LDOの基本:電源除去比

低ドロップアウト・リニア・レギュレータ(LDO)の最大の利点の1つとされているのが、スイッチング電源から発生する電圧リップルを減衰させることができるという点です。この点は、データ・コンバータ、フェーズロック・ループ(PLL)、クロックなど、ノイズの多い電源電圧により性能が低下する可能性のある信号コンディショニング・デバイスにおいては特に重要となります。TIのXavier Ramusによるブログ記事、『Reducing high-speed signal chain power supply issues』では、信号コンディショニング・デバイスにおけるノイズの悪影響について取り上げています。しかし、電源除去比(PSRR)は、一般にはまだ単一の、静的な値と誤解されています。この記事では、PSRRとは何なのかという点と、PSRRに影響する変動要素について説明していきます。

PSRRとは

PSRRは、数多くのLDOデータ・シートに記載されている共通仕様です。この仕様は、特定の周波数のAC成分が、LDOの入力から出力にかけて減衰する度合いを規定しています。PSRRは、次の式1のように表されます。

                               (1)

この式から、減衰が大きいほど、デシベル単位のPSRR値も大きくなることがわかります。(一部のベンダーでは減衰を示すために負符号が使用されているという点に注意する必要があります。テキサス・インスツルメンツを含むほとんどのベンダーでは、使用されていません。)

データ・シートの電気的特性表に、120Hzまたは1kHzの周波数でPSRRが規定されていることがよくあります。しかし、この仕様のみでは、与えられたLDOがフィルタ処理の要件を満たしているかどうかの判断には役立たない可能性があります。では、その理由を調べてみましょう。

アプリケーションに適したPSRRの見極め

図1は、12Vレールから4.3VにレギュレートしているDC/DCコンバータを示したものです。その後には、3.3Vレールにレギュレートしている高PSRR LDO、TPS717が続きます。スイッチングによって発生するリップルの大きさは、4.3Vレールで±50mVとなります。LDOのPSRRにより、TPS717の出力に残っているリップルの大きさが決まります。

 図1:LDOを使用したスイッチング・ノイズのフィルタ処理

減衰の度合いを見極めるためには、まず、どの周波数でリップルが発生しているかを把握する必要があります。この例では、一般的なスイッチング周波数範囲の中間値である1MHzで発生していると仮定しましょう。120Hzまたは1kHzで規定されているPSRR値は、この分析には役立ちません。代わりに、図2のPSRRプロットを参照する必要があります。

図2:TPS717のPSRR曲線(VIN – VOUT = 1V)

1MHzでのPSRRは、以下の条件下で45dBです。

  • IOUT = 150mA
  • VIN – VOUT = 1V
  • COUT = 1μF

これらの条件が、自分の条件に合致していると仮定します。この場合、45dBは減衰係数で言うと178に相当します。入力に±50mVのリップルがある場合、出力では±281μVに縮小することが期待できます。

条件の変更

しかし、たとえば条件を変更し、より効率的なレギュレーションのためにVIN – VOUTデルタを250mVに下げたとします。この場合、図3の曲線を参照する必要があります。

図3:TPS717のPSRR曲線(VIN VOUT = 0.25V)

その他すべての条件を一定に保つと、1MHzでのPSRRは23dB(減衰係数は14)に低下することがわかります。これは、CMOSパス素子が三極管(リニア)領域に入る、つまりVIN – VOUTデルタがドロップアウト電圧に近づき、PSRRが低下し始めるためです。(ドロップアウト電圧は、各要因の中でも特に出力電流の関数です。そのため、出力電流が低下するとドロップアウト電圧も低下し、PSRRの向上につながります。)

図4に示すように、出力コンデンサを変更した場合にも、PSRRに影響があります。

図4:TPS717のPSRR曲線(VIN VOUT = 0.25V、COUT = 10μF)

出力コンデンサのサイズを1μFから10μFに増加することにより、1MHzでのPSRRは、VIN – VOUTデルタが250mVのままでも42dBに上昇します。高周波数でのこぶ状の曲線は左側にシフトしています。これは、出力コンデンサのインピーダンス特性によるものです。出力コンデンサのサイズを適切に設定することで、減衰を調整または拡大して特定のスイッチング・ノイズ周波数に一致させることができます。

すべての条件の調整

VIN – VOUTと出力容量を調整するだけで、特定のアプリケーション向けにPSRRを向上させることができます。ただし、これらの変動要素のみがPSRRに影響するというわけでは決してありません。表1は、各種要因をまとめたものです。

パラメータ

PSRR

低周波数

(1kHz未満)

中周波数

(1kHz~100kHz)

高周波数

(100kHz超)

VIN – VOUT

+++

+++

++

出力コンデンサ(COUT

影響なし

+

+++

ノイズ低減コンデンサ(CNR

+++

+

影響なし

フィードフォワード・コンデンサ(CFF

++

+++

+

PCBのレイアウト

+

+

+++

表1:PSRRに影響する変動要素

これらの他の要因については、今後の記事で説明していく予定です。それまでは、効果的なLDOフィルタの設計に役立ち、自由に使える各種ツールに習熟しておくことをお勧めします。LDO PSRRの詳細については、アプリケーション・ノート『LDO PSRR Measurement Simplified』をご覧ください。

その他のリソース

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/03/03/ldo-basics-power-supply-rejection-ratio

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