超高速の内部補償型ACMトポロジ – その活用法

内部補償型ACM(Advanced Current Mode)は、テキサス・インスツルメンツが開発した新しい制御トポロジであり、内部補償によって真の固定周波数の変調および同期をサポートします。これは基本的に、エミュレートされたPCM(Peak Current Mode)制御に似ています。PCMは入力電圧および出力電圧の範囲全体にわたって安定性を保持し、高速な過渡応答を実現します。ACMがPCMと違う点は、ランプ・ベースのピーク電流モード制御方式であり、外部補償は使用せずに、内部でランプを生成して真の固定周波数を実現することです。また、ACMは電源段(インダクタおよびコンデンサ)の変動に対して高い耐性を持ちます。ここではACMの利点についてさらに詳しく取り上げていきます。

内部補償型ACMを使用する理由

外部補償回路を使用せずに真の固定周波数または擬似固定周波数をサポートする制御トポロジは、いくつかあります。ただし、これらのトポロジには欠点もあります。

真の固定周波数で外部補償を必要としない既存のコンバータのほとんどは、従来のピーク電流モードに基づき、補償回路をパッケージの外部から内部へと移動したものであり、内部補償回路はさまざまなアプリケーションをカバーするように設計され、最適化されています。内部補償ではさまざまな安定性範囲をカバーする必要があるため、高速な過渡応答の実現が求められる場合には、内部のループ補償およびスロープ補償の最適化が非常に難しくなります。また、幅広いアプリケーションのケースに対応するため、ループ帯域幅も制限する必要があります。通常、負荷電流のステップ変化が大きい場合には特に、過渡応答が非常に低速になります。

TIのD-CAP™/D-CAP3™制御モードなど、外部補償なしで擬似固定周波数を維持するために、一定オン時間変調回路を使用する制御トポロジもあります。オン時間が特定のVINおよびVOUTに対して固定され、スイッチング周波数が負荷過渡中に変動可能であるため、非常に優れた過渡特性が得られます。ただし、この周波数の変動によって電磁干渉(EMI)の懸念が生じ、EMIに敏感な通信アプリケーションでは特に問題となります。内部補償型ACMは、固定周波数と一定オン時間制御の両方の欠点に対処します。

ACMを使用した降圧システムの概略を図1に示します。この回路では、帰還電圧情報は出力段から内部の積分器へ供給されるため、外部に補償回路は必要ありません。

図1. ACMを使用した降圧システムの概略

この単純な制御構造には、次のような利点があります。

  • 適切で簡単な出力電圧帰還ループ。分圧抵抗としてRS1とRS2だけを使用し、補償回路なしでVoutを検知し、検知したVout情報はVFBを介して制御ループに戻されます。
  • PID(Proportional–Integral–Derivative)補償やPI(Proportional–Integral)補償に必要な外部部品がないことで、設計者は複雑な補償設計を回避できるため、非常に使いやすい回路となっています。
  • また、外部補償部品が不要であるため、部品点数や貴重なPCB領域も削減できます。

内部補償型ACM制御の概要

図2に、ACM制御ループの全体ブロック図を示します。ACMには、電圧ループ、ランプ・ループ、補償回路、電流帰還、およびパルス幅変調(PWM)ロジックが含まれています。

図2. ACM制御のブロック図

各ブロックの機能は次のとおりです。

  • 電圧ループは、VFBからの誤差信号を検知して処理します。
  • ランプ・ループは、VINとPWM信号に従ってランプ電圧を生成します。スロープ補償は、ランプ電圧の下降スロープの半分に保持されるよう最適化されています。
  • ループコンパレータは、入力信号を加算し、正の入力の合計が負の入力の合計に等しくなったときにPWMサイクルを終了します。
  • 電流帰還回路もDC電流情報を加算し、ループのQ係数を最適化します。
  • PWMロジックは、クロックおよびループコンパレータの出力に従ってPWM信号を生成します。

従来のPCMと内部補償型ACMの比較

表1に、従来のピーク電流モードと内部補償型ACMの比較を示しています。

従来のピークCMC

内部補償型ACM

電流センス

・スイッチング周波数がMHz単位のアプリケーションでは、150ns以内のハイサイドFET電流センスが難しい。
・DCRセンシングには追加のピンが必要。

・ローサイドFETから簡単にDC電流情報をセンス。

スロープ補償

・パラメータの変動(インダクタ、Vout、Fsw)により、スロープ補償の設計/最適化が難しい。通常は、より幅広い範囲のアプリケーションに対応するため、大きめのスロープを設計し、ループ応答が遅くなる。

・内部ランプの下降スロープが既知であるため、スロープ補償はランプの下降スロープの半分になるよう最適化される。

ノイズ耐性

・実際の電流リップルおよび電流センシング回路に直接関係する。

・ランプ振幅は、十分なノイズ・マージンと低ジッタを実現するよう調整可能。

補償

・電流リップルおよびDC電流情報に直接関係する。
・DCの変化が大きく高速であり、さまざまなシステム仕様の低速な積分器に対処する必要があるときには、外部補償の再設計が必要になる場合がある。

・ランプ振幅とDC値はそれぞれ別々に制御されるため、さまざまなアプリケーションに対して簡単に最適化できる。
・DC電流情報をセンスすることで、内部補償により、非常に低速な積分器も使用可能。

 表1. 従来のピーク電流モードと内部補償型ACMの比較

結論

内部補償型ACM制御は、ランプ・ベースのピーク電流モード制御方式であり、外部補償は使用せずに、内部でランプを生成して真の固定周波数を実現します。ACMは、電圧ループおよびランプ・ループのAC部分とDC部分の両方を個別に最適化することで、従来のピーク電流モードよりも優れた過渡応答を実現します。この制御モードは、予測可能な周波数を必要とするアプリケーションに対して、最適化されたソリューションを外部補償なしで提供します。TIの高性能降圧型コンバータTPS543B20およびTPS543C20には、新しい内部補償型ACM制御が採用されています。これらのコンバータは、25A/40Aおよびスタック機能(TPS543C20のみ)をサポートし、内部補償を備えた使いやすい固定周波数設計でEMIノイズを削減できるほか、完全差動センシングによって最高のVOUT設定点精度を実現します。

詳しくは、TIのスイッチ内蔵降圧型コンバータのポートフォリオをご覧ください。また、TIが提供するさまざまな非絶縁型DC/DCレギュレータ制御モードの概要については、制御モードのクイック・リファレンス・ガイドをご覧ください。

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/powerhouse/archive/2017/05/18/internally-compensated-advanced-peak-current-mode-control

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