ドライバーレス・カーに不可欠となる透明ウィンドウ・ディスプレイ


現在は、ドライバーは他のドライバーや歩行者に、ライトを使って合図したり手振りをしたりするなどのさまざまな方法で意図を伝えています。しかし、車からドライバーがいなくなったらどうなるのでしょうか。

自動運転車が現実化しつつあるということは、車に関する大事な情報を他のドライバーや歩行者に伝えるために使っている合図を、車と人間がやり取りしやすいように拡張する必要があることを意味します。ドライバーレス・カーには情報や意図を伝えるためのより効果的な方法が必要となり、ディスプレイ・テクノロジーが車とその周辺との間に不可欠なインターフェイスとなっていきます。

現在の車には多種多様なディスプレイがありますが、車の周辺の世界とやり取りをする目的で設計されている、またはその機能があるものはほとんどありません。しかし、透明なウィンドウ・ディスプレイならその課題に対応できるでしょう。 自動運転車と同じ道路を走るドライバーならびに歩行者や自転車に乗った人がその意図を理解できるようにするために、透明ウィンドウ・ディスプレイ・テクノロジーで車の機能を強化することには、いくつかの理由があります。

あらゆるところに信号あり

交通関係の信号や合図には長い歴史があり、最初は手振りや木製の立て札でした。都市中心部の発展に合わせるように、大量の車、バス、歩行者、自転車をうまくさばくための信号機も急増しましたが、車やバス、歩行者、自転車にはすべて「対話」が必要です。しかし、ドライバー同士やドライバーと歩行者のやり取りについてはどうでしょうか。

ほぼ1世紀かけて、車の合図方式は手信号から照明方式のものに進歩してきました。方向指示器も、現在のドライバーが持つ表現方法の一例です。方向指示器が点滅しているときのドライバーの意図は誰でも理解できます。

今のところ、合図を出すにはドライバーが手動で方向指示器をオンにしなければいけませんが、最先端の車には先進運転支援システム(ADAS)の一部としてセンサを搭載することが増えてきたため、目的の合図を自動的に出す機能が潜在的に備わっており、ドライバーが手動で行う必要がない場合もあります。しかし、現在の車やバスの機能がいくら進化していても、ときにはアイコンタクトや手振りで意思疎通をはかる必要もあり(例えば、道路を横断しようとしている歩行者に手で合図するというように)、ドライバーレス・カーにはそうしたことができません。

自動運転車や公共交通機関の自動車両の出現は、意図を伝えるために車が使用する合図方式を拡張するだけでなく、車両の外面を使って周辺に意図を知らせるようにしなければならないことを意味します。デジタル・ディスプレイを使用すれば、ドライバーレス・カーが歩行者に、例えば「お通りください」といったメッセージを明確に伝えることができるようになるでしょう。しかし、標準的な車のあちらこちらに外部表示器を設置するとなると、車両外側のスペースを占有するだけでなく、車両全体にさらに配線が必要になるなど、今よりもかなり複雑になります。

幸いなことに、すでに車には窓という使える外面がいくつも存在します。意図の表示に窓を利用することが可能なのです。 車載用に認定済みの投影ディスプレイ・テクノロジーと最新の透明フィルムを組み合わせれば、車の窓を使ったさまざまなコミュニケーション方法が可能になります。この新型ディスプレイを使用し、ドライバーや歩行者、自転車搭乗者に向けて窓そのものの上に意図を表示することで、ド���イバーレス・カーが世の中に受け��れられるようになるでしょう。

透明ウィンドウ・ディスプレイ・テクノロジーを取り入れる

車載用に認定済みの透明ディスプレイ・ソリューションには、窓の表面を使って、昼夜に関係なく他のドライバーや歩行者の目に見える具体的な画像や文字(「お通りください」など)を表示することで、ドライバーレス・カーで生じるコミュニケーションの課題に対応できる大きなポテンシャルがあります。

車の窓を使って重要な情報を表示するには、図1のように、小型の車載グレードのプロジェクターを設置し、サイド・ウィンドウ、リア・ウィンドウ、フロント・ガラスに情報を表示します。窓の層に透明フィルム材を組み込むことで、ドライバー、自転車搭乗者、歩行者に対する情報を表示できるようになります。

1:プロジェクター方式の透明ウィンドウ・ディスプレイの構成図

プロジェクター方式のテクノロジーは、ドライビング体験を拡張するためにすでに利用されています。このテクノロジーにより、フロント・ガラス上に情報を表示して拡張現実(AR)のヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)が強化され、ドライバーは路上から目を離さずに窓上の重要な情報を確認できます。

光学方式のこの同じテクノロジーを使用することで、必要なときは既存のウィンドウ設備がディスプレイに変わり、それ以外のときは通常のウィンドウとして完全に機能します。美観的には、スマートな車体はそのままで、電力面でもディスプレイ機器を常時稼働させておくことはありません。

この先の道を照らす

透明ウィンドウ・ディスプレイが活用されそうな用途としては、もちろん、現在の合図方式を強化して他のドライバーや歩行者と情報を共有することが挙げられますが、それ以外にも多くの可能性があります。自動運転車が一般的になる前でも、透明ウィンドウ・ディスプレイは、情報を伝えるとともに現在の信号技術や手振りを補うことができます。

透明ウィンドウ・ディスプレイの初期の導入候補になりそうなのが、タクシー事業です。ウィンドウ・ディスプレイを使って、乗り場がここであることを乗客にわかりやすく知らせることができるでしょう。

バスの場合でも、路線の次の停留所の詳細や、リア・ウィンドウ上の停止サイン点灯など、路上を走る他の車や、停留所で待つ人、乗っている乗客と共有すべき多数の情報を持っています。 透明ウィンドウ・ディスプレイは、気象警戒警報やその他の緊急通知の重要な伝達ルートになる可能性もあります。

バスとタクシーでは、進行方向や意図の情報を共有する以外にも、ダイナミック広告を表示することもできるでしょう。媒体としてウィンドウを利用するダイナミック広告なら、静的な広告に比べて変更が簡単です。これらの次世代広告ディスプレイは簡単に設定を変えられるだけでなく、車のGPSデータを活用して特定のエリアにいる人をターゲットにした広告を表示することで収入源を広げることができます。これは、ライドシェア専用車にも利益があるかもしれません。広告は車内の乗客に対しても表示でき、タクシーやホテルと空港間のシャトルバスの車内で観光情報やインフォテインメントを提供することでさらに収益の道が作られるでしょう。

ロボット・タクシーや自動公共交通機関の実現は、はるか遠い将来のことではありません。ドライバーレス・カーが走り始めるようになると、交通の流れを最適に保ち、安全を維持するために、ドライバー、歩行者、自転車搭乗者の間で意図を伝えあう手段を拡張しなければならなくなります。透明ウィンドウ・ディスプレイは、現在の車を強化し、未来の車ではたとえハンドルを握るドライバーがいなくても意図を伝えられるようにする、堅牢で機器への影響の少ない方法を提供します。

 

著者紹介

Jason Thompson

テキサス・インスツルメンツ

オートモーティブ・ディスプレイ部門 マネージャ

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