FPD-Link IIIで統合型デジタル・コックピットマルチ・ディスプレイを制御する3つの方法


自動車メーカーが差別化を図る方法の1つに、最新インフォテインメント・システムの搭載があります。いくつかの高級モデルにはディスプレイ・パネルが10から15もあり、複雑な処理や機能が備わっています。その対極としてエントリーモデルでは、運転手用にベーシックなCID(センター・インフォメーション・ディスプレイ)とデジタル計器クラスタを用意した、最小限のデジタル・インフォテインメント・システムがあります。ただし、エントリーモデルでも、複合デジタル・プロセッサにより、費用対効果が高く、設置スペースをコンパクトにマルチ・ディスプレイを制御できるフル機能インフォテインメント・システムを提供しようとする動きも強くなっています。これらの要求に対応するための方法として、FPD-Link III製品ファミリを使用した、シングル・プロセッサによるマルチ・ディスプレイの制御を3つ解説します。

中央処理と分散処理

1台のCIDにはさまざまな種類の動画コンテンツが表示されます。例えば、車がバックしているときのリア・カメラの映像や、走行中はオーディオ・プレーヤーのコンテンツやカーナビのGPSまたはマップです。

同じCID画面をヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)のタッチスクリーンとして使って、AM/FMラジオを操作したり、電話をかけたり、車の診断テストの情報を表示することもあります。センサ・モジュール、テレマティクス制御ユニット、または診断モジュールから収集したデータは、運転手が見て簡単に理解できるように、処理をかけてCIDに表示する必要があります。異なる種類の情報を処理してデータを表示する最も簡単な方法は、複数のプロセッサを使用して複数のディスプレイ画面を制御することです。マルチ・プロセッサの使用は当然のことに思えますが、次のような2つの重大な問題が生じます。

  • 2台のプロセッサに対応するためにソフトウェア開発が複雑化すると同時に、マルチ・プロセッサからの情報出力を状況的に同期させて、(時間帯や道路標識の有無などの)周囲の状況に情報表示が適合できるようにする必要がある
  • コストや設置スペースが大幅に増加。大型のヘッド・ユニットをサポートするマルチ・プロセッサは、消費電力の増加に伴い発熱も相応に増大することにつながる

このような短所があるため、自動車メーカーは、より中央集中処理的なアーキテクチャを採用するようになっています。このようなアーキテクチャでは、さまざまなモジュールからデータを取り込み、複数の入力や複数のインターフェイスからデータを出力してマルチ・ディスプレイを制御できる、シングル・プロセッサを使用します。中央処理アプリケーションのシングル・プロセッサには他にも利点があり、例えば車のあちこちに設置されているさまざまなセンサから集められた画像をもとに、車を上から見たイメージを合成するといった、拡張現実ビデオ画像を生成できます。

ヘッド・ユニットのシングル・プロセッサでマルチ・ディスプレイを制御

シングル・プロセッサでマルチ・ディスプレイを制御するには何が必要になるでしょうか。車載処理ユニットは、ユニットが接続するディスプレイ・パネルから物理的に離れた場所にあります。このように複雑なうえに、ディスプレイ・パネルへの電気的インターフェイスと、プロセッサからの電気的出力インターフェイスとが、まったく異なっていることもあります。

そこで、TIのFPD-Linkインターフェイス・デバイスの出番です。このシリアライザ/デシリアライザ(SerDes)は、プロセッサの出力インターフェイスとディスプレイの入力インターフェイスとをブリッジすることで、シームレスな接続を行います。ブリッジ接続に加えて、これらのデバイスは、プロセッサからシングル・ワイヤまたはデュアルペア・ワイヤに出力されるさまざまなプロトコルのデータを集約できます。さらに、ディスプレイ・パネルから車載処理ユニットに送られるタッチ制御データのような同時データ転送用のバックチャネルもあります。

FPD-Link IIIシリアライザである『DS90UB941AS-Q1』は、ディスプレイ・シリアル・インターフェイス(DSI)をシングル/デュアルで使用してプロセッサに接続できます。FPD-Link IIIデシリアライザと組み合わせて使用すると、OpenLDIやRGBインターフェイスなどのディスプレイ・インターフェイスとDSIとの間のブリッジになります。

複数DSIの使用

この方法では、プロセッサはDSIポートを2つ使って、2つの異なるビデオ・ストリームを2画面に表示します。『DS90UB941AS-Q1』は、独立した2つのDSIポートを使用できます。そのため、これらのデバイスの1つを使用した場合、プロセッサは2つの異なる720pビデオ・ストリームを、2画面(例えばCIDとクラスタ)に表示することができます。図1に示すように、このデバイスは、このモードのときには独立した2つのDSIストリームに対応し、独立した2つのシリアライザのように働きます。

 

1:独立した2つのDSIを使用して2画面に表示

バーチャル・チャネル機能の使用

この方法では、1つのDSIポートで『DS90UB941AS-Q1』に接続し、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)のDSIバーチャル・チャネル・ベースの分割機能を使用します。DS90UB941AS-Q1は、DSIバーチャル・チャネルIDをもとに画像を分割できます。図2に示すように、このモードのときは、1つのDSI入力に、バーチャル・チャネルIDで明示された2つの異なるビデオ・ストリームが含まれます。

 

2DSIバーチャル・チャネル・ベースのビデオ分割機能を使用して2画面に表示

スーパーフレーム・サポート機能の使用

この方法では、プロセッサは1つのDSIポートを使用し、2つの異なるビデオ・ストリームを2画面に表示します。この方法は、スーパーフレーム・サポートと対称/非対称分割という、『DS90UB941AS-Q1』の2つの強力な機能を利用します。

スーパーフレームは、名前から分かるように、複数のビデオ・ストリームがある決まった方法で結合されてできています。図3は、非対称スーパーフレームの一例です。

3:スーパーフレーム・ベースの非対称ビデオ分割により2画面に表示

外付けプロセッサSoCにより複数のビデオ・ストリームを組み合わせて生成されたスーパーフレームは、1つのビデオ・ストリームとして『DS90UB941AS-Q1』に渡されます。このデバイスは、このような混合ビデオ・ストリームを処理し、ビデオ・ストリームを非対称に分割して、各ビデオ・ストリームを2つの異なる画面に表示することができます。

偶数と奇数のピクセルを交互に組み合わせても、スーパーフレームを生成できます。『DS90UB941AS-Q1』は、この混合ビデオ・ストリームを処理し、奇数と偶数のビデオ・ストリームを対称的に分割して、それぞれのビデオ・ストリームを2つの異なる画面に表示することができます。図4に示すのは、『DS90UB948-Q1』の対称ビデオ分割処理です。ここでは、『DS90UB948-Q1』はデシリアライザの役割を果たします。


4:スーパーフレーム・ベースの対称ビデオ分割により2画面に表示 

シングル・プロセッサを使ってマルチ・ディスプレイ・パネルにインターフェイス接続する方法を理解すれば、次世代車載インフォテインメント・システムを構築する際に、複雑さを抑え、コストを削減するために役立つでしょう。スーパーフレームと対称/非対称分割機能について詳しくは、アプリケーション・レポートの「『DS90UB941AS-Q1』を使用するスプリッタ・モードの動作」(英語)をご覧ください。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2019年10月2日)より翻訳転載されました。
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