ハイブリッド車(HEV)やEVの主なエネルギー源はバッテリ(電池)ですが、バッテリの効率的な制御には、効率的なバッテリ監視システムが必要になります。バッテリ監視システムは主に、健全性(SOH:State of Health)と充電状態(SOC:State of Charge)を評価するために使用されます。SOHおよびSOCに関する詳細情報を得るためには、バッテリ監視システムに高精度のセンサを内蔵することが重要です。

一般的なバッテリでは、電流、電圧、および温度センサによって以下のパラメータを測定しながら、バッテリを損傷から保護します。

  • (充電時に)バッテリへと流れる電流、または(放電時に)バッテリから流れる電流
  • パック電圧
  • 個々のセル電圧
  • セルの温度

図1は、バッテリ制御ユニットのブロック図における電流センサの位置を示しています。

1:バッテリ制御ユニットにおける電流センサの位置

HEV/EV内のシステムの主なエネルギー源がバッテリであるとき、その充電および放電サイクルに関する情報を得ることは重要です。電流センサは、バッテリのSOHのステータスをバッテリ管理システムに通知することで、充電および放電サイクルに関する主な情報源となります。これらのセンサは、オンボードまたは外部に配置できます。HEV/EVのバッテリ容量が増大するにつれ、より大きな電流範囲への要求が高まっています。HEV/EVで使用される一般的な電流センサに対する主な要件を次に示します。

  • mAからkAまでの電流範囲。たとえば、-2000A~2000A、-1200A~1200A、-500A~500Aなど。より大きな電流範囲が求められる理由は、より大きなバッテリ容量に対応し、ピーク電流検出(バッテリへの短絡、地絡)など負荷の動的特性を監視し、始動/トルクの初期需要を満たすためです。
  • 高帯域幅。負荷の動的特性を監視し、障害状態に対して応答するために、より高い帯域幅が必要になります。ピーク電流はkAの範囲であり、数ミリ秒~数秒にわたって継続します。
  • 高精度。バッテリ管理システムがパラメータを正確に測定する能力は、すべてセンサ入力の精度に依存します。これらのパラメータには、ピーク電圧、充電/放電電流、個々のセル電圧、異常時のバッテリ切断、スタック内の各セルに蓄えられた電荷などが含まれ、機能安全性、SOC、SOH、SOF(機能の状態)を把握するためのシステム部品の動作ステータスも含まれます。システムの効率を高めるためには、状態の判断を非常に迅速に行う必要があり、低い電流では特に、電流センサの精度が重要となります。精度は通常、低電流と高電流に対してそれぞれ別々に指定されます。
  • 温度および直線性の補償。温度および直線性は、温度への依存性を持つ電流センサでは重要な要素です。システムでの温度依存性は、精度の低下につながります。温度範囲全体にわたって同じ精度を維持することが不可欠です。この要件を満たすためには、温度および補償のアルゴリズムが必要です。

バッテリ電流センサは、図2に示すように、シャントと磁気という2つの方法で実現できます。

2:電流センシングの原理

シャントおよび磁気の手法には、それぞれ固有の長所と短所があります。

シャント・ベースの電流センサ

シャント抵抗に有限の大きさの電流が流れ、アナログ・フロントエンド(AFE)アンプによってその電圧降下を測定します。値の低い高精度シャントの進化とAFE回路の劇的な向上により、シャント技術はHEV/EVでの電流測定に広く採用されてきました。たとえば、Vishay製のシャントは、非常に低い抵抗値(50μΩ、100μΩ、125μΩ、500μΩ)を提供します。これらの低抵抗シャントでは、シャントにおける電圧降下が非常に小さくなります。ここで、その小さな電圧降下を測定することが課題となります。TIの車載電流センサは、そのような種類のシステムに対して包括的なソリューションを提供しています。 

非絶縁型シャント

車載用シャント・ベース、±500A高精度電流センシングのリファレンス・デザインは、バッテリ電流センサのソリューションを提供し、グレード1の温度範囲(-40°C~+125°C)にわたって優れた精度と直線性を実現します。図3は、このリファレンス・デザインが各要件にどのように対処するかを示しています。

3:要件とTIの対応

車載グレード1の温度範囲(-40°C~+125°C)にわたってそのような性能特性を実現することで、このリファレンス・デザインは、バッテリ電流センシング・アプリケーションに最適な選択肢となります。INA 240-Q1PGA 400-Q1などの信号コンディショナを使用すると、HEV/EVでのバッテリ電流センシングがさらに効率的になります。図4に、バッテリ電流センサの主なコンポーネントのブロック図を示します。

4:非絶縁型電流センサのブロック図

絶縁型シャント

AMC 1301やISOW 7821などのデバイスは、絶縁型のシャント電流センス測定を行います。高温側と低温側の間で優れた絶縁を提供することで、このシステムはバッテリ・センシングの信頼性を高めます。図5に示されるとおり、AMC 1301は電流信号の絶縁を提供し、ISO W7821は電源の絶縁を提供します。PGA 400-Q1は、オフセットおよびゲイン誤差を完全に解消します。

5:絶縁型電流センサのブロック図 

HEV/EVが急速に普及している最も大きな理由の1つは、バッテリ技術の進化です。バッテリの性能、寿命、安全性、および信頼性が、HEV/EVで重要な役割を担っています。バッテリ電流センサと、より広い範囲にわたるその精度は、要求されるパラメータを実現するために極めて重要です。TIのバッテリ電流センシング・ポートフォリオを利用すれば、これらの仕様を簡単かつ単純に実現できます。

その他のリソース

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/behind_the_wheel/archive/2017/08/02/understanding-current-sensing-in-hev-ev-batteries

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