現代はエアコンのおかげで、夏真っ盛りの時期でもとても爽やかに過ごせます。ただリモコンのボタンを押すだけで、部屋がたちまち快適な温度になります。その間ずっと、リモコンから遠く離れた場所で、室外機が激しく稼働し続けています。このような高温の中で、信頼性の高い長距離接続が行われるのは、魔法のように見えるかもしれません。これは、比較的ありふれた通信規格の1つであるRS-485のおかげです。


4ワイヤから2線式ワイヤへ

電力線通信用のOOK変調を備えた『THVD8000』 RS-485トランシーバは、既存の電力線にデータを変調します。この機能により、電力供給とデータ通信が共通のワイヤを共有するため、システムコストを大幅に削減できます。

 

RS-485は、家庭用および業務用のHVAC(暖房、換気、空調)システムや、ファクトリ・オートメーション、グリッド・インフラストラクチャ、家電製品、モーター・ドライブ設計などでも一般的に使用される差動信号規格です。これらのアプリケーションではときおり、マスタ・ノードとリモート・ノード間の長距離にわたって、RS-485信号と電力を同じケーブルで伝送する必要があります。従来のRS-485システムでは、少なくとも4本のワイヤを使って信号と電力を一緒に伝送します。差動RS-485信号用に2本、電力とグランド用に2本です。この長いケーブルの重量とコストは、システムの複雑さと設置コストの上昇につながります。また、複数のワイヤを使うことで、誤って接続された場合のシステム障害のリスクも生じるため、さらにシステムが複雑化します。

幸いなことに現在、4線式ソリューションは、RS-485インターフェイス設計時の唯一のオプションではなくなりました。  『THVD8000』などのOOK(オン/オフ・キーイング)変調を備えたRS-485トランシーバは、電力線通信に対応し、結果的にワイヤの数を4本から2本に減らしながら、システムの性能を高め、全体的なコストを削減します。『THVD8000』は、変調回路と復調回路を内蔵することでこれらのメリットを実現し、バスI/O保護によってIEC ESD 61000-4-2の接触放電およびIEC 61000-4-4の高速過渡バースト試験に合格します。

変調回路と復調回路の内蔵により、『THVD8000』は送信するベースバンド・データの周波数成分を増やすことができます。それにより、DCおよびAC結合が容易になり、特別なエンコードの必要なしに、(RS-485で一般に使用される)標準UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)へのシステム側インターフェイスを構成できるため、低データレート・アプリケーションに有用です。図1に示すように、RS-485信号を変調することで、システムは変調された信号を電力線経由で伝送できるため、必要なワイヤが1対だけで済みます。広いキャリア周波数範囲を選択することで、通信距離は1km以上に及びます。このアップグレードされたアプローチは、DCとACの両方の電力で機能し、マイコンでの特別なコーディングは必要ありません。

図1:『THVD8000』を使用した電力線経由のRS-485通信

図2に示すように、OOK変調によって、低レベルの入力信号をキャリア周波数で変調することが可能になります。

図2:OOK変調

信号は振幅で検出されるため、OOK変調は図3に示すように無極性モードで動作します。RS-485のAおよびBの入出力(I/O)ポートを入れ替えても通信には影響せず、無極性モードには手動またはソフトウェアによる設定は必要ありません。この機能によって設置手順が大幅に単純化され、AおよびB I/Oの誤接続によるリスクもなくなるため、システムの性能を向上できます。

図3:無極性モードでの『THVD8000

今度エアコンを使うときには、RS-485トランシーバがコントロール・ユニットにコマンドを送信しながら、部屋を涼しくするため働いていることを思い出してください。  『THVD8000』のような2線式ソリューションでは、これらの通信をずっと単純化し、システムのコストも削減したうえで、外の気温が40℃に迫ろうかというときでもエアコンから快適な空気が供給されるのです。

 

参考情報(英語)

+技術記事 “Frequently asked questions and answers for RS-485 transceivers.”
+トレーニング・ビデオ “Interface Solutions for Industrial Applications.”
+ アプリケーション・レポート“THVD8000 Design Guid

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年6月12日)より翻訳転載されました。
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