このブログ記事のパート1 では、EVの補助モータ・システムについて説明しました。これらのほとんどは低電圧で、低レベルから中レベルの消費電流のブラシレス三相DCモータであり、正しい専門知識があれば、機械的なロータ位置を磁気センサなし（センサレス）で制御可能です。これらの三相モータは、DC電源とGNDを3個の並列のレグ（ハーフブリッジ）により切り換える機能を持つ三相インバータで駆動します。モータの各相は各レグの中点につなぎ、直流電源Vdcとグラウンドの間で、相に電流を流せるようにします。
インバータ・システム内で三相モータの各相を駆動する部品は、複数のMOSFETです。図1に示すように、6個のMOSFETをトーテムポール接続し、3個のハーフブリッジ回路で、各相のコイルをDC電圧とグラウンドに切り換えます。
図1: 統合型三相ゲート・ドライバ(DRV 8305) と外付けFET
低電圧MOSFETと異なり、高電圧/高電流のFETはマイコンで直接駆動できません。この種のFETが持つ高いスレッシュホールド電圧と、通常は100pFを超える大きな入力容量のために、FETのゲートを駆動するためには専用のドライブICを使用する必要があります。これをゲート・ドライバと呼びます。1kW三相モータ・システム用等の最新のゲート・ドライバ製品は、システムの総合的な信頼性と性能にとって重要な、多くの機能を集積しています。これらの重要な特長は、保護、設定の容易さ、部品数や基板実装面積の削減、モータ制御性能などがベースとなっています。DRV 8305-Q1 は、これらのそれぞれで、クラス最高の特長を提供します。
MOSFETは三相モータ駆動回路の重要な構成部品であることから、これらの部品の保護は重要です。DRV 8305-Q1 は、外付けFETのVDSとVGSのモニタ機能、オンチップの温度計測、各FETに流れる電流のモニタのための三相電流シャント・アンプ、マイコンのウォッチドッグ、電圧低下や過電圧のモニタのための電源モニタリングや、スマート・ゲート・ドライブによる貫通電流保護などの機能を内蔵し、システム全体の保護機能を複数のレイヤで提供します。スマート・ゲート・ドライブ機能によって、各レベルで高性能を備えるDRV 8305-Q1 は、他のゲート・ドライバ製品との差別化を提供します。この製品は、ハイサイド（高圧側）とローサイド（低圧側）のスイッチで、片方がオフとなってから他方がオンとなるまでの最小期間（デッドタイム）をユーザーが設定可能であるほか、dv/dt導通を防止する強力なプルダウンを実装したことで、3レベルのMOSFETのクロス・コンダクションや貫通電流に対する保護を提供します。スマート・ゲート・ドライブの詳細に関しては、アプリケーション・ノート “TIのモータ用ゲート・ドライバ製品のIDRIVEとTDRIVEについて”（英文）をご覧ください。DRV 8305-Q1は保護機能のほかに、代表的なBOM（部品リスト）に見られる多くのデバイスや材料が不要になる、複数の高性能の機能を集積しています。その一つはSPI（シリアル・ペリフェラル・インターフェイス）経由で設定と診断のための通信が可能であることです。故障が発生した場合、上に述べた故障メカニズムの一つ一つがSPIポートにレポートされます。また、SPIポートは多くの機能のプログラムや設定のためにも使用できます。重要な機能の一つに、ゲート・ドライブ電流の設定があり、MOSFETの各ゲートの抵抗が不要です。ゲート・ドライブ電流は、最小10mAから最大1.25Aまで設定可能で、最適なゲート・ドライブとEMI性能を達成できます。他の重要なプログラマブルの機能には、電流センス・アンプのゲイン、バイアスやブランキングタイムがあります。
最後に、DRV 8305-Q1 は、各制御アルゴリズムや、単純な台形波から正弦波FOCまでの手法に役立つことから、モータ性能の向上も提供します。このことは、1チャネル、3チャネルまたは6チャネルのPWM（パルス幅変調）オプションと高性能電流シャント・アンプによって可能となります。FOCに役立てるためには、それぞれの電流シャント・アンプは各相のレグの高速、かつ高精度の計測が可能でなければなりません。DRV 8305-Q1 はSPIポート経由での電流センス・アンプの較正機能を提供し、オフセット電圧に由来する誤差を最小限にします。EVやモータ制御の詳細については、以下のリンクのページをご覧ください。
- EVデバイスの詳細
- モータ搭載製品の開発をDelfino F2837xマイコン製品で開始
- モータ搭載製品の開発をPiccolo F2807xマイコン製品で開始
- EVデバイスのモータ制御のホワイトペーパー（英文）をダウンロード
- バッテリーからのDC/DC変換の詳細
- EVに関するブログ記事を参照
上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。
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