店内のすべての商品の紙の値札をすべて手作業で張り替えるには、数週間かかります。この作業は時間だけでなく、コストもかかります。また、大量の用紙が必要になるため環境にも優しくありません。電子棚札(Electronic shelf labels、ESL)は、商品の価格の変更に必要な労働力や用紙の使用を削減し、印刷コストを節約でき、店の収益性と顧客体験の向上に役立ちます。

ESLは商品陳列棚近くにいる買い物客のデバイスと接続し、買い物客の好みやニーズにもとづいてより効果的な広告を提供します。特定の商品の正確な場所を示すことによって商品の選択を支援します。また、買い物客が値札をスキャンしてスマートフォンで支払えるようにすることで、支払いのプロセスを容易にします。

図1に示されている通り、システムは基本的に以下のワイヤレス通信で構成されています。

  • ESL:店舗の棚のLCDやe-inkのディスプレイで価格とユニバーサル商品コード(UPC)を表示
  • アクセス・ポイント:中央ホストとESLの間のネットワーク・ブリッジを作成
  • 中央ホスト:アクセス・ポイントを通じてESLとPOS(販売時点情報管理)に価格の更新を送信
  • POS:買い物客が支払いプロセスを完了

 図1:店舗の構造

図2で示されているESLの構造を見てみると、サブシステムの中核はアクセス・ポイントを通じて中央ホストに接続するワイヤレス・インターフェイスであり、棚とレジの価格間の不一致を防ぎます。SimpleLink™ Arm®ベース超低消費電力ワイヤレス・マイコン(MCU)によって、コイン型電池で複数年にわたり動作します。また、ワイヤレス技術(通常は2.4GHzおよびSub-1GHz独自規格ワイヤレス・プロトコル)を柔軟に選択できます。

たとえば、湿度および温度センサ・ノード、1GHz以下のスター型ネットワーク用、コイン型電池の10年以上の寿命を実現のリファレンス・デザインでは、『CC 1310』マイコンと『TPL 5111』ナノパワー・システム・タイマを使用して残りのすべての回路に対する電力を管理しています。動作時の消費電力はわずか数十ナノアンペアです。システムで2.4GHz独自規格プロトコルが必要な場合に、『CC 2640R2F』は同じソフトウェア開発キット(SDK)を使用する代替オプションです。

 図2:ESLの参照図

初期コストは大きくなる場合がありますが、エネルギー・ハーベスティング・ソリューションによってESLのバッテリー寿命が延び、長期的にはコスト効率が向上します。TIでは、マイクロワットの電力から、さまざまなDCエネルギー・ハーベスティングと高インピーダンスのエネルギー源によって生成されたミリワットの電力を効率的に抽出するため、『BQ 25505』超低消費電力ハーベスタ・パワー・マネージメントICを設計しました。たとえば、Bluetooth® Low Energy(BLE)ビーコン・サブシステム向け屋内照明エネルギー・ハーベストのリファレンス・デザインでは、小売店の売り場における標準的な屋内照明(250ルーメン/m2超)の電力を使用してデータをワイヤレスで送信します。

ESLは、商品を容易に選ぶためのフラッシュ・ライト機能を装備している場合があります。このケースでは、24Vの電力供給によって動作しているESLが、LEDを明るくして特定の商品の正確な場所を示すことができます。24Vを回路の残りの部分に供給する電圧に下げるためのワイド入力バック・コンバータに加えて、逆極性保護機能内蔵の60V eFuseである『TPS 2660』��、電流制限保護、電流のモニタリング、過電圧保護、突入電流の管理(dv/dt)によってシステムを保護できます。LEドライバがLEDに電力を供給します。

ESLにはセンサ(湿度、温度、重量など)が装備されています。また、カメラによって、生鮮品の状態のモニタリング、在庫補充の効率化、ユーザや物品の追跡できます。これには、超低消費電力の、小型で非常に精度の高いセンサが必要です。精度は、棚から選び取られた商品を把握するために必要です。(特に、店舗に数千の選択対象商品がある場合は重要なポイントです。)

ESLは人間が触れたときに静電気のダメージの影響を受けやすいため、高性能な保護ダイオードによって通信インターフェイスが保護されます。(低消費電力のワイヤレス・マイコン、効率的なパワー・マネージメント、堅牢性の高い保護回路が、スマートで、環境に優しく、機動的なESLに必要なごくわずかな設計の要素です。これらによって、小売店の収益性や顧客体験の向上、世界の自然環境の保護が可能になります。

参考情報

※SimpleLinkは、Texas Instruments の商標です。その他、すべての登録商標および商標はそれぞれの所有者に帰属します。
※上記の記事はこちらのBlog記事(2018年10月10日)より翻訳転載されました。
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