車両のADASテクノロジーをより身近なものに


先進運転支援システム(ADAS)の機能は、事故を減らし、多くの人の命を救えることが実証されています。Consumer Reportsの記事によれば、Insurance Institute for Highway Safetyが調査した2017年の統計で、前方衝突警告および自動緊急ブレーキの技術を搭載した車両による追突事故は、それらのシステムを持たない車両と比べて50%少なかったことが示されています。悲しいことに、ほとんどの事故は、最も簡単なADASアプリケーションさえ備えていなかった車両のドライバーに起きています。

ADASは引き続き、自動車技術者協会(SAE)標準で定められたLevel 4およびLevel 5の自動運転車を中心に実装されていますが、より広い範囲の車両に使用できるADASテクノロジーを構築すれば、道路交通に大きなインパクトを与える機会となるでしょう。

すべての車両にADASテクノロジーを搭載するのは経済的に現実味がないとはいえ、できるだけ多くの車両で運転支援機能を利用できるようにすることを目標とすべきです。そのためには、路上のより多くの車両が、高いコスト効率でリアルタイム・データを検知し、処理し、それに基づいて動作できるようにする必要があります。

スマートで多様なセンシングの必要性

これまで、ADASの動作用に収集された画像データの分析は、特徴ベースのコンピュータ・ビジョン・アルゴリズムで処理されてきました。コンピュータ・ビジョンは既に10年以上にわたって業界に貢献してきましたが、ADAS動作がより高度になるにつれて、設計者はドライバーや車両が路上で直面するさまざまな状況に対処し、適応するために、新たなツールを必要としています。

あらゆる状況で一貫したADAS動作を維持することは難しい課題です。突然の悪天候や危険な路面状況のような予期しない事態に対して、車両はリアルタイムで対応する必要があります。これらの状況は事前にコーディングできるものではありませんが、車両が周囲の状況をすばやく検知、解釈して、即時に対応できるようにする動的なシステムを開発することで、自動車はドライバーの副操縦士のような存在となります。そのようなシステムでは、データを取得するだけでなく、コンピュータ・ビジョンと効率的な深層学習ニューラル・ネットワークを組み合わせて、データをリアルタイムで処理する能力が必要となります。

ADASソリューションは、多様なセンサの集まりからデータを抽出し、それを車両の動作を制御するインテリジェンスへと変換する必要があります。最低でも、これらのセンサには各種のカメラ、関連する光学部品、レーダー、および超音波テクノロジーが含まれます。より複雑なケース���は、LiDARやサーマル暗視装置も含まれます。さらに、システムはセンサ・データから抽出された特徴を高精細マップ・データと比較することにより、車両の位置特定を行う場合もあります。このマルチモーダルなセンサ・データの吸収および分析はリアルタイムで(新しいデータを毎秒60回受信)実行される必要がありますが、そのために車両の後部座席をデータセンター・サーバーで置き換えるのは望ましくありません。


Jacinto™プロセッサで自動駐車を強化


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すべてのソリューションを路上対応に

ドライバーが同時に複数の情報を受け取って安全な運転上の判断をすばやく下す必要があるのと同様に、すべてのADASアプリケーションが自動運転のレベルにかかわらず同じことを行う必要があります。電力、熱、部品および統合コストなどの予算を膨れ上がらせることなく同時処理に対応できる、高性能なシステム・オン・チップ(SoC)が強く望まれます。SoCソリューションは、比較的単純なケース(少ないセンサ、低分解能)から最も複雑なケースまで、基本的なADAS機能を損なったりローエンドのシステムを必要としたりせずにスケーリングできます。

車両のラインアップ全体にわたってアプリケーションの性能を満たすことは、要件の1つにすぎません。幅広く展開する際には、これらのシステムを高いコスト効果で開発する必要があります。車両内ではソフトウェアの複雑度が指数的に増加し、既にコードは1憶5千万行にも達しているため、開発コストや保守コストが爆発的に増加しています。システムの状況認識能力が高まるにつれ、安全性要件のレベルも高まることが予想され、これらすべてのシステムが厳密な車載品質および信頼性目標を満たす必要があります。これらは、車載電子機器市場を取り巻く厳しい要求と現実です。

適切なSoCがあれば、これらすべての要求に対応できます。幅広い範囲のアプリケーション要件に対して、メモリ、入出力、プロセッサ・コアのバランスを取ることができるため、システムの部品表に関する目標の達成に役立ちます。また、適切なSoCはオープンなソフトウェア開発方法に対応できるため、結果のコードを再利用したり、開発やテストに注ぎ込んだ労力を別の機会にも活かすことができます。さらにSoCは、機能安全性を必須事項としてゼロから開発することができ、市場で何年にもわたって車両のラインアップを維持するために必要な信頼性と製品寿命も実現できます。より多くの車両に(図1に示すような)堅牢なADAS機能を搭載するというビジョンは、手の届くところまできています。

1ADASアプリケーションの例

TIADASテクノロジーをより身近なものに

TIでは、車載機器および機能安全性に関する長年のノウハウを活かしてJacinto 7プロセッサ・プラットフォームを設計することで、センシング、同時動作、およびシステム・レベルの課題に対処しました。

その際、システム全体に対して何が重要かに焦点を合わせました。車両の周囲の複数方向を監視する優れた各種センシング能力を組み合わせ、自動車中心の設計手法を用いて電力とシステム・コストを最適化しました。

TDA4VMおよびDRA829Vを含む新しいJacinto 7プロセッサ・ファミリは、機能安全性に関わる主要な機能をオンチップで統合することにより、安全性に必須の機能とそれ以外の機能の両方を1つのデバイスで実現します。また、高速の車載インターフェイスを組み込むことで、データ管理も向上します。Jacinto 7プロセッサは、車載ADASおよびゲートウェイ・システムに実世界の性能を組み込み、システム・コストを削減することで、ADASテクノロジーをより身近にし、利用しやすくするのに役立っています。

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年1月7日)より翻訳転載されました。
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