DFB回路

1RISO+DFBDIYAMP-EVM」回路の部品構成リスト

この記事を読んで「DIYAMP-EVM」を使用して、ご自身で安定化分析を行い、自信を持って補償回路を作成できるようになることを願っています。

<参考情報>
+ユーザ・ガイド『DIYAMP-SOIC-EVM
+高精度オペアンプ - サポートとトレーニング『Analog Engineer’s Pocket Reference』をダウンロード
+汎用オペアンプ『TLV9062

※すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年8月1日)より翻訳転載されました。

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