最近は、ノートブックPCやセットトップ・ボックス(STB)でもUSB Type-C™コネクタを見かけるようになってきました。しかし、USB Type-Cが携帯電話やウェアラブル端末、その他のポータブル電子機器のような小型フォームファクタのアプリケーションに採用されるようになるにつれ、システム設計者は設計する際にこれまでとは異なる点に考慮する必要が出てきました。最大の課題は、自社システムのフォームファクタと電力消費を引き続き最小化しながら、高い電源供給率、リバーシブルなコネクタ形状、高いデータ転送率、HDMIやDisplayPort、Thunderboltなどの代替規格のサポートなど、様々な新機能の領域をどのように活用するかという点にあります。

 また、新しいUSB Type-Cコネクタは、USB Type AやMicro-USBコネクタ向けの標準的なESD保護よりも困難な保護要件を考慮しなければなりません。ピン間隔が非常に狭いUSB Type-Cコネクタでは、より高電圧のVBUS電圧ピン間で短絡する危険が高まります。VBUS電圧ピンは最大20Vに上昇することから、USB PDの5A電流がVBUSとCCおよびSUBピン間の短絡を引き起こし、ダウンストリーム側のPDコントローラにとって致命的なものとなります。これはPDコントローラがこれらのピン上で高電圧をサポートしていないことに起因します(図1)。

1:ダウンストリーム・ポート回路の故障原因になるVBUSCCおよびSUBピン間の短絡

携帯電話やウェラブル端末、その他のポータブル電子デバイスのアプリケーションでは、ボード面積と電力消費に制約があります。そのため、PDコントローラを過電圧DCや一時的事象から保護するソリューションを実装する際に、以下のような複数のデザイン課題が生じます。

PDコネクタを確立する以前でも20Vを出力できる、USB Type-Cの仕様を満たしていないアダプタが多く市場に出回っていることから、ダウンストリーム・ポート回路を最大で20V電圧および5A電流まで許容できるように保護する必要がある。

モバイルおよびウェアラブル・アプリケーションでは特に重要な、バッテリ寿命を延ばすために低消費電力を実現する必要がある。

USB Type-Cコネクタはピンの数が多く(24ピン)、ピン間隔が狭い(0.5mm)ことから、コンポーネントがボード上で非常に多くの面積を占有するケースでは、ボード上の占有面積を最小限に抑える必要がある。

これらのすべての要因を考慮し、TIはUSB Type-Cコネクタ上でCC1およびCC2ピンを保護する単一で小型フットプリントの低消費電力統合ソリューションである『TPD 2S300』を開発しました。

TPD 2S300』は、CC1およびCC2ピンを一時的なESD(最大±8kVコンタクトおよび±15kVエアギャップ)と、VBUS への過電圧短絡(最大20V)から保護する2チャネル統合回路です。多くの標準的な外部ESDデバイスとは異なり、『TPD 2S300』の統合ESDはより高い使用電圧まで耐えられます。また、外部ESDダイオードやレジスタなしに完全な保護を提供します。『TPD 2S300』は1.4mmx1.4mmのWCSP(ウォータ・チップスケール・パッケージ)で提供され、消費電力を節約し、バッテリ寿命を延ばす3µAの低静止電流定格で動作する小占有面積のソリューションです。

また、『TPD 1S514』(VBUS向けの過電圧、サージ電圧、ESD保護)や『ESD 122』(2チャネルの低容量ESD保護)などその他の保護デバイスと組み合わせることで、USB Type-Cコネクタ向けの完全なソリューションを提供することもできます。(図2)

2USB Type-Cコネクタ向けの完全なソリューション

USB Type-Cコネクタはこれまで、テクノロジの世界に無数の可能性と機会を広げてきました。しかし、これらの恩恵とともに、USB Type-Cデザインの開発を遅らせる保護上の課題も同時にもたらしました。これらの課題は、適切に対処しなければ、ユーザが最終製品を使用中に故障する原因になりえます。TIではこれらすべての点を考慮し、皆さんがご自身で開発する手間を省くための小型統合ソリューションを開発しました。

参考情報
+製品情報『TPD 2S300』『ESD 122
+ホワイトペーパ『USB Type-Cのための回路保護
+英語ブログ『USB Type-C保護の実装時に回避する課題

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年7月31日)より翻訳転載されました。

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