スマート・ホーム・オーディオの設計に関する4つの課題


近年、スマート・ホーム・テクノロジーが急速に拡大し、スマート・スピーカを使用する世帯はますます増えています。家電メーカーも、今やハイファイ・オーディオ出力を求められています。このタイプのオーディオ・テクノロジーは、冷蔵庫が食品リストを読み上げたり、照明スイッチが部屋から出る前に消灯を促したりすることを可能にします。

高度なオーディオ機能の追加はときに困難を伴い、既に制約のある設計をいっそう複雑にします。この記事では、スマート・ホーム・オーディオの設計に関連した4つの問題と、そのプロセスを単純にする方法を説明します。

1. 定義しづらいプロジェクト要件

家電製品にオーディオ機能をつけるプロジェクトは、簡単そうに見えるかもしれませんが、オーディオ出力には数多くの設計上の選択と課題が伴います。一見、すべてがよく似ているように思える多数の選択肢の中から、適切なアンプを選択するのは容易ではありません。

アンプの選択を簡単にするため、TIのインタラクティブなブロック図では、特定のスマート・ホーム・アプリケーション向けの部品を推奨しています。例えば、図1に示したスマート・スピーカのブロック図では、多様なスマート・ホームの設計要件に対応する機能を持ったオーディオ・サブシステムと各種スピーカ・アンプを強調しています。同じページのオーディオ・リファレンス・デザインには、プロジェクトのテンプレートとして使用できる回路図とその関連部品があり、システム・レベルの知識の増強���部品選択の労力軽減に役立ちます。


1:スマート・スピーカのブロック図

設計を始める際に、TIのブロック図は優れた最初のステップとなりますが、スピーカ・アンプの選択は最終的にはプロジェクト要件に左右されます。スマート・ホーム製品で最も一般的な2つの要件は、高い効率性、そしてスリムなデバイス・プロファイルです。

2. エネルギー効率を低下させるオーディオ出力と高度な機能

スマート・ホーム・デバイスに追加機能を加えると電力消費が増えますが、オーディオも例外ではありません。テック企業は環境に配慮するよう努力し、政府は待機電力への規制を強化しているなかで、次世代の製品をより低い消費電力へと最適化することがいっそう重要になっています。効率の悪いオーディオ・システムは、電力を浪費する大きな要因となります。電気代が増え、バッテリ切れが早まり、さらには熱くてデバイスに触れなくなるなど、ユーザーの満足度が低くなります。

 

オーディオにおける電力消費とは、動作中とアイドル状態の2つの側面があります。夏のプレイリストを大音量で鳴らしているBluetooth®スピーカは、一日中バッテリが持つように、音楽を高い効率で再生しなければなりません。一方で、音声コマンドに備え待機中のスマート・ディスプレイは、音を再生していないのであれば、過剰な電力を消費するべきではありません。

 

スマート・ホーム関連のアプリケーションに対応するため、TIの最新のスピーカ・アンプには高度なパワー・マネージメント機能が内蔵されています。独自のハイブリッド変調方式により、12Vを超えるシステムでのアイドル電流損失が最小に抑えられます。電源レールの統合されたクラスH制御は、バッテリ電力システムでの動作時間を50%拡大することが可能です。図2に示すように、クラスHソリューションは電力損失を削減する電源レールへと大きく変化しました。


2:動的な電源レールは固定レールと比べて電力を大きく節約可能

ブーストとクラスH制御を統合したデバイスを使用することで、オーディオ・クリッピングを防ぐサポートをしながら、スペースや全体の部品表コスト、消費電力を節約できます。 12Vを超えるアプリケーションでは、統合されたクラスH制御と外部ブーストを統合したアンプによって、大幅な省電力とクリッピング防止の予測を実現できます。どちらのソリューションも、ホスト・プロセッサの需要を節約し、統合によってソフトウェア開発を削減します。

 

3. オーディオ性能を制限する物理的制約

電子機器は小型化し、スマートでミニマルなデザインになっています。オーディオ用に設計されていない家電ではフォーム・ファクタに制約があるため、アンプ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ブースト・コンバータ、スピーカなどの追加部品を、全体のソリューション・サイズを妥協することなく追加するのは困難です。

TIのオーディオ・チームは、このような制約を念頭に置いて、外付け部品を減らし、オーディオ・サブシステムのフットプリントを最適化するため、より多くの機能を内蔵するアンプの開発に注力してきました。

 

