拡張現実(AR)ヘッドアップディスプレイ(HUD)などの車載アプリケーションでDLP®テクノロジの人気が高まっています。その大きな理由の1つが、明るく、鮮やかな色彩を提供できるという点にあります。AR HUD(図1参照)において色彩がどのような役割を果たしているかについての理解を深めるために、「彩度」と「色域」という考え方をご紹介します。

 図1:AR HUDの例

「彩度」は、画像内の色の鮮やかさを示します。図2を見ると、どちらの色の彩度が高いかすぐにお分かりいただけるでしょう。彩度が低ければ低いほど、ぼんやりとくすんで見えます。彩度とは、ある色がどれだけ純色に近いかを示すものであり、その複合波長によって色が定義されます。色の彩度が最大の場合、そこには1つの波長だけが含まれることになり、純色であるとみなされます。実際には、彩度が高くなればより明るく見えるという仕組みは、ヘルムホルツ・コールラウシュ効果によって説明されます。彩度に関するもう1つの興味深い側面は、反応時間への影響です。「Capturing User Attention with Color(色でユーザの注意を引くには)」というタイトルの研究によると、色の彩度が高ければ高いほど、被験者は、色、特に赤色により速く反応するということが分かっています。(これは、多くの警告標識に赤色が使用されている理由の1つです。)

 図2:彩度の違い

ディスプレイが変わっても色を一貫して正確に再現するためには、色を定量的に測定する必要があります。ここでは「色域」という考え方が使われます。色域とは、ある任意のシステムで表示できる全種類の色を示します。国際電気通信連合勧告(ITU-R)Rec. 709、Rec. 2020、および全米テレビジョン放送方式標準化委員会(NTSC)など、さまざまな色域規格によって、それぞれ準拠に沿って再現されるべく異なる色のスペクトルの量が定められています。これらの規格は、特定の色座標をそれぞれの色に割り当てることで、色を一意に定義し、1つのディスプレイの表示が別のディスプレイの表示と同一となるよう確実に色が再現されるようにしています。それぞれの規格によって定義された色域は、図3に示すようなXY軸の色度図上の三角形として描かれます。これらの三角形は、赤-緑-青(RGB)の座標を頂点として、それぞれの頂点を直線で結んだものとなります。

三角形の内側の面積が大きければ大きいほど、その規格で表現できる色が多くなります。車載用途では、再現可能な色の範囲を定義するためにNTSC規格が使用されることが多く、ディスプレイの性能は、一般的にNTSC色域のパーセンテージとして示されます。たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)の表示は60% NTSC以下となりますが、これは、これらのディスプレイがNTSC色域内の色を最大で60%しか再現できないということを示します。

 図3:さまざまな色空間/色域

DLPテクノロジの中心に、デジタル・マイクロ・ミラーデバイス(DMD)があります。DMDには、何十万~何百万の高反射アルミニウムのマイクロミラーの列が含まれており、それが、高速で切り替わることで、RGBの三原色を混色し、明るく鮮やかな画像を移し出します。DLPテクノロジの性能面でのメリットの1つが、DMDの切り替え機能が温度の影��を受けないということ���す。つまり、色の再現や画質が温度によって劣化しないということになります。-40°Cでも105°Cでも変わらず、高い彩度を得ることができます。

 図4:DMDのミラーの列の例

反射技術であるDLPテクノロジは、白色バックライトとカラーフィルターを使用して色を再現するLCDなどの競合車載技術と比較して、より高い彩度を提供できます。DLPテクノロジでは、どのような彩度でも、起動時から光源が再現されます。発光ダイオード(LED)やレーザーを含む高彩度の個体光源を最大限に活用し、DLPテクノロジは、LEDでは91%、レーザーでは100%の彩度を実現します。これによって、幅広い色域に対応可能となります(たとえば、TIの最新の『DLP 3030-Q1』車載認定チップセットの色域は、LEDで125% NTSC、レーザーで172% NTSCとなります)。この水準の彩度と色域に対応することで、DLP HUDは、明るく鮮やかな画像を生成し、ドライバーに対してより優れた視覚体験を提供します。

 図5:NTSC適合性のパーセンテージと彩度

参考情報(車載アプリケーション向けDLP テクノロジ):

※DLPはTexas Instrumentsの登録商標です。その他すべての商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年3月26日)より翻訳転載されました。
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