この数年間にわたり、車載システム設計における車載用電子機器の重要性は、ますます大きくなっています。便利な機能や改良されたインフォテインメント設計、運転支援システム、自動運転車の設計の増加については、既に耳にしているのではないでしょうか。車載システムにおける技術革新を加速するためには、すべての新型デバイスを、より小型かつ厳密な設計要件向けに最適化する必要があります。では、これらのアプリケーションに電力を供給する電源ツリーにとって、この状況にはどのような意味があるのでしょうか?

この2部構成のシリーズでは、技術革新によって車載用電子機器の市場がどのように変化したか、またTIが降圧コンバータとLDOを1つのデバイスに統合したことで、一般的な設計上の課題をどのように解決できるか、第1部と第2部の両方にわたって説明します。

ほとんどの車載用電子制御ユニット(ECU)には、システム部品に効率よく電力を供給するために、レギュレーションされたレールが少なくとも2つ必要です。その一方で、2つのレールの電流要件は大きく異なる場合があります。

たとえば、ハプティクス・フィードバック付きの発光ダイオード(LED)ドーム型ライトの場合を考えてみましょう。このシステムには、LEDへの給電用のLEDドライバと、偏心回転質量(ERM)モータを制御するハプティクス・ドライバに電力を供給するため、5Vのレールが必要です。LEDとハプティクス・ドライバは大きな電流を消費する部品であり、約2Aを必要とします。このような負荷があってもシステムの温度を低く保つために必要な高効率を実現できることから、この電流を供給するには降圧コンバータが最適です。車載用ECUの頭脳となるのは、わずか150mAの低い電流で動作する3.3Vマイコン(MCU)です。ECUは車のイグニッション・キーがオフになるとスタンバイ・モードに移行して電力を節約できますが、マイコンは通信とウェイクアップ機能を処理するために、場合によってはアクティブ状態を維持する必要があります。

このようなアプリケーション向けには、低ドロップアウト(LDO)レギュレータという選択肢があります。このレギュレータは、ノイズに敏感なマイクロプロセッサに対してクリーンな電源レールで低電流を供給できる、最もコスト効率の高い部品です。しかし、スタンバイ・モードをサポートするために、LDOは車載バッテリに直接接続する必要があるので、大きな電圧降下が発生します。これが最も効率的なECUへの給電方法ではないとすると、システム全体の電力消費を最適化するためには、他にどのような方法があるのでしょうか?

そこでTPS65320C-Q1を利用すると、このようなシステムにバッテリから直接電力を供給できます。3.6V~36Vの広範なVINに対応しているこのデバイスでは、2つの出力レール(100kHz~2.5MHzのスイッチング周波数を10%の精度でサポートする3.2A降圧コンバータと、280mA LDO)が、両方とも1つの14ピンHTSSOPという小型パッケージに内蔵されています。

LEDドーム型ライトの例では、図1に示すように、降圧コンバータを使用して5Vレールに電力を供給しつつ、3.3Vレールへの給電はLDOが行います。2つのレールを1つのチップ上に統合することで、ソリューション・サイズが非常に小さくなり、システム効率を向上させる機能である、LDO自動ソースも追加されています。降圧コンバータがイネーブルになると、スイッチング・レギュレータの出力からLDOに電力が供給されるので、電圧降下、電力消費、放熱を最小限に抑えることができます。

図1: 車載用ドーム型ライトのブロック図(アクティブ・モード)

図2に示すように、降圧コンバータが非アクティブになると、LDOはアクティブ状態を維持し、そのソースを自動的にバッテリ電圧に切り替えます。これによりマイコンはスタンバイ・モード中もアクティブのままになり、一方でシステムの残りの部分はオフになります。この状態でのLDOからの標準静止電流は35µAを下回ります。

図2: 車載用ドーム型ライトのブロック図(スタンバイ・モード)

同じような例が、インフォテインメント先進運転支援システム(ADAS)ボディ・エレクトロニクスなど、ほぼすべての車載アプリケーションに使用されています。

ここで紹介した例と反対の要件、つまり、5Vレールは100mAで十分なのに対して、3.3Vレールでは2Aが必要というような要件はお持ちですか?その場合は第2部で、広入力電圧の降圧コンバータとLDOの複合電源を使用して、車載システムに電力を供給する方法について説明します。

その他のリソース

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

https://e2e.ti.com/blogs_/b/behind_the_wheel/archive/2016/06/10/using-a-wide-vin-integrated-buck-and-ldo-to-power-your-automotive-system-part-1

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