イーサネット設計を簡素化する 第1部:イーサネットPHYの基本と選択プロセス


100BASE-T1、1000BASE-T、100BASE-TX、10BASE-T、10BASE-Teなど、イーサネットPHYの用語に不慣れな人にとって、いくつもある規格を見比べるのは大変でしょう。他にも下記のようなたくさんの疑問があることでしょう。

・MII(Media Independent Interface)とは?
・車載PHYと産業用PHYとの違いは?
・インターネット・プロトコル・カメラ、テレマティクス制御ユニット、プログラマブル・ロジック・コントローラに最適なPHYを選択するためには、どうすればいいのか?
・すべてのPHYが、さまざまのフィールド・バス要件を満たしているのか?

この「イーサネット設計を簡素化する」技術記事シリーズの第1部では、読者が最終アプリケーションに合ったPHYを選ぶことができるように、イーサネットPHYの基本を取り上げます。また、スムーズなPHY選択に便利なTIのPHY選択フローチャートも紹介します。

 

イーサネットPHYとは

基本的なイーサネットPHYとは実は非常に単純で、図1のように、デバイスとデバイスを物理的に接続する、PHYトランシーバ(トランスミッタとレシーバ)のことです。物理的には、銅線(家庭で使われる青いCAT5ケーブルなど)または光ファイバー・ケーブルを使って接続します。

図1:イーサネットのシステム図

もともとインターネットは、大学と大学の間で、高い信頼性で安全かつ簡単にデータをやり取りできるネットワークという概念でしたが、その結果として、イーサネットによるネットワーク通信が誕生しました。後にIEEE(米国電気電子学会)が、イーサネットを基盤に速さ(データ伝送速度)、物理媒体(ケーブル素材)、PHY機能を新たに追加して拡張を行い、コンピュータ同士のネットワークをはるかに越えてイーサネットを展開することが可能になりました。

イーサネットPHYの機能

イーサネットPHYの機能は主に2つあります。

1つ目の機能として、PHYには、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、MCU(マイクロコントローラ)、CPU(中央処理装置)などといった、デバイスのMAC(メディア・アクセス・コントローラ)と直接インターフェイスするデジタル領域があります。PHYには、送受信方向に制御ラインとクロック・ラインの両方を持つ4ビット幅のデータ・バスであるMIIが、さまざまな形で備えられています。MIIは、MACとPHYの速度に応じて形式がすべて異なり、ピン数もさまざまです。表1に、最も一般的なMIIの種類と、選択の際に考慮すべき利点と欠点を大まかにまとめました。

インターフェイス

ピン

(ピン数)

対応速度

(Mbps)

利点

欠点

MII

RX_D[3:0], RX_CLK, RX_DV, CRS, COL TX_D[3:0], TX_CLK, TX_EN

(14)

10, 100

共通ピンアウト、低速、配線が単純、レイテンシが最小

1Gbps対応なし、ピン数が多い

Reduced MII (RMII)

RX_D[1:0], CRS_DV, TX_D[1:0], TX_EN

(6)

10, 100

ピン数を削減

劣った決定論的レイテンシ(ファーストイン/ファーストアウトのため)、1Gbps対応なし

Gigabit MII (GMII)

RX_D[7:0], GRX_CLK, RX_CTRL, TX_D[7:0], GTX_CLK, TX_CTRL

(20)

10, 100, 1000

1Gbps対応、低レイテンシ

ピン数が多い、一般にサポートされていない

Reduced Gigabit MII (RGMII)

RX_D[3:0], RX_CLK, RX_CTRL, TX_D[3:0], TX_CLK, TX_CTRL

(12)

10, 100, 1000

1Gbps対応、共通ピンアウト

配線が困難、電磁気互換性(EMC)に劣る

Serial Gigabit MII (SGMII)

SO_P, SO_M, SI_P, SI_M

(4)

10, 100, 1000

1Gbps対応、共通ピンアウト、優れたEMC性能、配線が簡単

ICが高コスト

1:ピン数と対応速度による一般的なMIIの一覧

もう1つの機能として、PHYには、あるデバイス(FPGA、MCU、CPU)を物理メディアを介して別デバイスと接続するMDI(Medium Dependent Interface)があります。時間によって連続的に変化する信号のため、一般にこれはPHYのアナログ領域と呼ばれます。

MDIをベースにシステムに合ったイーサネットPHYを選択

ここまでPHYの機能を見てきたので、その知識を使ってシステムに合ったPHYを探しましょう。ほとんどの半導体ICメーカーが、自社のPHYについて次のような仕様と機能を提示しています。

