半導体技術が変える車載照明のロードマップ


アダプティブ・ヘッドライト・システム | リア・ライトのアニメーション | パーソナライズされた車内照明 | カスタマイズされた明るいパドル・ライト | 透明ウィンドウ・ディスプレイ

車載照明は、驚くべき速さで進化し続けています。LED光源により、効率の改善と独自な車体デザインが可能になってきており、OEMは斬新かつ有用なライティング用途の実現に取り組んでいます。この技術記事では、ヘッドライト、リア・ライト、車内照明システムのロードマップに影響を与えている半導体技術のいくつかに注目したいと思います。

アダプティブ・ヘッドライト・システム

アダプティブ・フロント・ライト・システム(AFS)とアダプティブ・ドライビング・ビーム・ヘッドライト・システム(ADB)は、それぞれロービームとハイビームの形状を調整する技術です。アダプティブ・ヘッドライトはヨーロッパの車には取り付けることができるものの、米国の自動車メーカーがこの先進的ライトを使用することは許されませんが、それも近いうちに変わるでしょう。これらのアダプティブ・システムは光源に高出力LEDを使用するため、求める明るさになるよう電流を調整する高出力LEDドライバが必要です。高い効率を達成するためにスイッチングLEDドライバを使用し、熱管理に���応した2段の電力処理トポロジとして実装する必要があります。

1段目の昇圧型電圧レギュレータは、変動が大きい車載入力電圧を管理し、中間の定電圧レールを生成します。2段目の降圧型電流レギュレータは、動的なLED負荷に適した低い出力容量で実装されます。しかし、LEDドライバはスイッチング・レギュレータとして実装されるため、電磁環境適合性(EMC)の問題に取り組む必要が出てきます。

LEDドライバおよびマトリクス・マネージャの機能とオプション

ヘッドライト・システムの進歩の速さを考えると、設計の柔軟性が非常に重要です。アダプティブ・システムでは、ヘッドライトの1段目の昇圧型定電圧レギュレータとして、新しいデュアル・チャネル、2相LEDコントローラ『TPS92682-Q1』を使用できます。スタティック・ヘッドライトを設計している場合は、このデバイスを昇降圧/昇圧/SEPICの定電流LEDドライバとして構成できます。『TPS92682-Q1』にはプログラム可能なスペクトラム拡散変調機能もあるので、EMC要件にも簡単に対応することができます。

2段目の降圧型電流レギュレータには、別のデバイスである『TPS92520-Q1』を使用します。SPIを備え、最大2.2MHzのスイッチング周波数で動作するこのモノリシック、デュアル同期整流降圧、定電流LEDドライバにより、小型のソリューションで高い電力密度が得られます。『TPS92520-Q1』がもたらす高いレベルでの一体化と電力密度に加えて、その制御アーキテクチャにより真の平均電流レギュレーションが得られ、動的負荷やマトリクスの負荷に適合します。

『TPS92682-Q1』と『TPS92520-Q1』は、どのヘッドライト・システムでも見られるヘッドライトの電子制御ユニット(ECU)の原動力になりますが、ヘッドライトのビーム形状を調整する役目を担うのは、マトリクス・マネージャICです。マトリクス・マネージャは、ヘッドライトのピクセル・ボードに搭載され、ここで各ピクセルの輝度を精密に調整してさまざまなビーム・パターンを作り出し、対向車に眩しくならないようにしながら視野全体を照らします。

1:アダプティブ・ヘッドライト・システム

 

LEDのピクセル・ボードは一般的にワイヤ・ハーネスによりECUに配線されるため、堅牢な通信とハーネスのサイズの削減が課題になります。『TPS9266X-Q1』には、堅牢でありながら軽量な通信インターフェイスと、ピクセル単位のLED故障を検出してECUに直接通知する診断機能一式が用意されています。


