電圧帰還アンプは、トランジスタの種類、すなわちバイポーラ、CMOS、JFETのいずれを搭載するかによって分類されることがあります。少数ながら、複数の種類のトランジスタを組み合わせ、各増幅段階でメリットを引き出そうとするアンプもあります。たとえばJFET入力アンプは、JFETを使用した入力差動ペアを搭載し、非常に大きな増幅入力インピーダンスを得た後、ゲインと出力の段階ではバイポーラ・トランジスタを使用します。

JFET入力アンプは、アナログ・フロント・エンド、電流センス・アンプ、ADC(アナログ・デジタル・コンバータ)ドライバ、変換器、フォトダイオード・トランスインピーダンス・アンプのテストや計測、あるいはマルチプレクサを介したマルチチャネル・センサ・インターフェイスとして使用されます。この記事は『OPA 2810』を例に挙げ、上記のようなアプリケーションにJFET入力アンプを使用する利点をご紹介します。『OPA 2810』は、110MHz、27Vで、広い入力差動電圧(VIN,Diff)への耐性を備えたレール・ツー・レールの入力/出力アンプです。

データ取得と電流検出
テスト/計測機器は、アンプをユニティ・ゲイン・バッファとして使用するか非反転ゲイン電圧回路に使用して信号を計測します。機器は、測定値に影響を与えることなく電圧信号を測定する必要があります。これは、JFET入力アンプの高いZ入力と低バイアス電流により可能です。電力分析器やオシロスコープでは、フロントエンドに大きなインピーダンス減衰器があるため、高Z入力アンプの使用がさらに重要となります。

JFET入力とCMOSアンプの入力は、入力差動ペア・トランジスタのゲートと接続されているため、バイアス電流は非常に小さくなります(数ピコアンペア程度)。『OPA 2810』の非常に高い入力インピーダンスと、入力同相電圧範囲における非常に変動の小さい(2pA以下)バイアス電流を可能にするのは、メインのJFET入力段階と2.5Vの正電源内で動作するCMOS補助段階の使用です。電流検出アプリケーションは、シャント抵抗器を流れる電流に起因する電圧低下を測定します。±12Vの電源で動作する『OPA 2810』を示した図1では、入力同相電圧の変化に伴うバイアス電流の変動が非常に小さいため(電源から離れた直線的な動作範囲)、入力信号のスイングによるオフセット電圧の変動が最小限に抑えられ、高い精度の電流検出回路が得られます。

また、テスト/計測機器は、アンプ出力上で入力信号を正確に再現する必要があります。これを可能にするのが、大きな75mAのリニア出力駆動機能を備えた『OPA 2810』の卓越した低歪性能です。機器は通常、ライン電源を使用するため、アンプは24Vより大きい電源電圧で動作する必要があります。

 図1:OPA 2810』の入力同相電圧に伴うバイアス電流の変動

広帯域フォトダイオード・トランスインピーダンス・アプリケーション
広帯域フォトダイオード・トランスインピーダンス回路は、図2のようなアンプを使用し、フォトダイオード電流を電圧に変換します。高速アンプのゲイン・バンド幅積は大きなクローズド・ループ・ゲインの達成に有用ですが、JFET入力アンプの低入力電流ノイズとバイアス電流は、バイアス電流に起因する出力電圧オフセットを軽減しつつ、高~超高トランスインピーダンス・ゲインを使用する回路の出力ノイズ性能を改善します。この回路を安定させるには、帰還コンデンサ(CF)を使用する必要があります。ブログ記事「トランスインピーダンスについて知っておくべきこと:パート1」(英語)に記載された方程式で図2のコンポーネントの値を計算すると、図3のゲイン線図と位相線図が得られます。

 図2:フォオダイオード・トランスインピーダンス・アンプ回路と帰還補償容量

 図3:図2のトランスインピーダンス・アンプのボード線図(ゲイン線図と位相線図)

マルチチャンネル入力のデータ取得システム
高Z入力アンプは、出力インピーダンスの比較的高いセンサーと接続する際に特に有用です。このようなマルチチャンネルのシステムは、通常、マルチプレクサを介してセンサーに接続します。図4aの回路とアンプを使用して各センサーに接続し、マルチプレクサの入力に接続してください。あるいは図4bの回路では、センサーに直接接続したマルチプレクサの出力に高速セトリング・アンプ1個を使用しています。これによりチャンネル切り替え時に大きな信号過渡が生じ、アンプのセトリング性能と最大許容入力差動電圧が重要になってきます。

図4cは、図4bでユニティ・ゲイン・バッファとして構成した『OPA 2810』の非反転入力に8Vの段階を適用したときの出力電圧と入力差動電圧を示しています。

 図4:低速セトリング・アンプを持つマルチチャンネルのセンサー・フロント・エンド (a)。高速セトリング・アンプ1個を使用した『OPA 2810』 (b)、『OPA 2810』を使用した大きな信号過渡反応 (c)

高速の入力過渡により、アンプはスルー制限され、出力が最終値に達し、負の帰還ループが閉じるまで入力が互いの追跡を停止します(図4cで最大VIN,Diffが7V)。定格0.7~1.5V VIN,Diffの標準的なアンプの場合、限流抵抗を直列で使用するとともに、入力ピンで不可逆的な損傷を防ぐ必要があります。これにより、デバイスの周波数応答も制限します。『OPA 2810』は、内蔵の入力クランプにより、VIN,Diffが7Vのアプリケーションにまで対応します。外部抵抗は不要で、デバイスへの損傷や性能仕様の変更はありません。このような入力段階アーキテクチャと高速セトリング性能を備えた『OPA 2810』は、マルチチャンネルのセンサー多重システムに適しています。

ADCドライバ
このようなアプリケーションの多くでは、高速アンプがSAR型またはパイプライン型ADCを駆動します。ADCには入力コンデンサがあり、サンプリング間隔にオンとオフを繰り返すため、アンプを使用してADCの駆動中に入力のロードを防ぐ必要があります。サンプリング・レートが高速の場合、ADC入力はデジタル化が始まる前に0.5LSB以内で高速セトリングする必要があります。これを可能にするのが、大きなゲイン・バンド幅積、結果となるループ・ゲイン、優れたセトリング性能を持つ高速アンプです。図5に示すように、『OPA 2810』は、最終値の0.001%以内、約130ns以内でセトリングします。電源は24V、入力ステップ10V、ユニティ・ゲインです。大きなスルー・レートと高速セトリング性能により、『OPA 2810』アンプを使用すれ��、複数の低周波数信号を入力としてデジタル化することができます。高電圧のJFET入力アンプをADCより大きな電源電圧で使用することにより、ADCの入力ダイナミック・レンジがフルに活用され、信号対雑音+歪み比(SINAD)の改善に役立ちます。

 図5:大きな信号過渡とセトリング反応

したがって『OPA 2810』などのJFET入力アンプは、高いZ入力、卓越した低歪性能、高速セトリング、広い電源範囲により、上記に挙げた各種の高速アプリケーションに利点を提供します。TIの「高Z入力高速アンプ・ファミリ」をご覧になり、ぜひアプリケーションのニーズに最適な製品をお選びください。

参考情報

※すべての商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年6月19日)より翻訳転載されました。
*ご質問はE2E Support Forumにお願い致します。

Anonymous