車載用カメラ・モジュール電源の選択


車載用カメラ・テクノロジの解像度、ダイナミック・レンジ、フレーム・レートの向上に伴って、特定の使用用途の要件に合った電源アーキテクチャの構築が必要になっています。この記事では、車載用カメラ・モジュールの電源に適用できる次の3つの考え方を見ていきます。

  • 完全ディスクリート
  • 完全一体化
  • 部分的一体化

この記事では、データ処理機能を持たず、生のビデオ・データを別の電子制御ユニットに出力する小型カメラ・モジュールに焦点を当てます。このようなモジュールは、サラウンド・ビュードライバー監視スマート・ミラーなどのシステムによく使われており、ビデオ・データ出力と同じ同軸ケーブルによりレギュレーション前の電源電圧が供給されます。

カメラ・モジュールに必要な電力の見積もり

カメラ・モジュールの電源部を設計する際の最初のステップは、大まかにそれぞれのレールの電力バジェットを計算で求めることです。この計算結果と、PoC(Power-Over-Coax)で供給される電圧とが、どういった電源を選択するかにおいて重要な要素になります。

カメラ・センサと外付け回路に必要な電流は、センサによって、また追加の外付けデバイスによって、大きく異なる可能性があります。普通は、低電圧のイメージャ・レール(図1の1.2Vと1.8V)が最も多くの電流を必要とし、最大の電源電圧(イメージャ用の2.9V)に必要な電流は最小です。2.9Vレールはイメージャのアナログ電源の一部であり、最終的にはその性能が画質に関係するため、このレールにはノイズがなるべく少ないクリーンな電源が必要となり、慎重に電源を選択する必要があります。任意の形式のスーパーバイザとシーケンサに加えて、内蔵のFPD-Linkデバイスも、この電力バジェットから��り当てられます。

 1:各レールの電力バジェットの計算

低ドロップアウトレギュレータ(LDO)はノイズ性能が優れていることから、どの電源にもこれを勧める人がいるかもしれませんが、電力バジェットが限られている設計には現実的ではありません。それだけでなく、電流が増加するのでコネクタやケーブルに負荷がかかり、カメラの自己発熱も増加するため、性能が低下するおそれがあります。

表1の計算例でわかるように、一般にカメラ・モジュールの電流要件は、システムに含まれるセンサとFPD-Linkデバイスで決まります。この例では、イメージャ・レールは1.2V、1.8V、2.9Vです。FPD-Linkデバイスもこの1.8Vレールを共有します。赤枠は、通常動作に必要な電流です。

 11.2V1.8V2.9Vのイメージャ・レールの計算例

この例では、同軸ケーブルによるPoC電源は、まず3.3Vに降圧されてから、カメラ・モジュールのシステムの残りの部分に給電されます。2.9Vのセンサ・アナログ・レールはLDO出力に直接接続していますが、それ以外の電源は降圧コンバータに接続します。1.8Vのレールは、『DS90UB953-Q1』電源と、イメージャのインターフェイス電源の両方に給電します。『DS90UB953-Q1』シリアライザが使用する電流はイメージャのインターフェイス電源より圧倒的に大きいので、イメージャに供給される1.8V電流は無視できるほど少ないと考えられます。イメージャの2.9Vアナログ・レールが必要とする電流は63mA、『DS90UB953-Q1』シリアライザの1.8Vレールでは225mA、イメージャのデジタル1.2Vレールでは388mAです。簡単に計算できるように効率を100%と仮定しましょう。前述の値を用いて、1.2V、1.8V、2.9Vのレールに給電できるようにするには、3.3V電源に327mAの電流が必要な計算になります。

入力/出力電圧、出力電流要件、総消費電力は分かっているので、入力電流は次の式で計算できます。

(PoC電圧)*(必要な電流) = 3.3V * 327mA

PoC電圧が12Vの場合、ECUの供給は90mAとなる。

場合によっては、ECUからのPoC電圧が固定されているため、選択したPoCケーブルやネットワークが、電力目標に必要な電流の供給に十分かなっているか把握することが重要です。2Wのカメラ・モジュールの要件の場合、5Vの固定電源は400mAを供給しますが、12V電源は166mAを供給します。

PoCケーブルが長い場合には、ケーブルによるIR電圧降下が最小限になるように、より高いPoC電圧を選ぶ必要があります。PoC電流がケーブルやフェライト・ビーズ、インダクタ、直列抵抗を流れるときに電圧が降下し、電圧ヘッドルームが減少することで、カメラ・モジュールのレギュレータ性能に影響することになります。PoC電圧の値が設計者に任されている場合は、一般にケーブルの仕様でネットワークが供給可能な電流量が決まり、これによりネットワークの電圧要件が変わります。