ヘッドライトECUのリファレンス・デザイン 

アダプティブ・ヘッドライト向けの完全な120Wマトリクス互換ECUを可能にするTIの2種類の新型LEDドライバはこちら

DLP®テクノロジの機能とオプション

TIのDLPテクノロジをベースとするヘッドライトは、高解像度でヘッドライトのビーム形状を調節できるだけでなく、運転手を補助するシンボル投影を行うこともできます。シンボルを通して、運転手とだけでなく、路上にいる他の車ともやり取りが可能になります。例えば、車の進路をヘッドライトで路上に描くレーン・マーキングは、運転手に対しては危険箇所が多い運転状況のときに車をナビゲートして運転を支援し、他の人や車には車がどの方向に向かうかを知らせることもできます。ヘッドライト・アプリケーションに最適化された『DLP5531-Q1』チップセットは、車載認定を受け、現在、路上で使用されています。DLP車載ヘッドライトのリファレンス・デザインをぜひご覧ください。

モーターの機能とオプション

ライトのビームを変化させる別の方法は、ヘッドライトのレベリング(高さ調整)です。この機能では、道路の傾斜や車両が加速中/減速中であるかに関係なく、ライトが路面を照らします。ヘッドライトが路面を向いていることで、夜間走行のときに特に視認性が高まり、運転の安全性が向上します。ヘッドライト・レベリングの制御には、一般にバイポーラ・ステッピング・モーターが使われます。ステッピング・モーター・ドライバ『DRV8889-Q1』には、モーターを駆動する電力段だけでなく、余分なセンサが不要な停止検出機能も備えています。 ステッピング・モーター・ドライバのリファレンス・デザインは、回路図の例と『DRV8889-Q1』 のレイアウト、EMCの結果が含まれています。

通信技術を使用する照明制御モジュールが拡大を続けていますが、TIのポートフォリオには『TCAN1044-Q1』などのCAN(Controller Area Network)トランシーバ、『TLIN1029-Q1』などのLIN(Local Interconnect Network)トランシーバ、『TCAN4550-Q1』やTLIN14415-Q1などのシステム・ベース・チップ(SBC)といった豊富な選択肢が、車載照明アプリケーション向けに用意されています。

リア・ライトのアニメーション

LED光源がブレーキ・ライトや方向指示器などのリア・ライト信号に採用されることが一般的になっていますが、その機能には今やアニメーションやパーソナライズされた照明メッセージさえも含まれています。

スタティック・ライト

車載テール・ランプ向け、デュアル・ステージ(SEPIC + リニア)スタティックLEDドライバ・モジュールのリファレンス・デザインはデュアル・ステージのLEDドライバであり、『LM5155-Q1』をSEPICトポロジ構成で使用して1段目の電圧レギュレータを実装しています。この昇降圧トポロジにより、低いバッテリ電圧で照明を操作できるとともに、高いバッテリ電圧では熱管理の観点から2段目のLEDドライバに最適になるよう降圧制御します。

アニメーション照明

TIの新しい12チャネル・ハイサイドLEDドライバ『TPS929120-Q1』は、アニメーション照明アプリケーション向けに設計されました。このデバイスは、ピクセルを個別に制御できる、TI独自のインターフェイスであるFlexWireを利用します。FlexWireは、自動ボー・レート検出を備えたUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)使用のインターフェイスであるため、システムは多数のLEDを個別に調光することができます。包括的な診断機能とフェイルセーフ・モードで、すべてのLEDランプの信頼性を保証します。


デジタル・インターフェイスLED駆動モジュールのリファレンス・デザイン 

テール・ランプ向け車載デジタル・インターフェイス LED 駆動のリファレンス・デザイン

 

『TPS929120-Q1』には、12ビット・パルス幅変調(PWM)調光機能が含まれ、オフボードに対応するため、図1のような車幅いっぱいに広がることがあるテール・ランプの設置に適しています。デジタル・インターフェイスLED駆動モジュールのリファレンス・デザインで示すように、『TPS929120-Q1』は、通信の堅牢性の向上を目的としてCANまたはLIN通信トランシーバでのインターフェイス接続が可能です。