 
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スマート・ホーム・エコシステムの中心であるスマート・スピーカでは、ユーザーを満足させるために高品質の音楽と仮想アシスタントのフィードバックが不可欠です。高品質の出力を実現するオーディオDSPを追加すれば、通常では、コストとプリント基板(PCB)のフットプリントが増加します。TIでは、処理機能を統合したオーディオ・アンプを提供し、スピーカのチューニングを通じて、仮想アシスタントのクリアな応答と豊かな音楽体験の両方を実現できます。さらに、外部エコー・キャンセル・アルゴリズムにより、後処理された信号を利用して、スマート・スピーカがオーディオ出力とユーザーの音声コマンドをより正確に区別できる���うにします。

クラスDスピーカ・アンプの高いスイッチング周波数は電磁干渉(EMI)を発生させ、オーディオ信号に歪みを与えます。これは通常、大きなインダクタを数個使って抑制しますが、スペクトラム拡散位相最適化などの機能により、大きな外付けインダクタを必要とせずにEMIを抑制でき、スペースとコストの両方を節約しながら、非常に歪みの少ないオーディオを出力します。

通常、スピーカの出力電力はその大きさと密接に関係します。大音量には大きなトランスデューサが必要ですが、スペースに制約のある製品の設計時には必ずしも可能ではありません。ビデオ付きドアベルは、スリムなプロファイルを維持しつつ、騒がしい環境の中でも居住者の音声を大きくクリアに出力しなければなりません。このようなデザインに適合する小型スピーカは低出力であることが多く、過熱や過剰な偏位により損傷を受けやすくなります。しかし、TIのスピーカ保護アルゴリズムのおかげで、小型スピーカは安全に大音量で、これまで以上に高品質な出力を実現できます。 こちらのスマート・アンプA/Bテストで、実際に違いを確認できます。

図3に示したように、TIのスマート・アンプにより、エンジニアはスピーカの能力をフルに活用し、トランスデューサのインテグリティに関して妥協することなく、高い平均電力を出力できます。したがって、騒がしい環境の中でも、出力を増加させることは、ビデオ付ドアベルやスマート・ディスプレイからの音声をより簡単に聞き取ることができるということです。このアプリケーションではクリアなコミュニケーションは非常に重要であり、TIのスマート・アンプを活用した双方向オーディオのリファレンス・デザインは、プロジェクトを成功させるための基盤を築くのに役立ちます。


3:スピーカ保護アンプにより、従来のアンプの2倍の音量をスピーカに損傷を与えずに出力可能

音量のほかにも、熱消散も設計で考慮しなければならない大事な点です。小さなフォーム・ファクタでは放熱が良好でなく、小型化し続けるスマート・ホーム製品では問題をもたらします。熱は内蔵部品に損傷を与え、ユーザー・エクスペリエンスを悪化させ、適切に管理しないと発火につながるおそれもあります。熱エネルギーを念頭に置いた設計とは、PCBのレイアウトと銅箔の厚さの考慮や、熱した場合にスピーカ・アンプがオーディオ信号のゲインをその場で調整して温度を下げるサーマル・フォールバックのような機能の実装を意味します。最初から熱管理を考慮することで、安全かつ信頼性の高い製品を設計できます。

4. オーディオ・アンプの高度なテクノロジーと機能は深い専門知識が必要な上に、実装が困難

高度な機能は多くの問題を解決し理屈の上では素晴らしく思えますが、実装が非常に困難です。TIでは、次世代製品の設計を簡素化するため、アンプに各種機能を内蔵しただけでなく、無償のソフトウェア・ツールを使って簡単に制御できるようにしました。

PurePath™ Console 3ソフトウェア・スイートは、このようなデバイスの取り扱いを簡単にする、使いやすいグラフィカル・ユーザ・インターフェースです。。このソフトウェアを使用することで、エンジニアはオーディオ出力のチューニング、設定の較正、スピーカの特性評価を迅速に行えます。トレーニング・リソースのライブラリと同じく、着実なチューニング、特性評価ウィザードにより、新しいツールの習得に関連した学習曲線はより低くなります。

このソフトウェアはTIのさまざまなオーディオEVMと互換性を持ち、将来の新しいデバイスを使用したプロジェクトでも同じソフトウェア・スイートを利用できます。

パワー・マネージメント、スピーカ保護、およびオーディオ・イコライゼーションが、TIのオーディオ・デバイスに統合され、PurePath Consoleソフトウェアにより簡単に構成できます。このため、追加のソフトウェア開発作業はほとんど不要で、ユーザーの満足度を向上させる電力効率の高いハイファイ・オーディオ・サブシステムを、プロジェクト・タイムライン全体へのリスクをほぼ与えることなく作成できます。

参考情報

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※TI E2EはTexas Instrumentsの商標です。すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年5月9日)より翻訳転載されました。
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