  • データ伝送速度(10Mbps、100Mbps、1Gbps)
  • 対応インターフェイス(MII、RMII、GMII、RGMII、SGMII)
  • 対応媒体(BASE-T、BASE-Te、BASE-TX、BASE-T1)

この情報を念頭に入れて、まずリストのデータ伝送速度から目を通し、最終アプリケーションに必要なデータ伝送速度と比較するとよいでしょう。次に、アプリケーションで一般的に使用する規格を決定します。例えば、2015年以降、車載用イーサネットは大幅に拡大され、今では半導体メーカーから普通に提供されるようになっています。このことから、媒体規格を考慮することが非常に重要です。BASE-T1とBASE-Tではまったく異なるからです。

例えば他にも、消費者向け電子機器や大半の産業用アプリケーションでは、PCが対応している10BASE-Te、100BASE-TX、1000BASE-Tを使用します。目的のアプリケーションが車載用の場合は、BASE-T1をサポートするPHYを用いるのが最適です。ただし、車載オンボード診断(OBD)ポートはこのルールの例外です。OBDでは、同じくPC接続対応のために、通常はBASE-TまたはBASE-TXインターフェイスが使われます。表2は、一般的なMDIと、そのMDIがよく使われるシステムの概要です。

MDI

IEEE仕様

(データ伝送速度)

標準的システム

伝送媒体

利点

欠点

10BASE-T/Te

IEEE802.3u

(10 Mbps)

産業用ライティング

CAT5

一般的にサポートされている、

長距離、

低い待機電力

低速

10BASE-T1L

IEEE802.3cg

(10 Mbps)

フィールド・トランスミッタ、スイッチ、暖房・換気・空調のコントローラ、エスカレーター

UTP (Unshielded twisted pair cable), STP (Shielded twisted pair cable)

超長距離、シングル・ペアでの双方向伝送、データ上で結合される電力

低速

100BASE-TX

IEEE802.3u

(100 Mbps)

PLC、IPカメラ、OBDポート

CAT5

一般的にサポートされている、フィールド・バスで使用

高放射、外付け部品

100BASE-T1

IEEE802.3bu

(100 Mbps)

ディスプレイ・クラスタ、ヘッド・ユニット、ゲートウェイ、インフォテインメント、航空通信、ロボティクス、マシン・ビジョン

UTP, STP

低放射、高耐性、シングル・ペア・ケーブルでの双方向伝送

あまり一般的ではない(PC接続未対応)、ケーブル距離が短い

1000BASE-T

IEEE802.3ab

(1 Gbps)

IPカメラ、試験/計測

CAT6

1Gbps速度

ケーブルが高価

1000BASE-T1

IEEE802.3bp

(1 Gbps)

テレマティクス制御ユニット、ゲートウェイ、航空通信、ロボティクス、マシン・ビジョン

UTP, STP

1Gbps速度、シングル・ペア・ケーブルでの双方向伝送

あまり一般的ではない(PC接続未対応)、ケーブル距離が短い

2:よく使用されるMDIの比較表

一般消費者向けと産業用のPHYのほとんどが、複数のデータ伝送速度に対応しています。これらのPHYには、自動ネゴシエーションと呼ばれる仕組みがあります。この仕組みによりPHYがサポートする機能についての情報を交換することで、可能な最高速度でリンクアップできます。

TIのイーサネットPHY選択フローチャート

イーサネットPHYについて得た知識を実践に移せるようになったところで、図2のシンプルなPHY選択フローチャートを使って、目的の設計に合ったTIのデバイスを見つけることができます。このフローチャートで取り上げたデバイスについては、インダストリー4.0対応アプリケーション向けのDP83826E低レイテンシ・イーサネットPHYと、スペースに制約のある車載アプリケーション向けのDP83TC811S-Q1 100BASE-T1イーサネットPHYも含め、TIウェブサイトのイーサネットPHYの概要で詳細をご確認いただけます。

図2:TIのイーサネットPHY選択フローチャート

TIのPHYセレクション・シリーズの2回目にもご期待ください。ノイズ、放射、信号損失を最小限に抑えるためのPHYの回路図キャプチャとレイアウトのベストプラクティスについて考察します。

参考情報

+アプリケーション・レポート“Chinese and English Definitions of Acronyms Related to Ethernet Products

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらの技術記事(2020年3月11日)より翻訳転載されました。
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