4つのバイタルサイン(生命兆候:呼吸、体温、血圧、脈拍)のうち、個人個人や測定のタイミングによるばらつきが最も少ないのが体温です。私たちは皆、平熱は37℃(98.6°F)だと教えられてきました。これが平均値であることは多くの人が理解していますが、集団に対する平均だと思っているでしょう。これが時間平均でもあると言うと、ほとんどの人が驚きます。私たちの体温は、身体活動、サーカディアン・リズム、ホルモン変動、体重、年齢によっても、常に変動しているのです。最近の出来事により、ウェアラブル体温センサへの関心が急速に高まっています。ユーザーが病気または感染症にかかったかもしれないことを直ちに知らせてくれるこの体温計のおかげで、感染症がそれ以上広まらないように自主隔離する余裕ができるからです。ウェアラブル体温センサによって初めて、ユーザーの体温サイクルに関する重要な知見も得られるようになったので、個人個人の正常状態に合わせてカスタマイズするようなアルゴリズムが可能になり、微熱(38oC / 100.4oF)の閾値に達する前に、病気の兆候かもしれない変化を察知できます。


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ウェアラブル技術に進む前に、重要なことなので、37℃(98.6°F)の基準がどのようにしてできたのかを理解しましょう。初めて提唱されたのは1851年で、ドイツ人医師カール・ラインホルト・アウグスト・ヴンダーリッヒが、25,000人の患者の脇下体温を何度も測定して解析しました。前述したような変動をすべて考慮したうえで、健康な成人の平熱は36.2℃~37.5℃の範囲であると提唱しました。これは、現在でも事実上の標準とされています。    

しかし、スタンフォード大学の最近の研究では、今も37℃が平熱として妥当な値かどうかに疑問を投げかけています。スタンフォード大学の研究グループが1860年までさかのぼって記録を解析したところ、平均体温は10年ごとに0.03℃ずつ、一貫して下がり続けていることが判明しました(性別、年齢、身長、体重などの因子の調整後)。なので確かに…親世代よりクールであると正式に認められたわけです。

このような変動すべてを含めて、その意味するところを考えてみましょう。80歳の男性を例にします。高齢のため、36.2℃(97.1°F)の体温でもまったく正常です。朝6時に起きて、体温を測ります。サーカディアン・リズムのため、深部体温が0.5℃(0.9°F)低下して、体温は35.6℃(96.2°F)になっているかもしれません。この男性の場合、2.4℃(4.2°F)と大幅に体温が上昇しないと、標準的な微熱(38℃ / 100.4°F)の閾値に達しません。医者であれば、もっと低い閾値を用いるべきだとわかるでしょうが、もしこの男性が、高体温や低体温になる甲状腺疾患も抱えていたとしたら、さらにややこしい事態になるでしょう。

ウェアラブル体温センサを利用すれば、自己の状態が定量化されて視���的に表現されるようにな���ので、体温センサから得られるデータを絶え間なく追跡することによる新しい時代のオーダーメイド医療が始まり、感染やホルモン・バランスの乱れや病気の可能性の指標となる、正常とされる範囲からの逸脱をいち早く察知できるようになるかもしれません。

TIの『TMP117温度センサ』・ファミリのような技術の進歩により、個人向けまたは医療現場向けに、コンパクトで正確な低消費電力ウェアラブル機器が実現しつつあります。医療アプリケーションに特化して作られた温度センサ『TMP117M』は、30℃~45℃で±0.1℃の精度があり、患者用電子体温計に対する米国試験材料協会(ASTM)のE1112と欧州規格の80601規定を完全にカバーしています。1mm×1.5mmのパッケージで供給される『TMP117M』センサは、熱質量が小さいため熱応答時間が短くなり、ユーザーがより快適に使用できるコンパクトな工業デザインになります。ユーザー体験をさらに高めるのが、7µW未満の最小消費電力です。これによりバッテリを小型化できるので、快適さとコストを最適化できます。図1の設計は、ウェアラブル体温モニタリング・アプリケーション向けに考えられる小型フォーム・ファクタの実例です。

1Bluetooth®対応の温度モニタリング・パッチの設計

Bluetooth® Low Energyのような通信オプションにより、ウェアラブル体温センサの実力が最大限に引き出されます。子供を持つ親としては、子供が病気になると40℃(104°F)以上の発熱になることも珍しくないため、解熱剤の効き目が切れそうなことを察知したセンサから、危険なレベルの高熱になる前にスマートフォンで通知を受け取れたら、非常に安心できます。同じBluetooth対応温度ソリューションを医療現場向けに移植することでも、大きなメリットが得られるでしょう。患者は病室の患者モニタに縛られることなく、より自由に動き回れます。また、手作業で検温を行う看護スタッフの負担が軽減されます。あるいは、混みあった待合室で優先すべき患者をより的確に選択できるようになるでしょう。

ウェアラブル設計を推し進めるために、『TMP117』とBluetooth Low Energyワイヤレス・マイコン『CC2640R2F』を使用したBluetooth対応、高精度皮膚温度測定向け、フレキシブルPCBパッチのリファレンス・デザインをぜひチェックしてください。このリファレンス・デザインでは、フレキシブル基板上にアンテナを内蔵してユーザーの使用感を高めるウェアラブル温度モニタリング・パッチの構築方法をご確認いただけます。

参考情報:
+関連記事(英語)”Decreasing human body temperature in the United States since the Industrial Revolution
+関連記事(英語)”Is Older Colder or Colder Older? The Association of Age With Body Temperature in 18,630 Individuals
+トレーニングビデオ ”Connect: BLE wearable patch demo

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年6月29日)より翻訳転載されました。 
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