I2Cアイソレータに関するよくある6つの質問


I2Cアイソレータを設計に活用する際の課題や疑問を、オンラインの技術質問ページ、TI E2E™コミュニティに多くいただいた質問を基に、絶縁型I2Cデバイスの消費電流や絶縁電力の生成などに関して解説します。実際の設計で、信号と電力を絶縁する際にお役に立てれば幸いです。

1. I2Cの絶縁が必要なのはどのようなときですか?

絶縁は、システム内の2つの部品間で直流電流(DC)と不要な交流電流(AC)の流れを阻止する一方、信号と電力の転送は行います。一般に、絶縁は電子部品や人を危険な電圧や電流のサージから保護します。その中でも、人間の安全のための絶縁を強化絶縁と呼びます。多くのシステムでI2Cが世界標準としてよく使われるようになっており、そのため絶縁型I2Cはほとんどの高電圧市場で普及しています。

一般的な絶縁型I2Cアプリケーションには次のものがあります。

  • ネットワークおよびサーバー電源でのマイコン間の通信
  • 車載バッテリ管理システムや医療システムでのマイコンからA/Dコンバータへの通信
  • PoE(Power over Ethernet)システムでのマイコンから電源機器コントローラへの通信
  • 電流および電力監視システムとのマイコン通信

2. デジタル・アイソレータの片方向チャネルを2つ接続してI2C通信用の双方向チャネルにすることはできますか?

できません。片方向チャネルを2つ逆方向に向かい合わせに接続しても双方向チャネルにはなりません。絶縁型I2Cデバイスをデジタル・アイソレータに置き換えると、デジタル・アイソレータは1つのステートにラッチされ、応答なしになります。デジタル・アイソレータを使って絶縁型I2Cバスを実装するには外付け部品が必要です。標準的なデジタル・アイソレータにより絶縁型I2Cを実装する方法の詳細は、「Analog Design Journal」の「デジタル・アイソレータの使用による強化絶縁型I2Cバス・インターフェイスの設計」(英語)をご覧ください。さらに、このE2Eコミュニティの絶縁フォーラムのスレッドでは、双方向I2Cアプリケーションで外付け部品を使用しないときにデジタル・アイソレータが1つのステートにラッチされる理由といった詳細に踏み込んでいます。

3. 絶縁型I2CデバイスISO1540およびISO1541の消費電流はどれくらいですか?

『ISO154x』データシートの表6.10に、プルアップ抵抗がない場合の『ISO1540』および『ISO1541』の消費電流が示されています。プルアップ抵抗を加えると、抵抗から引き出される電流が追加されます。例えば、デバイスに加えられたプルアップ抵抗がSDA2/SCL2で1kΩ、SDA1/SCL1で10kΩの場合、VCC1 = VCC2 = 5Vの状況で、プルアップ抵抗による消費電流の追加は、SDA1/SCL1で約5mA、SDA2/SCL2で約0.5mAになります。

質問2でも触れた「Analog Design Journal」の記事で述べているように、より低い消費電力が要求される絶縁型I2Cアプリケーションには、『ISO7731』デバイスを超低電力の『ISO7041』に置き換えることができます。『ISO70xx』の消費電力は、『ISO77xx』デバイスよりも1桁優れています。

4. 絶縁型I2CデバイスISO1540およびISO1541に印加できる推奨論理HIGHおよびLOW入力電圧レベルはどのくらいですか?

表1に、『ISO1540』および『ISO1541』デバイスのサイド1およびサイド2入力に対する推奨論理入力電圧レベルを示します。

サイド1

 サイド2

VIL1 < 0.5 V

VIL2 < 0.3*VCC2

VIH1 > 0.7*VCC1

VIH2 > 0.7*VCC2

1:『ISO154x』の入力電圧レベル

これらの入力電圧レベルは、I2Cのデータ信号とクロック信号の両方に適用されます。詳細については、『ISO154x』データシートの表6.3をご覧ください。

5. 双方向I2CアイソレータISO1540およびISO1541のサイド1で論理LOWレベルの出力電圧VOL1が最大0.8Vである理由は何ですか?

絶縁型I2Cデバイスの双方向機能を実現するには、2つの片方向チャネルを向かい合わせに接続して1つの双方向チャネルとなるようにデバイスを設計する必要があります。2つの片方向チャネルを直接向かい合わせに接続すると、ロックアウトの状況となり、チャネルが両方とも"LOW"になります。これを避けるために、サイド1の出力のダイオードによって、サイド1の出力チャネルの"LOW"出力が、サイド1の入力チャネルに対して"HIGH"に見えるようにします。図1に、ダイオードの配置を示します。

 図1:『ISO154x』の簡略回路図

VOL1の電圧が最大0.8Vなのは、このダイオードが理由です。サイド2で"LOW"を確認すると、サイド1は電界効果トランジスタをオンにして、ダイオードが導通できるようにし、ゼロでない順方向電圧を生成します。『ISO154x』デバイスのスレッショルドは、VOLおよびVIL仕様が『ISO154x』データシートの表6.9に示す『ISO154x』デバイスのスレッショルドの範囲内である限り、双方向チャネルがスムーズに機能するように注意して設計されます。この手法は、双方向I2C機能を実現するために業界でよく使われているものです。論理LOWレベルの電圧がゼロでなくても、I2C仕様との互換性が保たれています。

これはVOL1にのみ当てはまることに注意してください。デバイスのサイド2にはダイオードが必要ないためVOL2の最大電圧は0.4Vになりますが、これはほとんどのデジタル・アイソレータで共通です。

6. I2Cアイソレータの絶縁電力はどのように生成しますか?

I2Cアイソレータの絶縁電力を生成する方法はいくつかありますが、ベストなソリューションはそれぞれのアプリケーションのニーズによって異なります。

その1つが、『SN6501』のようなトランス・ドライバを使用する方法です。これは図2で示す通り、トランスおよび2次側にオプションの整流低ドロップアウト(LDO)レギュレータを配した、プッシュプル構成で動作します。『SN6501』は、最大で1.5Wを供給し、絶縁電源を提供することができます。トランスと巻線比により電源に必要な絶縁定格と出力電圧を提供できるため、このデバイスにはほとんどすべてのアプリケーションに使用できるといった柔軟性があります。追加デバイスにも絶縁電源が必要な場合は、『SN6501』の代わりに、出力電力が5Wになる『SN6505』を使用することもできます。『SN6505』にはさらに、過負荷および短絡保護、サーマル・シャットダウン、ソフト・スタート、スルーレート制御などの追加の保護機能が搭載されており、堅牢なソリューションを実現します。

 2ISO1541を使用した信号および電力の絶縁型I2Cソリューション

スペース面で制約のあるアプリケーション向けのもう1つのオプションが、『ISOW78xx』デバイス・ファミリの使用です。これらのデバイスは、16ピンSOIC(スモール・アウトラインIC)パッケージで信号および電力の絶縁伝送を行います。『ISOW7842』を外付け部品と組み合わせることもできます。図3は、双方向データおよび片方向クロックでのシステムのソリューション例です。部品をいくつか追加することで、双方向のデータおよびクロック信号をサポートすることができます。

 図3:ISOW7842を使用した信号および電力の絶縁型I2Cソリューション

それぞれの絶縁電源オプションの利点と欠点について詳しくは、「絶縁型I2Cの信号および電力の絶縁方法」(英語)をご覧ください。

参考情報

技術資料(英語)

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※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年3月13日)より翻訳転載されました。
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