妥協することなくリゾルバの性能を高める方法


電気自動車の主要部分であるモーター制御には、通常、永久磁石型ACモーター(PMAC)か誘導モーターが使われます。どちらのタイプにも利点があると同時にトレードオフが存在します。

PMACモーターには、リゾルバかエンコーダを使用します。リゾルバは、メカニカルな動きを、回転角度の絶対位置に関する電子情報に変換します。リゾルバは、1次巻線と2つの2次巻線で構成されます。固定子側の2次巻線は互いに90°の角度になるように配置され、1次巻線は回転子側に配置されています。可変磁気抵抗などの別のタイプでは、3つの巻線がすべて固定子側に配置されます。

1次巻線に励起電流が印加されると、サイン/コサインの2次巻線から、同じ周波数信号が90°位相をずらして出力されます。2つの2次巻線の振幅を使うことで、固定子に対するシャフトの正確な位置を算出できます。

図1は、『ALM2402F-Q1』を用いたリゾルバ・ベースの回路の例です。

1ALM2402F-Q1を使用するリゾルバ・ベースの回路 

高精度の測定の鍵となる仕様

リゾルバの性能は、選択する部品で大きく変わります。リゾルバの1次巻線の入力は低インピーダンスであるため(100Ωの低さ)、1次巻線で高電圧を生成するには通常、高電流を出力できる励起ドライバが必要です。これは、ディスクリート・ソリューションを使って実現できます。そのためには、要件の駆動電流を200mA以上に増強できるオペアンプとバイポーラ接合型トランジスタを選びます。

表1に、リゾルバ・ベースのアプリケーションでの標準要件を示します。

パラメータ

説明

標準範囲

入力電圧

リゾルバの1次巻線R1/R2の入力電圧

3VRMS~7VRMS

入力周波数

リゾルバの1次巻線R1/R2に印加される励起信号周波数

1kHz~20kHz

変圧比

リゾルバの1次巻線と2次巻線の比率

0.2V/V~1.0V/V

入力インピーダンス

リゾルバの入力インピーダンス(抵抗、インダクタンス)

30Ω、80mH

位相シフト

リゾルバの励起信号と2次巻線からのサイン/コサイン信号の間の位相シフト

±25度

ポール・ペア

機械的な1回転あたりのサイン/コサイン出力サイクルの数

1~3

電源電圧

アナログ・フロント・エンドの電源電圧

12V~26V

精度

出力される角度値の精度

0.1度以下の誤差

分解能

16ビット

温度

システム温度

-40°C~125°C

振幅

望ましいサイン/コサイン振幅

3.3Vp-p

減衰

リゾルバの電圧減衰

0.4Vp-p

1:リゾルバ・ベースの測定での標準パラメータ

1次巻線の駆動に適したデバイスを選ぶ際に重要なことの1つが、スルーによる歪みを避けるために励起アンプのスルー・レートを最小限に抑えることです。式1は、減衰に対するサイン/コサイン振幅の比として励起電圧を計算します。

(3.3/0.4) = 8.25 Vp-p    (1)

式2は、歪みを避けるための最小スルー・レートを表します。

SR = 2*π*Vp*f = [(2*6.28*(8.25/2)*20000)]/1E6    (2)

式2から0.52V/μsが求まります。

図2に示すのは、励起アンプで要求される最小スルー・レートです。

2:周波数に対する、励起アンプに必要な最小スルー・レート

リゾルバをベースとした測定手法

リゾルバによく使われる手法は2つあります。マイコンによるソフトウェア・ベースのリゾルバ/デジタル・コンバータ(RDC)と、集積回路RDCです。マイコンは、サイン波に変調されるパルス幅変調(PWM)信号を生成します。次に、アクティブ・ローパス・フィルタがPWMのキャリア周波数を除去して、システムに無用な高調波を排除し、1次回路用の励起周波数成分のみを残します。アクティブ・ハイパス・フィルタは、DCオフセットを除去します。

フィルタを通った信号には、高出力電流アンプを使った調整が必要です。これも、『OPA2197』などの低ノイズ・オペアンプをBJTトランジスタと組み合わせるディスクリート・ソリューションか、または『ALM2402F』デュアル・オペアンプのような統合型デュアル・パワーアンプで実現できます。『ALM2402F』は、大電流出力(400mA)だけでなく、サーマル・シャットダウンや電流制限機能、組み込みの過熱異常フラグも備えています。

関係するもう一方の領域は、3つの差動アンプで構成される、前述した回路のアナログ・フロント・エンド部分です。1つ目のアンプは、励起アンプの出力をモニタして、(マイコンを通して)ローパス・フィルタにより生じる位相遅れを検知したり、励起アンプにより生じた可能性がある異常状態を検出したりします。残りの2つのアンプは、リゾルバの2次巻線��ら出力されたサイン信号とコサイン信号をバッファするのに使われます。この例を図3に示します。この図は、リゾルバ・ベースのアプリケーションの標準的なアナログ・フロント・エンドを表しています。

3:標準的なリゾルバ・フロント・エンド

良好な差動アンプを設計する鍵となるのが、ゲイン制御に使われる外付け抵抗の整合です。『OPA2197-Q1』といったディスクリートのオペアンプはDC性能が良好ですが(低い入力オフセット電圧とドリフト)、同相モード除去は抵抗の整合に依存することになります。2つの抵抗が0.005%の整合だと、86dBが得られます。

安全性要求レベル(ASIL)要件

リゾルバ回路を設計するうえでもう1つ重要な点は、機能安全規格を守る必要があるということです。多くの分野にわたっていくつかの規格が存在しますが、車載ハードウェアのエンジニアに必要なのは、ISO(国際標準化機構)26262で規定された安全性要件に準拠して、安全性要求レベル(ASIL)のAからDに対応することです。ASILは、電動パワー・ステアリング、変速ギア・ボックス、ブレーキ・システム、先進運転支援システムのようなアプリケーションの設計に極めて重要な部分です。機能安全規格に準拠するポイントは、故障した場合のリスクの軽減です。モーター制御システムで故障が発生すると、回路の機能安全に関わる部分が異常状態を検出し、所定の手順に従って問題に対処します。安全回路を実装する方法の1つが、リゾルバ内の回路の励起部分に部品を2つ使用して冗長化することです。一方は『ALM2402F-Q1』のような統合型にして、もう一方は『OPA2197-Q1』のようなディスクリート構成にします。

リゾルバは耐環境性と耐高温性に優れ、高精度の測定ができるため、近年よく使われるようになっています。ただし、電子部品の選択には特別な注意が必要です。電子部品は通常、リゾルバそのものから離れた場所に配置されるため、目的の性能を得るにはノイズ耐性や同相信号除去比が非常に重要となります。

『ALM2402F-Q1』『OPA2197-Q1』を含め、TIの高精度アンプは、入力段の中に電磁干渉(EMI)フィルタを内蔵し、不要な無線電波干渉の影響を最小限に抑えます。詳細については、以下のリソースをご覧ください。


参考情報

+アプリケーションノート(英語)“EMI-Hardened Operational Amplifiers Reduce Inaccuracies

+リファレンス・デザイン「C2000TMマイクロコントローラ搭載、精度 ±0.1° のディスクリート・リゾルバ・フロントエンドのリファレンス・デザイン

+サーボ・ドライブ位置フィードバックの詳細はこちら

※C2000は、Texas Instruments Incorporatedの商標です。その他、すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらの技術記事(2019年11月27日)より翻訳転載されました。
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