正しい産業用Ethernet標準規格の選び方シリーズでは、産業用Ethernetをシステム内で活用しようと決めた設計者向けの記事です。このシリーズでは、アプリケーションへの正しい標準規格の選択に役立てるために、数種類の主要な産業用通信プロトコルを扱います。本ブログでは、EtherCATと最終アプリケーションや、その動作について説明します。

Beckhoff AutomationEtherCATを開発し、その後EtherCAT2003年から、2,600社もの会員で構成された産業用フィールドバス組織である EtherCAT Technology Group (ETG)の傘下に入りました。

EtherCATファクトリ・オートメーション 、半導体ツール製品、包装ロボティクスその他に使用されています。

技術的な面では、EtherCAT は図1に示すように、マスタ-スレーブ・ネットワーク・アーキテクチャです。EtherCATのスレーブは2個のEthernetコネクタを持ち、簡素なライン・トポロジをサポートします。冗長性を持たせるためにリング・トポロジをサポートすることも可能で、この場合にはEtherCATのマスタも2個のEthernetポートが必要です。1個のEtherCATネットワークは、最大65,535個のスレーブ・デバイスをサポートできます。

1: EtherCAT マスタ-スレーブと、EtherCAT フレームの流れ

EtherCAT マスタだけがEtherCATフレームを発生できます。このフレームをすべてのスレーブが受信し処理します。最後尾のスレーブが、そのEtherCATフレームをループバックし、そのフレームは、それ以上に処理されることなく、すべてのスレーブで中継され、マスタに戻されます。EtherCAT フレームには個々のスレーブが処理するための予約スペースがあり、どのスレーブもフレーム長を変更することはできません。フレームは、複数の車両と乗客席で構成された列車に似ています。各スレーブは特定の車両または席を割り当てられます。EtherCATでは席のレベル、つまり処理データのビットレベルまでアドレスを指定可能です。

EtherCAT のマスタは、EtherCATフレームをリアルタイム処理する必要がないことから、マスタに必要なのは標準的なEthernet MACペリフェラルのみです。マスタに求められるのは、正確なタイムベースでEtherCATフレームの開始をトリガすることだけです。EtherCAT のスレーブは、特定のEthernetハードウェア EtherCAT MAC)のサポートが必要です。 受信するEtherCATフレームを短時間で処理する必要があるため、図2に示すように、通常はASIC(特定用途向けIC)や、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレー)を使って実装されます。つまり、EtherCAT MAC EtherCAT フレームを受信しながら処理します。代表的なEtherCATデバイスでは、フレームの受信と送信のポート間遅延は1μsです。

2: ASIC/FPGA と外付けプロセッサで構成されたEtherCAT スレーブ

EtherCAT 標準規格では、EtherCATネットワーク上の、他の型式のEthernetフレームを許容しません。これはEtherCATフレームのために、リアルタイムEthernetチャネルを空けておくためです。EtherTypeが、EtherCAT以外のフレームがEtherCATネットワークに存在する場合、EtherCATスレーブはそのフレームのチェックサム(CRC)を無効化することで、そのフレームを破壊します。このことで、EtherCAT以外のフレームは標準的なEthernetデバイスには無効となり、EtherCATネットワークの汚染は、いずれ解消します。

TCP/IPTransmission Control Protocol/Internet Protocol)やUDPUser Datagram Protocol)などの標準的なEthernetフレームを、EtherCATフレームにカプセル化してEtherCATネットワークで伝送することが可能です。これは、EtherCATのホスト・プロセッサのスタックの上に位置する様々なEtherCATプロファイルを通じて実現されます。プロファイルの例としては、Ethernet over EtherCAT profileがあります。

EtherCATデバイスの他の特長や機能には、次のものがあります。

  • 分散クロック: スレーブ群とマスタに渡る、高精度の時刻同期手法
  • 高速のリンク切断検出とループバック(Ethernet PHYトランシーバのサポートが必要): Ethernet PHYがリンクの切断を検出すると、EtherCATハードウェアに通知し、EtherCATハードウェアは10μs未満以内にEtherCATフレームをループバック。 高速のリンク切断検出機能を備えたTIのTLK1xx Ethernet PHYトランシーバ・ファミリ を参照

 

EtherCATASICFPGAを使うことで、余分なコストや基板実装面積の増加を招きます。その代わりとなる解決策は、数多くのTI Sitaraプロセッサ製品に統合されたPRU-ICSSペリフェラルを使うことです。例えば、図3に示すように、TIでは外付けのFPGAなしでEtherCAT スレーブ・デバイスを可能にする、AM335xプロセッサ向けのPRU-ICSSファームウェアを供給しています。TIEtherCATスレーブ向けソリューションを評価できるTMDSICE 3359評価ボードも供給中です。

3: TI Sitaraプロセッサに統合したEtherCATスレーブ

このブログ記事では、EtherCATの機能をクローズアップしました。このシリーズの、他の産業用Ethernet標準規格に関するブログ記事もご覧ください。

 

その他の資料

 

上記の記事は下記 URL より翻訳転載されました。

http://e2e.ti.com/blogs_/b/industrial_strength/archive/2015/09/17/how-to-select-the-right-industrial-ethernet-standard-ethercat

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