2:車幅いっぱいに延びるテール・ランプ

リア・ライトのその他のトレンド

リア・ライトは、デザインと個性が組み合わさった新しい信号照明になってきています。その1例である「流れるウィンカー」では、方向指示器のLEDライトが、一度に点灯するのではなく順番に点灯することで、まるで光が流れているように見えます。他のトレンドとしては、リア・ライトを使って運転手へのウェルカム・メッセージを表示したり、後続車の運転手に警告メッセージを表示したりするなどがあります。

パーソナライズされた車内照明

照明は車内においても変化しています。このような変化の1つが、ウェルカム・メッセージなどのパーソナル・メッセージを表示したり、光線を調整して特定のゾーン(例えば走行中の助手席)を指定して照らしたりするために、多数のLEDアレイを活用することです。

24チャネル、赤緑青LEDドライバ『TLC6C5724-Q1』には、各チャネルを個別に制御するという、ゾーン指定アプリケーションには不可欠な機能があります。ゾーン指定のドーム型ライトやRGBライトなどのパーソナライズされた車内照明には、このLEDドライバと『LMR33630-Q1』または『LMR36015』などのフロントエンドの降圧コンバータの組み合わせが適しています。『LMR33630-Q1』は入力電圧36V/出力電流3A、一方で『LMR36015』は最大接合部温度150°C、入力電圧60V/出力電流1.5Aのデバイスです。EMC試験済みの車内照明向けピクセル構成ドーム・ライトのリファレンス・デザインに示すように、フロントエンドの降圧レギュレータによりソリューションの熱特性が向上します。

カスタマイズされた明るいパドル・ライト

地面への投影は「パドル・ライト」や「ライト・カーペット」と呼ばれることがありますが、その当初の目的は、車体近くを照らして運転手の乗車を助けることでした。次世代のパドル・ライトは、DLPテクノロジを使ったダイナミックな地面投影になるでしょう。投影場所を動的に変えられるだけでなく、何を投影するかも動的に変更できます。この機能を使うと、運転手が車に乗る前に情報を伝えたり、車の周辺に警報を発したりすることが可能なほか、自動車メーカーにとってはブランド価値を高めるチャンスにもなります。ロゴなどの動きのないシンボルを投影するスタティック・パドル・ライト搭載の車は、すでに市販されています。

透明ウィンドウ・ディスプレイ

ライドシェアがますます拡大する中で、利用者に対してシェアリング関連のメッセージを表示するシステムの必要性が存在します。それに加えて、自動運転車への移行の流れからも、車が他の車や歩行者と意思疎通する方法が求められてきています。

このようなメッセージを表示できる場所の1つに、車の窓があります。DLPテクノロジを使えば、停車中は窓に情報を投影し、走行中は窓を透明にしておくことができます。このタイプのDLPプロジェクターは、特殊なスクリーン・テクノロジと組み合わせて窓に広告表示をすることも可能で、自動車OEMにとっては非常に期待が持てます。

透明ウィンドウ・ディスプレイを可能にするスクリーン・テクノロジにはいくつもの種類があり、その多くで、スクリーンに照射するDLPプロジェクターがうまく調和します。このようなテクノロジの1つに車の窓内部に埋め込む発光性蛍光体フィルムがあり、これはDLPプロジェクター内部の405nmの光で励起します。TIでは、405nmベースの光源をサポートする『DLP3034-Q1と『DLP5534-Q1を用意しています。

まとめ

車全体に張り巡らされた照明システムは、斬新で刺激的な機能をもたらします。TIの半導体製品により、これらの機能を簡単に設計することが可能になります。各種リファレンス・デザインは設計の良い出発点となるほか、開発期間の短縮にもつながります。

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。

※上記の記事はこちらの技術記事(2019年10月24日)より翻訳転載されました。