この記事では、デバイス選定が簡単になるように、デジタル・アイソレータを選択する際の主な判断基準を見ていきます。

車載用や産業用のアプリケーションにデジタル・アイソレータがますます使われるようになる中、膨大な候補の中からシステムに最も適したデバイスを選択するのは骨の折れる仕事です。それだけでなく、ほとんどのデジタル・アイソレータは特定のシステム要件やアプリケーションを念頭に作られているので、選んだデバイスがシステムの要件と合っているかを確認するために、仕様や機能に延々と目を通すことになります。

しかし、「正しい」デバイスを見つけることが必ずしも複雑というわけではありません。必要な判断基準を順番に見ていきましょう。

ステップ1:絶縁仕様要件を理解する

最初のステップは、システムの絶縁仕様要件を理解することです。要件を挙げるときりがないように思えるかもしれませんが、まず始めに、一般的な絶縁設計に関連した以下のような要件を考えましょう。

  • 絶縁耐圧(VISO

設計には3,000VRMS 以下の基本絶縁で十分なのか、あるいは5,000VRMS以上が必要なのかを判断します。規格の要件によりこの仕様が決まる場合もよくあります。この仕様は、アイソレータが少なくとも60秒間破壊されずに対処できる電圧を表します。

  • 動作電圧(VIOWM

製品の耐用年数の間、絶縁バリアが耐えるべき定常的な電圧がどれくらいかを判断します。パッケージのサイズ、汚損度、材料グループといった要素は、部品の動作電圧に影響する場合があります。

  • サージ定格絶縁電圧(VIOSM

設計に強化絶縁が必要かどうかを判断します。もしそうなら、10kVを超えるサージ・パルスに耐えられるアイソレータが必要になります。

  • 沿面距離と空間距離

沿面距離と空���距離は4mmで十分なのか、システム標準で8mmもしくはそれ以上が必要なのかを判断します。この仕様は、アイソレータのパッケージとリード・フレームによって決まります。 

  • 同相過渡耐性(CMTI)

モータ・ドライブやソーラー・インバータといったノイズが多い環境にシステムが置かれるかどうかを判断します。ノイズが多い環境ではデータ整合性が重要であり、ビット・エラーが生じると危険な短絡事象につながりかねません。そのような環境の場合は、高CMTI定格がデジタル・アイソレータに不可欠です。

  • 消費電力

アプリケーションにとってシステム全体の消費電力が重要かどうかを判断します。例えば、システムは4~20mAのループ駆動なのか、あるいはバッテリ駆動なのか、といったことです。消費電力が重要な場合は、各デバイスのチャネルあたりの電流消費仕様を考慮してください。

  • データ伝送速度

通信インターフェイスに要求されるデータ伝送速度を判断します。例えば、低速の汎用非同期レシーバ・トランスミッタ(UART)を使用するのでしょうか。それとも、100Mbps以上の高速データ・プロトコルを使用するのでしょうか。その場合は、各デバイスの最大データ伝送速度を考慮する必要があるでしょう。

ステップ2:適切なパッケージを選択する

デジタル・アイソレータの仕様要件を絞り込んだら、次のステップは、各種のパッケージを検討することです。絶縁に関しては、パッケージのサイズと特性がデバイスの高電圧性能に直接関係するため、パッケージによって大きく違いが出ます。沿面距離、空間距離、VIOWM、VIOSM、VISOといった前述の要件のいくつかも、パッケージの選択に影響します。沿面距離と空間距離が長い大型のパッケージは、高い絶縁電圧仕様に対応できます。小型のパッケージでもシステムの規格要件に見合う場合は、当然ながらパッケージが小さい方が基板面積とコストの節約に役立ちます。さらに、通信インターフェイスに必要な絶縁チャネルの数も、数が多くなるほどパッケージの種類が限られるため、考慮に入れた方がいいでしょう。

沿面距離と空間距離、ならびに絶縁に与えるその影響について詳しくは、TIプレシジョン・ラボのトレーニング・ビデオ「1.6 TIプレシジョン・ラボ – 絶縁:沿面距離と空間距離とは何か」(英語)をご覧ください。

ステップ3:チャネル数と構成を決める

仕様と要件とパッケージが決まれば、考えるべき選択肢はあと少しです。信号に必要な絶縁チャネル数と、それぞれの信号の方向が決定すると、チャネル数とチャネル構成を決めることができます。さらに、優先的に選ばれるデフォルト出力ステート(フェイルセーフ・ステートとも呼ばれる)を考えておくことで、デジタル・アイソレータの入力チャネルに電源供給がない、またはピンがフローティング状態のときの、出力ピンの事前指定ステート(HighまたはLow)を決めることができます。デフォルトHigh出力とデフォルトLow出力の両方で各種のオプションが利用できる場合があります。

ステップ4:利用できるデバイスを見定める

デジタル・アイソレータについて得た知識を実践に移せるようになったら、図1のシンプルなデジタル・アイソレータ選択フローチャートを使って、目的の設計に合ったデバイスを見つけましょう。図2に従うと、適切なパッケージ・コードが見つかります。図3は、各パッケージの大きさの比較です。


1TIのデジタル・アイソレータの選択フローチャート

  

以下に挙げる製品一覧で、TIのデジタル・アイソレータの選択フローチャートに示したデバイスの詳細をご確認ください。

  • ISO67xxコスト重視のアプリケーション向け、基本絶縁型および強化絶縁型デジタル・アイソレータ
  • ISO77xx基本絶縁型および強化絶縁型デジタル・アイソレータ
  • ISO78xx最高絶縁定格、沿面距離/空間距離が最大の、強化絶縁型デジタル・アイソレータ
  • ISO70xx超低消費電力デジタル・アイソレータ
  • ISO73xx低消費電力、低ジッタのデジタル・アイソレータ
  • ISO76xx高速、150Mbps絶縁 

 2TIのデジタル・アイソレータのパッケージ・タイプの選択フローチャート

 


3:供給中のパッケージの比較

まとめ

デジタル・アイソレータ製品に関しては、多くの選択肢があります。目的のシステムと設計の要件を理解し、この記事の情報を活用すれば、設計に最適なデジタル・アイソレータを選ぶことができるでしょう。「正しい」デバイスを選択することで、システム設計全体が最適化されます。さらには、規格要件に対応しやすくなり、信頼性の高いアプリケーションを予算の範囲内で開発できるようになるでしょう。

参考情報:
+ホワイト・ペーパー(英語):
Enabling high voltage signal isolation quality and reliability
High-voltage reinforced isolation: definitions and test methodologies
デジタル・アイソレーション認証

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年10月21日)より翻訳転載されました。
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