LDOの基本:電流制限

DC電力管理の最終目標は、システム内に数多く存在する電子機器に、レギュレートされた安定した電圧を供給することです。この点で特に重要になるのが、必要に応じて電流を供給しながら電圧をレギュレートできる低ドロップアウト・レギュレータ(LDO)です。

外的条件やシナリオによっては、LDOから予想外に大きな電流が流れる場合があります。このような大電流が、給電されている他の電子機器に供給された場合は、供給元の電力管理回路だけでなく、大部分の電子システムにも悪影響が及ぶことになります。短絡保護や電流制限機能を備えたLDOを選択することで、このような悪影響を防止することができ、電力管理全体を設計する際に追加の保護機能として利用できます。

電流制限とその仕組み

LDOの電流制限は、供給される電流の上限を設定することにより定義されます。定電流源とは異なり、LDOは要求に応じて電流を供給しますが、レギュレートできる合計電力を制御することもできます。電流制限は、LDO内部の出力段のトランジスタを制御している内部回路を通じて行われます。図1を参照してください。これはLDOの古典的な電流制限回路であり、制限値に達すると電流が急停止することから、一般に"ブリックウォール"電流制限と呼ばれています。この内部回路では、LDOにより帰還用の出力電圧が測定されるとともに、内部基準電流(IREF)を基準として、スケーリングされた出力のミラー電流の測定が行われます。

  

図1:電流制限用のLDO内部構造

ブリックウォール電流制限

ブリックウォール電流制限では、上限が設定され、LDOから供給される電流が電流制限に達するまで徐々に増加します。電流制限を超えると、出力電圧はレギュレートされなくなり、その値は負荷回路の抵抗(RLOAD)と出力電流制限値(ILIMIT)によって決まります(式1)。

 (1)

パス・トランジスタは、接合部温度が許容制限内(TJ < 125℃)に収まる電力消費を行うため、熱抵抗(θJA)に対する許容消費電力の範囲内でこの動作を継続し、電力を消費し続けます。VOUTが低下しすぎて温度が過熱制限に達した場合は、デバイスを永続的な損傷から保護するために、サーマル・シャットダウンによってデバイスの電源がオフにされます。デバイス温度が低下すると電源が再度オンになり、レギュレーションが再開されます。短絡が発生しているような場合はLDOによってVOUTが0Vにレギュレートされるので、この点が特に重要です。

たとえば、TIのTPS7A16は、広範な電圧条件で大電流の出力を制限できます。図2は、30V入力条件での電流制限機能の動作例を示したものです。ご覧のように、電流値が電流制限を上回ると、LDOは電流制限値で電力供給を続けますが、VOUTを3.3Vにレギュレートしなくなります。105mAでデバイス温度が過熱制限を上回ると、サーマル・シャットダウンが作動します。

ニッケルカドミウムとニッケル水素のシングルセル・バッテリの充電には、どちらも定電流源を必要とするため、この電流制限機能が役立ちます。TPS7A16のようなLDOを利用すると、バッテリの充電中にバッテリ電圧が変化しても、制限値(ILIMIT)での定電流を維持することができます。

  

図2:TPS7A16ブリックウォール電流制限(30VIN、3.3VVIN、VSON:25

フォールドバック電流制限

フォールドバック電流制限は、標準的な上限制限型によく似ています。しかし、フォールドバック電流制限の主な目的は、VINが一定のままという状態で、出力電流制限を直線的に低下させることによりVOUTを低下させ、出力トランジスタの消費電力を安全な消費電力制限の範囲内に収め、合計消費電力を制限することです。

TLV717Pのようなデバイスは、大部分が熱インピーダンスの高い非常に小型のパッケージで供給されることから、フォールドバック電流制限機能を備えています。図3に示すTLV717Pの出力電流制限の動作を見てみると、VINがVOUT + 0.5Vと規定されているため、25℃で許容される最大消費電力は150mWであることがわかります。電流値が電流制限を超え、VOUTが低下し始めると(RLOADは一定とする)、IOUTと消費電力が両方とも低下します。このため、定電流を消費する非オーム性のデバイスでは少し動作が複雑になり、ロックアウト状態(給電先のデバイスにおいてVOUTが低下し続け、LDOによりIOUTが低下し続ける状態)を引き起こす可能性があります。

 

図3:TLV717P出力電流制限 対 VOUT

短絡や過負荷などの異常な状態が発生している場合は、この異常な状態が、他の影響を受けやすい電子機器に及ばないようにすることが重要です。保護機構を備えたLDOの広範な機能を利用することで、より堅牢な設計が可能になります。その他のLDO設計の基本に関するブログ記事をご覧ください。

 その他のリソース

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/05/25/ldo-current-limit

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