車載用カメラ・モジュールにおける3つの電源アーキテクチャ

表2は、3つの電源アーキテクチャの長所と短所を比較したものです。

電源アーキテクチャ

長所

短所

完全ディスクリート
このソリューションは、固有の集積回路(IC)からそれぞれの電源を生成する。自由度は最も高いが、ICすべてを個別に選択するため設計期間が延びる可能性がある。この種のアーキテクチャは、将来の設計への拡張が簡単ではない。

  • レイアウトの自由度が高いので、設計がコンパクトになり、結果としてソリューションのフットプリントが小さくなる。
  • IC部品をすべて吟味して選択するのに時間がかかる。
  • 電源の値が固定される。そのため、レール値や消費電流が異なる別のイメージャに簡単に変更できるような本当の意味でのモジュール式電源設計ではない。

完全一体化
専門の電源管理IC(PMIC)が、イメージャと外付け回路用のすべての電源レールを生成する。一般にPMICはプログラム可能で、将来の設計への拡張が容易である。

  • プロジェクト期間が全体的に短縮される
  • プログラム可能で拡張性が高いため、多大な労力をかけなくても将来のカメラ・モジュール・ソリューションに簡単に活用できる。

  • すべてのピンのピン配置が固定のため、レイアウトの自由度が低い。
  • スイッチングがイメージャの伝送信号になるべく干渉しないようにするために、ソリューション面積が増える可能性がある。

部分的一体化
シングル・チャネルとマルチ・チャネルの電源を組み合わせることで設計が簡素化されるとともに、両方の長所を活かすことができる。部分的にディスクリートな方法によりレイアウトの自由度を高めることで、設計の簡素化を助け、拡張しやすくする。

  • 部分的に一体化することで、BOMが簡素化されるとともに、完全一体化PMICに比べてレイアウトの自由度が高い。
  • 設計サイクルの時間が増える。
  • PMICによる電源アーキテクチャほどの拡張性はない。しかし、ほとんどのICには、デバイス・フットプリントの互換性を持つ、さまざまに異なる電圧タイプがある。

2:カメラ・モジュールの電源アーキテクチャの比較

 電源で考慮すべき点

車載アプリケーションを設計する際には考慮すべき点がいくつかありますが、これにより電源設計の選択肢が狭まります。以下は、システム・レベルで重要な仕様です。

  • 小型の車載用カメラ・モジュールのケースに合うように、ソリューション・サイズ全体をなるべく小型化する。このようなケースの面積は標準で約20mm×20mmであり、通常はM12バレル・プラスティック・ケースに収まる
  • AMラジオ周波数帯との干渉を避ける。スイッチング電源はすべて、540kHz~1,700kHzのAMラジオ周波数帯の範囲外でなければならない
  • 低スイッチング周波数では大きいインダクタが必要になるため避ける。代わりに以下を使用する:
    - バッテリ短絡といった保護機能がさらに必要な電子機器は、Vin範囲の広いレギュレータを使用して設計できる
    - 高周波数スイッチャ(2MHz超)
  • AEC(Automotive Electronics Council)-Q100規格に準拠したデバイス

プリント基板の制約

図2のイメージャは、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)CSI-2カメラ・シリアル・インターフェイスを使用しています。FPD-Linkデバイスとイメージャを接続するコントロールされたインピーダンス・パターンを示すためにネットを強調表示しています。イメージャのCSI-2ネットはビアを通り、中間層(強調表示)に配線されます。

ビア・アレイのせいで電源デバイスを配置できる領域が制限されるため、小型のフォーム・ファクタにはある程度制限がかかります。カップリングを最小限に抑えるために、特にスイッチ・モード電源や信号ネットの周りでは、CSI-2ネットを適切に遠ざけて、遮蔽し、隣接層の他のネットと重ならないようにすることが重要です。

2:イメージャと『DS90UB953-Q1』のレイアウト例

 

適切な電源アーキテクチャを選ぶ

どの電源アーキテクチャが正しいかは、��計の要件によって異なります。以下に挙げるリファレンス・デザインで詳細な仕様をご確認ください。また、開発に取り掛かる際には設計の簡素化にも役立つでしょう。

※すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。 
※上記の記事はこちらの技術記事(2020年9月17日)より翻訳転載されました。 
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