FRAMかフラッシュか:アプリケーションに最適なマイコンの選び方

自社のアプリケーションでマイコン(MCU、マイクロコントローラ)を使用する際、フラッシュまたはFRAM(強誘電体メモリ)のいずれかを選択する必要があります。FRAMとはどのようなもので、それが有用な機能なのか、疑問に思う人もいるでしょう。FRAMは、フラッシュなどの従来のテクノロジに比べて、高速な書き込み速度、統合メモリ、低消費電力の書き込み、事前消去の不要など、複数の優位性を備えています。これらの優位性は、低消費電力が求められるアプリケーションにおいて、ただちに実際の機能レベルでの利点となります。

OTA(Over The Air)アップデートなど、屋外でファームウェア・アップデートが必要なアプリケーションについて考えてみましょう。例えば、SPI(シリアル・ペリフェラル・インタフェース)を介して、4KBのファームウェア・イメージをメモリに転送する必要があり、フラッシュまたはFRAM搭載デバイスのどちらを使用するか、社内で話し合っているとします。FRAMとフラッシュ・デバイスの両方において、同じSPI設定で検証すれば、このアプリケーションに関してはFRAMがフラッシュに比べて優位なことがわかります。表1は、マスタ及びスレーブとして使用されたデバイス、SPIクロック・レート、このアプリケーションで転送されたデータ総量を示します。

マスタ

フラッシュ・スレーブ

FRAM スレーブ

シリアル・クロック

受信/転送
されたデータ総量

MSP430FR4133

MSP430F5529

MSP430FR5969

1MHz

4,096バイト

1:アプリケーションで使用されたハードウェアとSPI設定

FRAMを使用することでファームウェアのアップデート時間が大幅に短縮されたことは、下記の図1のように明らかです。ファームウェアを16倍高速にアップデートできる状況を考えてみましょう。これは、このアプリケーションにおいてFRAMがフラッシュに勝る数ある利点の一つです。FRAMの書き込み時間が、フラッシュを使用した際のSPI転送時間とほぼ同じであることに注意してください。これは偶然ではありません。事実、このアプリケーションではFRAMをプログラミングする際、ほとんどの時間はSPIを介してデータを転送するのに用いられています。フラッシュの100倍に相当する1Mbps以上の高速でFRAMに書き込むことができるのです。

14KBファームウェアをアップデートした時の速度

また、フラッシュ・デバイスでは、ほとんどの時間が古いファームウェアの消去に費やされていることもわかります。一方、FRAMの場合、事前消去が不要です。メモリ消去時間をなくすことで、フラッシュ・テクノロジに関連する消費電力ボトルネックを解消することもできます。図2は、フラッシュとFRAMをアップデートする際の消費電力の比較を示します。

24KBのファームウェアをアップデートする際に消費される電力比較

FRAMがフラッシュに勝るもう一つの優位性は次の点にあります。TIの『LaunchPad™開発キット』の一つで計測したところ、4KBのメモリをアップデートする際、FRAMデバイスはフラッシュ・デバイスに比べて消費電力量を1/21に抑えられることが分かりました。このような低消費電力化により、バッテリ寿命を飛躍的に伸ばすことができ、OTAのアプリケーションだけでなく、リモート・センシングやデータ・ロギング・アプリケーションにおいても恩恵をもたらします。

このアプリケーションにおけるFRAMの最大の恩恵の一つは、見えづらく、見落とされがちです。フラッシュで“1”をプログラムするには、最初に消去を実行する必要があります。フラッシュ使用時に、消去できる最小のメモリ量はセグメントと呼ばれ、『MSP430™マイコン』では、1セグメントは512バイトとなっています。図3は、4KB でなく、1.25KBだけをアップデートしたい類似したアプリケーションを示します。

3:部分的セグメントのファームウェア・アップデート

FRAMの観点では、このアプリケーションはすべてのファームウェアをアップデートする時とほとんど変わりません。反対に、フラッシュの場合、セグメントの境界が存在することから、この作業は些細なものでなくなります。図3は、このファームウェア・アップデートがセグメント4を半分に分割してしまうことを示します。このセグメントをプログラムするためには、最初に全てを消去する必要があります。では、どうすれば、このセグメントの残りのコードを損傷させずにすむのでしょうか。そのためには、まず、このセグメントをRAMにコピーし、それを新しいアップデートに結合させ、その後、フラッシュに戻すようにプログラムすることになります。このプロセスは、非常に多くのRAMを必要とし、アップデート時間を延ばし、アップデート・プロセスに煩雑な作業を付加することになります。FRAMを使用した時には、これらの全てがなくなるのです。

まとめると、FRAMテクノロジは様々なアプリケーションに恩恵をもたらします。高速な書き込み速度、統合メモリ、高い耐久性、低消費電力は、マイコン・メモリに新しい基準を打ち立て、世界中で革新的なソリューションの開発を可能にするでしょう。TIの『MSP430マイコン FRAM搭載LaunchPad開発キット』の一つを使用することで、FRAM搭載ソリューションを素早く評価し、そのプロトタイプ製品を迅速に開発することができます。これらの開発キットは、20ドル以下の費用で、開発開始のために必要なものすべてを提供します。購入をご希望の方は、TIの正規販売代理店かTI storeにお問い合わせください。

<参考資料>
MSP430 FRAMマイコン・テクノロジについて
+各アプリケーション・ノートをダウンロード(英語):
 -「MSP430FR57xxでOTAをアップデート
  -「FRAMに関する FAQ
  -「MSP430 FRAMの品質性と信頼性

※LaunchPadおよびMSP430はTexas Instrumentsの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年6月22日)より翻訳転載されました。

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