CO2排出量の削減には電化がもっとも有効な方法であるとわかっていますが、図1に示すように、車内の電圧が高くなるにつれ、監視および保護のサブシステムの重要性も増していきます。このシステムの進歩により、ハイブリッド電気自動車/電気自動車(HEV/EV)を短期間に開発できるようになるとともに、走行時間を最大限に延ばし、利用者の安全を維持できるようになってきました。バッテリ管理システムトラクション・インバータ・システムの監視と保護について、8つのよく寄せられる疑問を見ていきましょう。 

 図1:ハイブリッド車から電気自動車への段階

1. HEV/EVの走行距離や走行時間を延ばすために、どうすればエネルギー密度とシステム効率を高めることができますか?
サイズを変えずに電力出力を2倍にすると、大幅なコスト削減になり、高速充電にも効果があります。これを実現するには、パワー・コンバータ(OBCまたは高速DCチャージャーのPFC段とDCDC)を高速なスイッチング周波数で動作させます。これにより磁気回路が縮小されるため、高い電力密度が得られます。システム効率が向上することは、アプリケーションにおける損失が減少し、ヒートシンク・ソリューションも小型になることを意味します。デバイスにかかる熱ストレスも軽減され、推定寿命の延長に貢献します。

2. どうすれば内燃エンジン搭載の車と同じユーザー体験をHEV/EVでも実現できるでしょうか?
ユーザーの運転体験を高めるには、1回の充電で走行可能な距離を延ばし、同時に充電時間を短縮することです。この目標のためには、最先端のバッテリ管理システムと高性能のパワー・エレクトロニクスが、車とグリッド・インフラ側(充電ステーション)の両方に必要です。

求めるバッテリ管理システム向けのリファレンス・デザインや製品を簡単に探せます

 詳しくはこちら

3. どうすればHEV/EVのバッテリ管理システムの信頼性が向上しますか?
『BQ79606A-Q1』は、次のような機能を用いて信頼性を強化するよう設計されています。

  • 最高でASIL(Automotive Safety Integrity Level:安全性要求レベル)-Dの電圧モニタ、温度モニタ、および通信機能
  • オプションのデイジーチェーン・リング型アーキテクチャにより、通信ケーブルが破損した場合でもスタック通信を保証
  • 堅牢なホットプラグ性能を可能にする設計 

4. 車載機器の設計において、低温環境での利用時にリチウムイオン・バッテリ・パックの放電性能が低下する問題はどうすれば解決できるでしょうか?
ハイブリッド車や電気自動車のバッテリ・パックは、管理された温度範囲内で動作することにより、低温時の充電/放電を最適化し、高温時でもバッテリを安全動作領域内に維持できます。適切な熱管理戦略をとるためには、セルやパックのレベルで電圧と温度を正確に感知できることが必要ですが、『BQ79606A-Q1』にはその機能が備わっています。これには、低温でのスタートの際に予熱をしたり、高温の場合には当然冷却したりといったことも伴うかもしれません。

5. BMSシステムを監視する1つの方法は何ですか?
デイジー・チェーン構成の、スケーラブルな車載ハイブリッド車/電気自動車向け、6s(6個の直列)~96sリチウムイオン・セル監視デモのリファレンス・デザインでは、『BQ79606A-Q1』を実装し、3~300個の直列で、12Vから最大1.2kVのリチウムイオン・バッテリ・パックによる高精度で信頼性の高いシステム設計を構築しています。この設計は、6個から96個の直列セルまでスケーラブルなセル監視回路で、バッテリの電圧と温度を通知してASIL-Dの要件を満たせるようにします。

TIのリソースを利用するとトラクション・インバータの設計が簡潔になります

 詳しくはこちら

6. トラクション・インバータに炭化ケイ素(SiC)あるいは窒化ガリウム(GaN)の車内用デバイスを使用するメリットは何ですか?
SiC電力回路の新たな進歩により、トラクション・インバータ、オンボード充電器、高速DC充電ステーションなどの、より高効率で軽量化された、スマートなEVパワートレイン・システムを設計できるようになっています。新しい『UCC21710-Q1』および『UCC21732-Q1』などのデバイスは、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)やSiC FET(電界効果トランジスタ)用にセンシング機能を内蔵する初めての絶縁ゲート・ドライバです。システムの信頼性を大幅に高めることが可能になり、高速な感知時間により過電流イベントから保護すると同時に安全なシステム・シャットダウンを保証します。

7. トラクション・インバータのオーバーヒートを防ぐことは可能でしょうか?
占有面積が小さく低電力かつ高精度の温度センサ『TMP235-Q1』は、トラクション・インバータ・システムが急激な温度上昇に反応して適正な熱管理手法を適用するのに役立ちます。トラクション・インバータを設計する際の温度監視について詳しくは、eブックの「温度監視と保護」をお読みください。

8. HEV/EV車のトラクション・インバータ・システムの信頼性に温度センサが不可欠な理由は何ですか?
熱管理は、電気自動車の性能を保証するとともに利用者の安全性を担保するために不可欠な要素です。この新しい移動手段が内燃エンジンの車と比べても安全であることを消費者に理解してもらうためにも、車載機器OEM(Original Equipment Manufacturer)では熱管理を優先順位の上位に置いています。

精度が高ければ高いほど、急激な温度上昇の際に、システムが適切な熱管理技術を利用して素早く反応できる可能性も高くなるからです。

より短期間で、スマートな設計
国際エネルギー機関によると、路上を走る電気自動車の数は2021年までに3倍になると予想されています。そうなると最先端の監視および保護機能もよりいっそう求められるでしょう。

参考情報

※TI E2EはTexas Instrumentsの商標です。すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2019年5月22日)より翻訳転載されました。
※ご質問はE2E Support Forumにお願い致します。

Anonymous