昇降圧型反転コンバータで成功する基板レイアウト

DC/DCコンバータ分野では、LM5017ファミリのような降圧型コンバータや降圧型レギュレータにおいて、正極性の入力電圧VINから、負極性の出力電圧VOUTを作ることができることは、良く知られています。一見、昇降圧型反転コンバータの回路は降圧型コンバータと同じICを使っているように見えますが、実際には異なります (図 1a と 図1c)。これらの回路には、電圧レベル、電流レベル、スイッチング電流経路やプリント基板レイアウトなどで重要な違いがあります。

前のブログ記事ではVIN 範囲、VOUT 範囲や利用可能な出力電流IOUT maxなどの異なる点について説明しました。プリント基板レイアウトの違いは、昇降圧型反転コンバータと、通常の降圧型コンバータのスイッチング電流の電流経路の違いに由来するもので、これも重要でありながら、十分に理解されていません。

図1は、昇降圧型インバーティング・コンバータと、通常の降圧型コンバータのスイッチング電流の電流経路の違いを示しています。図1aと図 1bに示す通常の降圧型コンバータでは、入力コンデンサCIN、ハイサイド(高圧側)スイッチQH と同期整流器QLで構成された入力ループに、高いdi/dt(変化率)のスイッチング電流が流れます。同期整流器QL、インダクタL1と出力コンデンサCOUTで構成される出力ループには、比較的一定した電流が流れます。このため、入力電流ループを構成する部分を最適化することが重要であり、出力電流ループの部分はそれほど重要ではありません。

1: 降圧型コンバータ (ab)と、昇降圧型反転コンバータ (cd)のスイッチング電流の電流経路

図1cと図1dの昇降圧型反転コンバータの入力と出力の電流ループは、それぞれ、降圧型コンバータと同様の部品で構成されています。入力ループは入力コンデンサCIN、制御FET QH と、同期整流器QLで構成されています。出力の電流ループは同期整流器QL、フィルタ・インダクタL1と、出力コンデンサCOUTで構成されます。しかし昇降圧型反転コンバータでは、スイッチング動作のサブインターバルとサブインターバルの間にフィルタ・インダクタがCIN からCOUTにスイッチングされるため、入力と出力の両方の電流ループに、高いdi/dtのスイッチング電流が流れます。

降圧型回路とインバーティング回路には類似性があるため、しばしばスイッチング電流経路の違いは見落とされ、多くの昇降圧型インバーティング回路の設計と基板レイアウトは降圧型コンバータと同様に行われて、入力電流ループだけが小さなループ面積に最適化されます。降圧型回路から昇降圧型インバーティング回路への移行は、しばしば、単にVOUT とグラウンドの端子を逆接続したものとして扱われます。しかし、この手法は、同一のレギュレータICを使ったとしても、単純な降圧型コンバータと昇降圧型反転コンバータの電流経路の違いを考慮しておらず、次のような問題を発生させます。

  • 図1cと図1dに示したスイッチング電流経路は、無視できない大きさの寄生インダクタンスを持つことがあり、スイッチング・ノードでより大きなスパイク波形が発生し、次のような不利な結果を発生させることがあります。

    • 最適化されていない電流ループにスイッチング電流が流れることで、より高いEMI(電磁妨害)やノイズが発生する
    • 昇降圧型インバーティング回路の構成では制御用のMOSFETに、|VIN + VOUT|の電圧に重畳して、より高いスパイク電圧が印加される
  • 出力コンデンサに流れるスイッチング電流は、降圧型コンバータと同じインダクタ電流値でも、より高い発熱が発生します。出力コンデンサの不連続電流により、より高い出力リップルも発生します。このため、設計者は、これらの高いリップル電流に配慮して、VOUT のリップルとIRMS 電流の両方の定格を満足するように、出力コンデンサの選択を行う必要があります。図2に、降圧型コンバータと昇降圧型反転コンバータの出力コンデンサのリップル電流の様子を示します。

2: 降圧型コンバータ (ab)では、インダクタが出力ノードに常時接続されているため、出力フィルタのコンデンサのリップル電流は小さい。昇降圧型反転コンバータ (cd)では、出力コンデンサに流れる電流が不連続であることから、出力フィルタのコンデンサのリップル電流は大幅に高い。

図3に、入力ループと出力ループでのdi/dtをより低くする昇降圧型インバーティング回路の電力ステージを最適化する回路を示します。また図4に、100V動作の同期整流降圧型レギュレータであるLM5017を使った昇降圧型インバーティング回路の電力ステージの基板レイアウト例を示します。

3: スイッチング電流ループ面積を最小化するための、電力ステージの最適化の様子。 (a) 電流ループ、(b)電流ループを最小化

 

4: LM5017 同期整流降圧型レギュレータを使った昇降圧型反転コンバータのプリント基板レイアウト例

まとめ

設計者はしばしば、降圧型レギュレータを使って昇降圧型反転レギュレータを設計しますが、降圧型回路と昇降圧型インバーティング回路のスイッチング電流経路には重大な違いがあります。設計者は最高の信頼性とノイズ性能を得るために、特に、出力フィルタのコンデンサの選定と、スイッチング電流ループの基板レイアウトに配慮すべきです。

追加資料

上記の記事は以下URLより翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2016/09/28/laying-out-an-inverting-buck-boost-converter-for-success

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