クロック・ジェネレータを使用した車載アプリケーション用eAVBブリッジングの最適化


車載ヘッド・ユニットなどの車載インフォテインメント・システムで最大の成長分野の1つとなっているのが高品質オーディオです。特にオーディオ/ビデオ・ブリッジング(AVB)に注目が集まっています。この記事では、クロック供給ソリューションを通じてeAVBを最適化することにより、車内での高速データ転送を実現する方法について説明します。

Ethernet AVBeAVB)規格

AVBの実装は、IEEE(米国電気電子学会)が定める802.1AS、802.1Qat、802.1Qav、802.1BA、802.1Q、1722という6つの規格によって定義されています。これらの規格は以下に挙げるような機能に対応しているので、他のプロトコルでは保証できないレベルの低レイテンシで、イーサネットを介してオーディオ/ビデオ・コンテンツをリアルタイムに転送するシステムの設計に役立つほか、広帯域幅オーディオ/ビデオ・データをイーサネット・ネットワーク上で時間同期させて転送することも可能になります。

  • 高ネットワーク・トラフィックに起因するパケット損失の防止
  • パケット集中の防止と、レイテンシを制限したパケット配信
  • グローバル・クロックへの時間同期によるマスタ・クロックとのアライメントの確保
  • 時間を考慮したパケットの生成

eAVBでの同期

車載システムにおけるAVBの実装には、以下のものが含まれている必要があります。

  • 共通時間参照。これにより、複数のイベントを同時にトリガできるようになります。
  • メディア・ドメイン内のすべてのメディア・クロックの同期。これにより、指定されたストリームを処理するアナログ/デジタル・コンバータとデジタル/アナログ・コンバータのサンプリング・レートを正確に一致させることができるようになります。

メディア・ドメインの同期を最適化するには、出力周波数調整をサポートし、ステップ・サイズが1ppmに満たない小型の超低消費電力プログラマブル・クロック・ジェネレータ、『CDCE6214-Q1』などの、周波数マージニング機能を備えたクロック供給ソリューションが必要です。

図1に示すような代表的なAVBネットワークは、主に3つの要素で構成されています。

  • AVブリッジ:IEEE 802.1BAに準拠するリレー・デバイス

1:代表的なAVBネットワークの例

  • 終端局(図2を参照):トーカー、リスナー、またはその両方。トーカーは、ストリームの送信元、トランスミッタ、またはプロデューサとなる終端局です。リスナーは、ストリームの送信先、レシーバ、またはコンシューマとなる終端局です。

2AVB終端局のブロック図 - トーカーとリスナー

  • ローカル・エリア・ネットワーク(LAN:ブリッジ、トーカー、リスナー用の相互接続

eAVBでの同期用クロック(ジェネレータ)

同じドメイン内のすべてのメディア・クロックの周波数が同期されている限り、メディア・クロックをリファレンスに固定する必要はないので、メディア・クロック源にはシンプルなフリーランニングのローカル発振器を使用できます。メディア・クロック信号はローカル・タイムスタンプ・ジェネレータに供給され、一定数のクロック立ち上がりエッジごとにタイムスタンプが生成されます。これらのタイムスタンプは、ローカル時間基準に基づいて生成されます。その後は図3に示すウォール・クロックにより、ローカル時間ベースのタイムスタンプがgPTP(汎用高精度時間制御)タイムスタンプに変換されます。さらに、AVTP(オーディオ/ビデオ転送トーカー)によって固定オフセットが追加され、プレゼンテーション・タイムスタンプが生成されます。

AVTPのプレゼンテーション時間は、指定されたメディア・サンプルやイベントが各リスナー内の時間依存のアプリケーションに転送されるときのgPTP時間を表しています。そのため、ネットワーク上の位置に関係なく複数のリスナーで同時にデータを出力することが可能です。AVTPは、ストリームのデータをいつ処理(つまり再生)するのかをリスナーに伝えるために使用されるほか、ストリームのメディア・クロックを回復させる際にも使用されます。

3AVBトーカーの概略ブロック図

図4は、プレゼンテーション時間を使用してストリームのメディア・クロックを回復させる方法を示しています。

4AVBリスナーの概略ブロック図

図4は、トーカーによって生成された受信ストリームからリスナーがプレゼンテーション・タイムスタンプを抽出し、送信元のメディア・クロックを回復させる仕組みを示しています。2つのプレゼンテーション・タイムスタンプ間の時間差を中間のサンプル数で割ることにより、gPTP時間ベースで送信元のソース・メディア・クロックの推定値を求めることができます。この計算と適切なフィルタリング手法の適用を継続的に行えば、送信元のメディア・クロック周期の正確な測定値が得られます。

同様に、ローカル・メディア・クロック・ジェネレータの出力にローカル時間ベースでタイムスタンプを付与し、それをgPTP時間ベースに変換すれば、その周期を正確に測定できます。2つのクロック周期の比較後、メディア・クロック回復モジュールから、クロック・ジェネレータの出力周波数を徐々に増減させるコマンドが継続的に生成され、それによってローカル・メディア・クロックが送信元のメディア・クロックに同期します。

結論

高ネットワーク・トラフィックに起因するパケットの損失、集中、レイテンシを防止するには、eAVBの実装に共通時間参照のための同期を含めることが重要です。ドライバーや同乗者がますます長い時間を車内で過ごすようになり、より高速のデータ転送が求められるなかで、メディア・クロックの生成と同期を両方とも最適化するのに役立つのが、周波数マージニング機能を備え、信頼性に優れたクロック供給ソリューションです。『CDCE6214-Q1』は、周波数可変位相ロック・ループを備えた信頼性の高いクロック供給ソリューションの一例であり、メディア・クロックの生成と同期に利用できます。AVBシステム・アーキテクチャと、『CDCE6214-Q1』を使用したメディア・クロック同期設計の詳細については、アプリケーション・レポート『eAVB Media Clock Synchronization Using CDCE6214-Q1』(英語)をお読みください。

引用
1United States Department of Transportation. (2017). How Much Time Do Americans Spend Behind the Wheel?

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※上記の記事はこちらの技術記事(2020年5月8日)より翻訳転載されました。
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