スマート・ゲート・ドライブ・アーキテクチャとは何か(Part 2):TDRIVEについて

このシリーズのPart 1では、ゲート・ドライブ電流をダイナミックに制御し、それによりMOSFETスルーレートを制御するIDRIVE機能を取り上げました。今回取り上げるテーマは、モーター・ドライブ・システムの堅牢性と効率を向上する内部ゲート・ドライブ・ステート・マシンのTDRIVEです。

TDRIVEはMOSFETハンドシェーク・スキーム、ゲート・フォルト検知、dV/dtターンオン防止の3つの主要コンポーネントで構成されています。最初のコンポーネントであるMOSFETハンドシェーク・スキームは、スマート・ゲート・ドライブにより、不適切なデッドタイムを原因とするMOSFETのシュートスルー(すなわちクロス・コンダクション)の発生を防止します。ローサイドMOSFETがオフになったのと同時にハイサイドMOSFETがオンのコマンドを受け取った場合には、ターンオフとターンオン間の遅延のために両方のMOSFETがオンになる時間帯が生じる可能性があります。これをシュートスルーと呼び(図1のハイライト部分)、デッドタイムが不十分な場合にそうした現象が起きる可能性があります。

 図1:シュートスルーの例

図2に示すようにデッドタイムとは入力信号の遅延のことで、他方のMOSFETがオンに切り換わる前に、一方のMOSFETがオフになるように十分な時間を確保する目的で設定されます。設定は一般に試行錯誤によって決められており、多くの場合、モーター・ドライブ・システムの動作中に電源電圧や温度などのパラメータの変動によるシュートスルー現象を防ぐため、追加のマージンが設定されています。

 図2:デッドタイムの例

デッドタイムはモーター・ドライブ・システムの効率を低下させることから、望ましいものではありません。完全なデッドタイムを実現できない場合、2つのMOSFETがオフの間(モーターのインダクタンスは電流を流し続ける)にパワーMOSFETのボディ・ダイオードで電力が消費されることから、効率が低下します。

この問題を解消するため、TDRIVEは入力、MOSFET、その他のシステム状態に関係なく、適切な長さのデッドタイムを自動的に決定します。TDRIVEは内部のゲート・ツー・ソース電圧(VGS)モニタ回路(図3参照)を使用して、一方のMOSFETをディスエーブルにし、他方をイネーブルにできるタイミングを決定します。ハンドシェーク・メカニズムはMOSFETのVGS をモニターすることにより、モーター・ドライブの動作中にシステム・パラメータが変化しても、最適な長さのデッドタイムを挿入できます。

 図3:VGSモニタ回路

これまでVGSモニタ回路を分析してきましたが、これをもとに、TDRIVEがMOSFETゲート故障検知とdV/dtターンオン防止をどのように行うかに関して説明します。簡単に言うと、各スイッチング・イベントの開始ごとに内蔵タイマが始動します。このタイマはTDRIVEの重要なコンポーネントであり、ゲート・ドライバ内部の複数のメカニズムを動作させます。

まず、TDRIVEタイマがゲート・ドライバに信号を送り、タイマが切れるまで他方のMOSFETでの強力なプルダウンをイネーブルにします。これにより、強力なプルダウンを必要としない通常動作中に、所望のゲート・ドライブ設定と効率を犠牲にせずに、dV/dtに関係するターンオンを防止できます。dV/dtターンオンは、MOSFETの寄生キャパシタンスを経由してスイッチング・ノードからMOSFETゲートに電荷が移動する現象です(図4参照)。MOSFETゲートに十分な電荷が注入されると、他方のMOSFETをイネーブルにする電圧が生成され、シュートスルーを発生させます。これを防止する方法の1つが、他方のMOSFET上の電荷に対する強力な放電パスをイネーブルにすることです。これはTDRIVE時間中に発生しています。

 4dV/dtの例

次のTDRIVEメカニズムは、TDRIVE時間の最後でのVGS電圧のチェックです。MOSFETがイネーブルかディスエーブルになりつつあるかに応じて、VGS がゲート・ドライブ電圧まで上がらない場合や0Vに低下しない場合、ゲート・ドライバはゲート・ドライブ故障信号を発信します。ゲート・ドライブ故障は、短絡または不適切なゲート信号接続を示します。MOSFETゲートに関する問題を検知することにより、ゲート・ドライバはシャットダウンし、システムの損傷拡大を防止するとともに、システム・コントローラに異常信号を送ります。図5はTDRIVEの全シーケンスの例を示します。

 図5:TDRIVEのシーケンス例

これまで説明してきたことを文章だけで理解するのは、それほど簡単ではありません。こうした機能を実際に評価してみたい場合には、BOOSTXL-DRV8305EVMをご利用ください。このBoosterPack™プラグイン・モジュールは、DRV8305スマート・モーター・ゲート・ドライバを使用した包括的な3相ブラシレスDC(BLDC)モーター駆動段で、TIのマイクロコントローラ(MCU)LaunchPad™開発キットとの組み合わせにより、完全なモーター駆動/制御システムの設計を可能にします。

その他のリソース

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/motordrivecontrol/archive/2016/07/18/what-is-a-smart-gate-drive-architecture-part-2

*ご質問は E2E 日本語コミュニティにお願い致します。