コントローラのパワーアップのためのユニークな手法

ツールへの理解が深まれば深まるほど、ツールは強力になります。その一例がTektronix 576カーブトレーサーです。一見すると、3端子バイポーラ接合トランジスタ(BJT)あるいは電界効果トランジスタ(FET)の計測のためだけの機械に見えます。メーカーの技術資料には、そのように記載されていました。有能な製品/不良分析エンジニアがそうでないことを教えてくれるまでは、私もそう思っていました。そのエンジニアは、この機械が電流と電圧をMV/nA(メガボルト/ナノアンペア)に至るまで正確に測定できるまさに精密な電圧/電流源であることを実証してくれました。電流/電圧(I-V)曲線を動的でグラフィカルに測定することから、このツールはラボで使える最も強力な回路デバッギング・マシーンのひとつとなっています。

最初は、燐光体を使った陰極線管(CRT)モニタと機械式スイッチを備えた旧式のアナログマシンが1kV強の電圧を提供できるかどうかについては、私は疑問を感じていました。しかし、開発中のデバイスの信頼性テストを実施し、そのデバイスのリリースが間近に迫っているときに、原因不明の不良が発生したことから、私の疑問は解消しました。カーブトレーサーを使うことにより、私たちはボードレベルの問題が原因で、QFNパッケージのピン間で間欠的な短絡が起きていることを究明できました。私たちはCRTモニタの画面を携帯電話のカメラで撮影し、結果を共有しました。本来別の目的のために造られた旧式のこの機械は、2本のピン間で短絡したり溶断したりして、瞬間的な電圧降下が発生したことを示していました。

ある特定のケースでは、メーカーが推奨しているようにうまく動作しますが、他のケースではうまく働かないことが多いのが実情です。このことは、回路で使用されるいかなるデバイスについても当てはまります。データシートの1ページ目を読み、メーカーが特定した構成でしかデバイスが動作しないと仮定するのは簡単かもしれませんが、そうしたケースが必ずしもすべてであるとは限りません。その一例がTIのUCC28880UCC28881スイッチャ用オフラインコンバーターの最大出力です。データシートの冒頭に、いつ、どのデバイスを使用すべきかを設計者が理解するのを助ける表が掲載されています(図1)。

異なるトポロジによりパワー処理能力が変化

製品

85~265VACオープン・フレーム設計のための最大出力電流

85~265VACオープン・フレーム設計のための最大出力電流

非絶縁降圧

フライバック

UCC28880

100mA

3W

UCC28881

225mA

4.5W

図1:UCC28881のデータシートのパワー定格表

この表からはこのデバイス・ファミリが供給できる最大出力は、フライバック構成の場合で4.5Wになりますが、そうでないケースも存在します。最大出力の限界値はデバイスのピーク電流限界(ILIMIT)によって決まります。電流が限界に達するのは、出力レベルが最低、入力電圧が最小のときであり、汎用入力をサポートできる設計では85Vが最小入力電圧となります。入力がローライン(北米、日本)またはハイライン(欧州、アジア)だけに限定される場合には、実際に実現できる最大出力レベルはさらに高くなります。ハイラインの場合、出力レベルが同じなら、入力電流が低くなることが明白です。他方、ローラインのみの入力では、代表的な回路図に多少の修正が必要になります。

このことを実証するのが100V~450VDC、5W、1W時効率80%、AC-DC電源用補助電源リファレンス・デザインです。入力が85V ACではなく100V DCになることから、最小入力電圧が高くなります。これにより、UCC28881の設計では最大5Wの出力が可能になります。これはデータシートに記載された4.5Wを上回っています。しかし、耐熱性など、別の制約要因が絡んでくるため、このパワーアップ状態をいつまでも維持できるわけではなく、また動作範囲が制限され、理論値に届かない可能性があることも確かです。

こうした手法が使えるのは、最大出力だけに限られていません。以下はオフライン電源コントローラに独自のアレンジを加え、記載された仕様外の条件下で使えるようにしたリファレンス・デザインの例です。

※上記の記事はこちらのBlog記事(2017年8月23日)より翻訳転載されました。

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