過酷な環境に耐えられるRS-485トランシーバ設計


RS-485トランシーバは、落雷といった電圧サージ・イベントに通信が影響されうる屋外での運用にも耐えられるほど堅牢でなければなりません。設計のゴールが、設計の単純化や基板面積の削減などであっても、自然の中での利用に対応するできることが前提です。

それでは、設計したRS-485通信が高電圧イベントに耐えられるかどうかはどのように把握したらいいでしょうか。

国際電気標準会議により、エンジニアがシステムのサージ保護レベルを判断できるIEC 61000-4-5サージ規格が規定されています。IEC 61000-4-5規格は、リモート無線ユニットや空調ユニット、インターネット・プロトコル(IP)監視カメラといった、屋外での通信を利用するアプリケーションで非常に重要です。

自然界からのいかなる影響にも耐えられるシステムにするには、この規格を理解することが不可欠です。この記事では、屋外で発生するサージ要因からシステムを保護するさまざまな方法に焦点を当てつつ、スペースと部品数を削減するために設計を最適化する方法も示します。

サージ保護機能の実例

過酷な環境で運用される設計にどのようにRS-485トランシーバが活かされるか、またこれにより外付けのシステム保護部品も不要になることを理解するためのビデオ「RS-485通信向け内蔵サージ保護」(英語)をご覧ください。 

 IEC 61000-4-5サージ・イミュニティ規格とは

落雷や工場でのサージを模擬したIEC 61000-4-5サージ規格は、RS-485トランシーバで実施される最も条件の厳しい試験の1つです。図1に、RS-485に対して一般的に要求される3種類の試験を比較しています。0.5kVサージ(赤線)は、4kV電気的高速過渡(EFT)(紫の線)試験および10kV静電気放電(ESD)(青の線)試験よりも、時間が数十倍長く、ソース・インピーダンスが低いためエネルギーも高くなります。

1:サージ試験とEFT試験およびESD試験との比較 

サージは、屋外の要素に晒されるシステムには共通で必須とされる要件です。IECのサージ試験はトランシーバへの突入電流を模擬しており、表1に示すようにいくつかのレベルのIEC規格クラス基準に分類されます。一般にシステム・レベルの設計では、クラス2(1kV試験)またはクラス3(2kV試験)に適合する必要があります。

クラス

試験レベル

最大ピーク電流(2Ω時)

0

25 V

12.5 A

1

500 V

250 A

2

1 kV

500 A

3

2 kV

1,000 A

4

4 kV

2,000 A

1IEC 61000-4-5のサージ・クラス

サージ・イベントから保護するには、2つの方法があります。1つ目が、RS-485トランシーバと外付けの保護部品をいくつか使用した、複雑なディスクリート・ソリューションによるもの、2つ目が、サージ内蔵RS-485トランシーバによるものです。最初にディスクリート・ソリューションに必要なものを確認し、次に、TIの最新RS-485トランシーバ『THVD1429』(およびより低速な『THVD1419』)を使うとソリューションがどの程度簡略化されるかを見ていきます。

ディスクリートでのサージ実装

電圧を制限しサージ電流を吸収するために、過渡電圧抑制(TVS)ダイオード、金属酸化物バリスタ(MOV)、ガス放電チューブなどの保護デバイスがトランシーバに外付けで実装されることがよくあります。図2に示すのは、標準的なRS-485トランシーバ『SN65HVD3082E』とサージ保護に必要な外付け部品を使用したIEC ESD、EFT、およびサージ保護RS-485のリファレンス・デザインです。

 


2:部品を最大7個追加してRS-485トランシーバをサージ保護するディスクリート・ソリューション

この方法の課題は第1に、部品を追加して設計する必要があることです。第2に、サージ規格に準拠する保護デバイスが非常に少ないことです。つまり、部品の選択が非常に難しく、高価になることもあります。

図2の構成では、MOV(図の⑥と⑦)によって電流をグランドへと分流させることでサージ保護を実現できます。過渡遮断ユニット(TBU)(図の④と⑤)は、トランシーバ方向への電流を制限します。これらの最初の2段を通過する電流は、TVSダイオード(図の③)と電流制限抵抗(R)(図の①と②)でさらに制限されます。図2に示すように、この4段の保護を実装するためには、基板にコンポーネントを7個追加しなければなりません。このため、さらに設計や部品選択が複雑になり、広い基板面積が必要になり、部品表に部品を追加するなど、設計がさらに困難になる場合があります。

サージ保護の統合により設計の複雑さを低減

外付けの保護部品を複数用いた、複雑でコストがかかり占有面積も大きい設計を実装する代わりに、『THVD1429』を用いるとシステムを単純化できます。『THVD1429』は、TVS保護機能を搭載し、2.5kVのサージに耐える堅牢なRS-485トランシーバです。このトランシーバの定格は、外付けの保護部品なしでIEC 61000-4-5のクラス3(2kV)を上回ります。

図3のRS-485通信のシステム・レベル設計をご覧ください。ここでは、図2に示したディスクリート方式の代わりに統合ソリューションを使用しています。このソリューションにより外付け部品のいくつかが不要になるだけでなく、『THVD1429』の業界標準8ピンSOIC(SOIC-8)パッケージのおかげで、既存のトランシーバを素早く簡単に評価しアップグレードすることが可能になります。

3THVD1429またはTHVD14192.5kVサージ保護)を用いた統合ソリューション

2.5kVの統合サージ保護に加えて、このRS-485トランシーバ・ファミリではそれ以外に、8kVの接触放電ESD(IEC 61000-4-2)、4kVのEFT(IEC 61000-4-4)、16kVの人体モデルESDなど、一般的なタイプの保護機能を用意しています。これらのトランシーバのオンチップ保護実装により、デバイスおよび最終機器の堅牢性が著しく向上します。このように、目標とするものが複雑な設計の単純化、設計時間の短縮、基板面積の削減、部品表の簡素化、あるいはサージ保護定格の向上のいずれであっても、確実に大自然での利用に対応した設計になるよう『THVD1429』RS-485トランシーバ・ファミリが支援します。

参考情報

+ 『THVD1429』の詳細なラボデータとジッタ計測に関するアプリケーションノート(英語):"Signal Integrity Versus Data Rate and Cable Length for RS-485 Transceivers."

+ EFTやその他の保護方法に関するブログ(英語):"What is an EFT?"

+ 『THVD1429』やTIのRS-485トランシーバの評価方法

+ ユーザーガイド:"RS-485 Half Duplex EVM User’s Guide"

 

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年3月29日)より翻訳転載されました。
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